残照日記

晩節を孤芳に生きる。

ニュートリノ雑話

2011-11-20 17:12:46 | 日記
  <冬夜読書> (良寛和尚)

  一思少年時  ひとたび思う少年の時
  読書在空堂  書を読んで空堂に在り
  燈火数添油  燈火しばしば油を添え
  未厭冬夜長  未だ厭わず冬夜の長きを

≪光より速いニュートリノ、再実験しても速かった──素粒子のニュートリノが超光速で進むという、相対性理論に修正を迫る実験結果を9月に発表した国際研究グループ「OPERA」は18日、精度を高めた再実験でも同じ結果が得られたと発表した。再実験では、スイス・ジュネーブ郊外にある欧州合同原子核研究機関から約730キロ・メートル離れたイタリアの地下研究所へ飛ばすニュートリノのビームの長さを前回の3000分の1以下に短くし、より正確に速度を測定できるように工夫した。その結果、今回もニュートリノは光より57・8ナノ秒(ナノは10億分の1)早く到達していた。これは9月に発表した結果(60・7ナノ秒早い)とほぼ同じ。ただ、今回も両地点の時刻合わせにGPS(全地球測位システム)を使っており、疑問が完全に解消したわけではないという。≫(11/18 読売新聞 )

∇何せ素粒子の一つであるニュートリノが、光より速く飛ぶことを示す実験結果が正しければ、「光速より速いものはない」とするアインシュタインの特殊相対性理論は否定され、「タイムトンネル」で過去に遡ることも可能視される。なんだか、この実験結果が正当であるような気がする。否、正当であって欲しい気がする。昨日は猛烈に寒かったが、とりとめもなく「タイムトンネル」のことを考えていたら、あっという間に夜が更けていた。良寛様ではないが、老生も「少年時」よく読書した。好きな本に夢中になっている時は、まさに≪未だ厭わず冬夜の長きを≫の境地だ。文学作品は勿論だが、勤め出した二人の姉たちから貰ったお小遣いを全部はたいて、科学読本、例えばL・ポーリングの「一般化学」やオストワルドの「化学の学校」、そして湯川秀樹全集、朝永振一郎の「物理学読本」「量子力学的世界像」などに読み耽った。光や電子、素粒子などが、どれも波動と粒子という相反する性格を兼ね備えていることを知ったのは、朝永先生の「光子の裁判」だった。≪簡単にいえば、素粒子とは位置と運動量を同時に持つことのできない代物である。≫(「量子力学的世界像」)

∇古典物理学では全く説明できないこの現象を、ハイゼンベルグやボーアという当時理論物理学の泰斗たちが、「不確定性原理」「相補性」などの「数学的物理学解釈」で新しく概念化した。難しい概念なので、老生如きでは十分説明しきれないので省略するが、こゝでは、湯川先生の次の言葉を提示したかったのである。曰く、≪私たちが知っていると思っていて、実は知らない事柄がある。…理論物理学の歴史を振り返ってみると、それは間違いの歴史であったと極言することもできる。…過去とか未来とかいうのは。多かれ少なかれ人間の生命、運命と関連付けての話であって、最も根本的な自然法則自身には、過去と未来の区別はない。特に相対性原理などは時間や空間を一緒にした四次元世界を考え、そこに成立する法則を問題にするのである。そこでは時間も空間と同列の次元に還元され、すべてが永遠の静止の中に、調和を保っているのである。…≫──「タイム‐トンネル【time tunnel】」は、「広辞苑」によれば、≪過去や未来への異なる時空に通ずるという空想上のトンネル。≫である。ひょっとしたら、幼少時・青春時代の思い出、亡妻の一寸したエピソード等は「過去に通ずるトンネル」であり、はっきり描ける将来像は、「未来に通ずるトンネル」ではないか。追憶・追想・想像という意識世界を駆ける「X素粒子」は光速より速い?!

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