残照日記

晩節を孤芳に生きる。

若者の自立

2011-12-08 16:33:23 | 日記
【一身独立して一国独立す】 福沢諭吉
≪一身独立して一家独立し、一家独立して一国独立し、一国独立して天下も独立すべし。≫(「中津留別之書」)≪今広くこの人間界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥との相違あるに似たるは何ぞや。その次第甚だ明らかあり。実語教に、人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なりとあり。されば賢人と愚人の別は、学ぶと学ばざるとに因って出来るものなり。…≫(「学問のすゝめ」)

≪生活保護受給者約205万人 8月も最多更新 ──厚生労働省が6日発表した8月の生活保護受給者は、前月より9376人多い205万9871人だった。7月の受給者数は、通年平均でそれまで過去最多だった1951年度の約204万7千人を上回ったが、8月も最多をさらに更新した。 受給世帯は149万3230世帯で、前月より6889世帯多かった。世帯別では、「高齢者」が63万2167世帯で、全世帯の42%。働ける現役世代を含む「その他」は25万3082世帯で、前月より1906世帯増えた。 また、厚労省は、東日本大震災での被災を理由に、10月末までに974世帯が生活保護を受け始めたことを明らかにした。そのうち「その他」が490世帯と半数を占めている。震災後に仕事を失い、生活保護に頼らざるを得ない被災者が多いと見られる。(12/7朝日新聞)

∇生活保護世帯は、1995年度(平成7年)が88万2229人(月平均)で底だった。その後景気低迷や高齢化の影響で増加傾向に歯止めがかからず、そこに東日本大震災の被災者が加わった。戦後の混乱が残る1951年度(昭和26年)が204万6646人(同)だったというから、それから60年後の現在の方が、当時より「生活状態が酷い」ことになる。どうも納得がいかない。受給世帯の4割強が「高齢者」だという。即ち、ハッキリ言えば、高齢化≒長生きは決して称賛されることではない。又、≪働ける現役世代を含む「その他」は25万3082世帯で、前月より1906世帯増えた。≫とある。この中には、当然保護を受けるべき事由の方々もいるだろう。だが、TVでよく放映される、一人ゲームに興じながら、「仕事が無いから」を理由に生活保護に頼る、働き盛りの若者たちに疑問符を投げかけたい。働かずして生活保護費(下手をすれば、フリーターの給与より多い)を受給し、そこにどっぷり漬かり、這い上がる気力すら喪失した未来像無き人生。

∇今、学生たちの就職活動期である。履歴書を50社宛送ったが断られた、という話も再々聞く。所謂「狭き門」は、現在、一流大学の謂(いい)ではなく、就職企業のことである。失礼だが、「オリンパス」だって「大王製紙」だって「東京電力」だって一流企業だった。(過去形であることに注意!) 今を時めく「アップル」だって、当社と複数の出版社が電子書籍の価格設定で共謀したとする申し立てで米司法省に調査されているという。(真の“一流会社”がやることではない。) 一般に30年を一世代とするが、現在の「一流」が、一世代も経てば、二流或は三流に、極端な場合は姿形無き存在になっているのが世の常である。否、この超スピード時代、もっとその周期は短いかも知れない。孰れにせよ自力で働いて世の中に打って出ようとする若者には現時点での“一流企業”も“ミスマッチ”もない。それらの言葉は、実は「寄らば大樹の陰」の「大樹」の別名なのだ。本当の夢を追う若人は、誰にも頼らず、どこからでも這い上がる。又、動いてみて初めてハッキリする夢もある。社会に参画しながら自分で夢を創出するのだ!

∇S・スマイルズ「自助論」は、格言「Heaven helps those who help themselves(天は自ら助くる者を助く)」を引いて、≪外部からの援助は人間を弱くする。自助努力の精神こそ、その人間をいつまでも励まし元気づける。人のため良かれと思って援助の手を差し伸べても、相手はかえって自立の気持ちを失い、その必要性を忘れるだろう。保護や抑制も度が過ぎると、役に立たない無力な人間を生み出すのがオチである。……いちばんよいのは何もしないで放っておくことかもしれない。そうすれば、人は自らの力で自己を発展させ、自分の置かれた状況を改善していくだろう。≫(三笠書房版)と安易な支援を警告した。米国の鉄鋼王で慈善家であったA・カーネギーも「富の福音」(騎虎書房版)で、≪慈善と称する行為の殆どは、それを受ける人の遊び癖を助長し、泥酔を励まし、怠惰を奨励しているのと変わりはない。このような無用の行為に大金を投じるのなら、むしろ、その金を海中に投じるほうが社会のために役立つといえるのである≫と言っている。自力で社会を生き抜いていける普通の健常者には一面の真理であろう。≪健康で働ける現役世代≫の人々には、生活保護受給資格を厳しくすることが寧ろ緊要施策ではないかと考えるがどうだろうか。