【自分を消そうとしていた女が、一軒の古めかしい薬屋にたどり着いた。つかみどころのない、独身の薬屋店主、平山タバサと町の住人との不思議な日々。身を任せる安らぎと不安。リリカルな長篇。】
リリカル…叙情的…ん~、たしかに、これといった出来事があるわけでもなし
本当にふしぎな小説。雰囲気や空気を味わうといった感じだろうか。
でも、意外と嫌いじゃないし、けっこう心地良かったりする。
東さんは歌人でもある。だからかな。
「ルリさん、ですよね」
「そうよ。あなたがそう想うから、そうなのよ。こんなふうに、あたしのことを、想うのね」
「なんのために、こんなに形をきれいに残すんだろうねえ、蝉は。地上に出てきてから、
あっという死んじまうのにね」
「だけどさ、死んじまうからこそ、自分のかたちを残したがるんじゃないかと思ってね。…」
「…ふん、すましてたって、しようがないよ。生き物っていうものは、みいんな、へんてこりんなんだよ」
「終わりがあるから、時間を進めることができるのです」
生き続けるということは、他者に蓄積された過去の記憶が、その肉体とともに消えていく
ということでもあるのだ。
「同じ生き方なんて、誰にもできないですよ。同じ人間は二度と生まれないし、
同じ時代も二度とはやってこないのですから」
静かに、静かに時が流れていく・・・
星3つ半
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