残照日記

晩節を孤芳に生きる。

世論調査

2011-08-08 19:04:50 | 日記
≪菅首相、政権運営「4年があるべき姿」──衆院予算委員会は8日午前、菅直人首相と関係閣僚が出席して外交・安全保障に関する集中審議を行った。首相は衆院解散・総選挙について「大震災(への対応)、原発事故の収束がこれからも必要な中で、ほとんどの国民は今ではないだろうと思っている」と指摘。その上で「(衆院選で)多数を得た政党なり政党連合がきちんと(政権運営を)4年間やって、4年後に国民に信を問うのがあるべき姿だ」と強調した。自民党の高村正彦元外相への答弁。自らの進退に関しては「震災復興と原発事故収束に一定のめどを一日も早くきちっと付けて次の世代に(責任を)移していきたいという思いは一切変わっていない」と述べた。同時に、退陣条件に掲げた特例公債法案と再生エネルギー特別措置法案を念頭に「具体的法案も(一定のめどに向け)前進してきている」とも語った。……≫(8/8時事通信)
 
∇折りしも、朝日・読売の朝刊に最新世論調査が載った。例によって概要を述べれば次の通り。①内閣支持率は、読売18%、朝日14%、不支持率は読売72%、朝日66%、どちらとも言えない割合が、読売10%、朝日20%だった。②政党支持率は民主が17%(読売)、14%(朝日)で、自民が20(読売)、19%(朝日)、支持政党なしが53%(読売)、51%(朝日)で、分らないを加えると約6割の回答者が支持政党を絞りきれていない。③衆院選の比例区先では自民が29%(読売)、28%(朝日)、民主が17%(読売)、15%(朝日)と後述するように両党の差が拡大した。但し、これも、分らない・答えないが合わせて42%(読売)、42%(朝日)と、高い水準にあることが問題だ。④現在の如き政治状況を招いた責任の所在はどこにあるか。民主党が41%、菅首相が21%、野党が19%だった。(朝日)⑤菅首相の退任時期は、8月末までが66%(読売)、45%(朝日)で、朝日では9月以降でよいが40%も占め、読売・朝日で世論数値は割れている。尚、衆議院の解散総選挙の実施時期については、できるだけ早くが読売26%、朝日37%で、急ぐ必要はないが読売65%、朝日52%だった。

∇⑥菅首相の「脱原発依存」の方針については賛成が67%(読売)61%(朝日)で、次の内閣も引き継ぐべしは68%(朝日)だった。又、今後の国内の原子力発電所については、減らすべきが49%、現状維持が25%、すべて撤廃が21%(読売)と、将来のエネルギー政策に関しては、民意が脱原発方向に固まってきているとみていいだろう。⑦復興財源のための増税には賛成が52%(読売)、50%(朝日)と半数以上が“増税已む無し”と答えており、財源には消費税49%、法人税23%、所得税22%と続いた。(読売) 子ども手当てを廃止し年齢制限のある児童手当に戻すことに賛成が読売・朝日共にに60%だった。⑧福島第一原発の事故で、放射性物質による食品の汚染問題に対しては、不安を大いに感じているが34%、ある程度感じているが42%と、7割以上の回答者が不安を抱いている。故に政府の食品汚染対策については評価しないが60%に上っている。(朝日)⑨菅首相退陣後の与野党協力体制については、野党も入閣する「大連立」と、今まで通り政策ごとに協力する形とが32%、30%と拮抗している。(読売)⑩菅首相の次の民主党代表ふさわしい人は、前原前外相21%、枝野官房長官11%、岡田幹事長10%、小沢元代表10%、野田財務相5%、海江田経済産業相3%、馬淵前国土交通相は2%と続いた。

∇以上から大雑把に「民意」を類推すれば、現内閣支持率15%±α程度、不支持率7割前後であるのは、首相の居座りと、民主党自体への不満が足を引っ張っていることを改めて指摘している。殊に、④現況政治状況の責任を<民主党41%、菅首相21%、野党19%>であるとする数字は、実態を抉っている感がする。小沢、鳩山両巨頭が相変わらず「菅おろし」を明言し、仙谷、海江田経産相らも首相批判をする。大震災時下、子ども手当て等思い切って譲歩或は棄却すべきマニフェストに拘る民主党の面子主義への批判がそれに表れているのではないか。寧ろ、民意にも明瞭に浮上している「脱原発」や「増税論」に思い切った政策を向けることこそが、自民党との差別化戦略になることに気づいていない。仮に民主党を応援するとならば、こゝは≪<大行 は細瑾を顧みず≫(「史記」)を目すべきであろう。又、政党支持率が、民主14─17%:自民19─20%と相変わらず僅差であることと、このブログで再々指摘してきた支持政党なしが、分らないを加えると約6割いることが、国民の政治不信を払拭しきれていないことへの代弁となっている気がする。自民党も「敵失」を待つばかりではなく、世論に添った確固たる政策・方針を掲げるべき時だろう。

∇何故なら、新しい兆が見え初めているからである。その一つが「衆院比例選の投票先」だ。調査によれば自民28─29%、民主15─17%である。英国のフレデリック・ランチェスターによって考案された所謂オペレーションズ・リサーチによる「戦闘の数理モデル」によれば、市場シェアの影響力は「第二法則」に従う。即ち、互いに競合する同士が市場で№1のシェアを獲得する下限目標は理論上26%とされる。乃至は、ライバルとのシェア差が√3≒1.7倍になると、相手を寄せ付けない、というのがその理論の帰結するところで、第二次世界大戦時この法則を駆使して米軍は日本軍を壊滅させた。仮にこれをひとつの指標として当て嵌めるならば、「衆院比例選の投票先」の自民28─29%は、№1下限目標としての意味を持ち、又、民主投票先を仮に16%としてその1.7倍を計算すると27%となる。現在このまゝ衆議院を解散すれば、ランチェスター戦略上は、自民が圧勝する可能性を秘めていることになる。無論、ここでも予断を許さないのが、決めていない・答ないの40%強の浮動層である。世論調査から戦略を練るならば、自民にとっては、早急に解散・総選挙へ誘導するのがよく、民主は可能なかぎり引っ張って、その間に浮動層を少しでも味方の陣営に呼び込む方法しかない。「菅おろし」は自滅の道であることを銘記すべし。──世論調査を活かす方法を試みた次第である。


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