残照日記

晩節を孤芳に生きる。

ギリシャデモ

2011-10-20 17:11:44 | 日記
【昔、ミレトス人は勇敢だった。】
≪出典はアリストパナス「福の神」。アテナイオスの「食卓の賢人たちによると、昔、ミレトス人は武勇の民で、多くの植民地も建設したが、その後贅沢のために堕落して、そこでこのことわざができたのだという。一般に、「昔はすぐれていたが今はだめ」ということ。≫(岩波文庫ギリシャ・ローマ名言集」の「ギリシャの部」より)

≪深刻な財政危機が続いているギリシャでは、政府が議会に提出した、年金支給額の削減などの追加の緊縮策に反対して、19日午前から、主要な労働組合の呼びかけで、公共交通機関の職員などが48時間のストライキに突入した。おととし財政危機が表面化して以来最大となる、12万人規模のデモも行われ、このうち首都アテネでは、暴徒化したデモの参加者が、繁華街で店舗のガラスを割ったり、火を放ったりしたほか、警官隊に火炎瓶を投げつけるなどした。…一方議会では、19日の深夜、追加の緊縮策についての1回目の採決が行われ、賛成多数で承認された。今回の緊縮策を承認することが、EU=ヨーロッパ連合などからの新たな融資の条件となっているだけに、パパンドレウ首相は是が非でも成立させたいとしていて、20日に予定されている2回目の採決で正式な承認を得たい考えだ。ただ、これに対して、ギリシャの主要な労働組合は20日もデモを続ける構えで、再び激しい衝突が起きることも懸念されている。≫(10/20NHKニュース)

∇ギリシャは、≪古代文明の発祥地で、前2500年ごろから石器・青銅器文明が発達。前8、9世紀ごろアテナイ・スパルタなど多数の都市国家が成立したが、前4世紀マケドニアに併合。その後、ローマ帝国やオスマン帝国の支配下に入ったが、1829年王国として独立。1924年に共和国、1935年王制復活を経て、1974年共和国。≫(「大辞泉) 尚、1967~1974年までは軍事政権だった。現在のギリシャの一般的事情は、外務省HPによれば次の通り。首都アテネ。面積は日本の約3分の1、人口約1100万人(2007年)、主要産業は海運、観光、農業、軽工業、製鉄、造船。失業率7.6%(2008年:IMF)。EU加盟は1981年。≪2009年10月の総選挙の結果、野党第一党PASDKが単独過半数の議席を獲得し5年半ぶりに政権に復帰し、パパンドレウ党首が首相に任命された。…経済面では、前政権が財政赤字を過小評価していたことが発覚、2009年の財政赤字がGDP比12.7%となることが明らかとなったことを受け、ギリシャの財政不安が高まっている。≫ 

∇≪20世紀のギリシャは、ドイツ、英国、ソ連など列強の覇権争いに巻き込まれた。第2次大戦後も共産主義勢力と王制派が内戦を繰り広げ、その後の軍政下で以前の体制につながる人材は公職を追われた。そして1974年に民政復帰。民主主義が根を張る間もなしに政権についた政党は、公務員ポストをばらまいて国民の歓心を買った。≫(朝日新聞、沢村亙国際報道エディター) その結果今では、公務員数は全労働人口の2割強を占め、年金と公務員給与・手当が政府支出の約4割を占めるとの報告もある。≪欧州連合の補助金や低利の借金を享受しながら、公務員天国や税金逃れを放置し、産業育成を怠ったつけが回るギリシャ。≫(沢村氏) それが今回の財政・金融危機の一因となっているのである。しかもEUや国際通貨基金(IMF)の支援を受けるには、ギリシャ自体の緊縮財政を余儀なくされているのだが、政府の緊縮策に抗議する48時間のゼネストの当事者が、これらの公務員だというから“お門違い”デモをやらかしている気がするのだが……。某汚職撲滅NGOの理事長はこう言っているそうだ。≪昔のギリシャの公務員は誇り高く、厳格だった。便宜を図ったり税金を見逃したりする見返りに、小金を懐に入れることはしなかった≫と。(同上)

∇BC460年頃の古代ギリシャの政治家で、民政派の指導者として民主主義を徹底させ、アテナイに「ペリクレス時代」と呼ばれる黄金時代を現出させた名宰相ペリクレス。彼は幾多の誹謗中傷を経て、ペロポネソス戦役の途中で病没したが、彼の死後、日増しに高く評価されるようになった。ツキジデスの「戦史」はその理由を次のように語っている。≪(ペリクレスは)なんの恐れもなく一般民衆を統帥し、民衆の意向に従うよりもおのれの指針をもって民衆を導くことをつねとした。これはペリクレスが口先一つで権力を得ようとして人に媚びなかったためであり、世人がゆだねた権力の座にあっては、聴衆の意にさからってもおのれの善しとするところを主張したためである。…その名は民主主義と呼ばれたにせよ、実質は秀逸無二の一市民による支配が行なわれていた。これに比べて、かれ以後のものたちは、能力においてたがいにほとんど優劣の差がなかったので、みなおのれこそ第一人者たらんとして民衆に媚び、政策の指導権を民衆の恣意にゆだねることになった。≫と。(「世界の名著」中央公論社版より) パパンドレウ党首の決断力、そして又我が野田首相や如何? ≪秀逸無二の一市民による支配≫について明日又。

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