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SONY MDR-Z1R 簡易レビュー:いくつかの欠点を帯びたSONYの新世代フラッグシップヘッドホン

2020年11月20日 | ヘッドホン、音響関連

Z1R と ZH1ES

Z1R と WM1Z

試聴環境:
SONY MDR-Z1R(推定エージング時間:70時間)
SONY DAC/ヘッドホンアンプ ZH1ES (Lowゲイン/Highゲイン)4.4mmバランス接続
ONKYO DP-X1 とOTG接続、PCM直接出力とDSD5.6MHz出力

ZH1ESは待望のS-Master Pro搭載の大出力フルデジタルヘッドホンアンプ
いわゆるDACチップとオペアンプではなく、全部自社のS-Masterシステムで一貫して出力する
今まではピュアアンプとウォークマンに搭載していたが、単品ヘッドホンアンプに搭載したのは初めてである


4.4mm 5極バランス接続

ZH1ESの内部構成

最初の感想

最初(PCMストレート+ZH1ES Lowゲイン)では、Z1Rの性能は非常にバランスが取れており、そしてZ7と比べるとの低中低域性能とはかなり異なると感じた
Z1Rは帯域的に均等に分散されてほぼフラット、低域の量は適切、中域はわずかに突出、高域はやや明るい
Lowゲイン設定では、Z1Rの低域は柔らかく反応速度はやや遅い、また低域の深さも不十分である
中域が目立ちでボーカルの厚みが増すわけでもなく、音が浮いているように聞こえる
高域は明るく広がりも良いが、常に細かい付帯音みたいなノイズが聞こえてくる


ZH1ES DSD出力

ZH1ES裏の入出力インタフェース

これじゃ期待していたZ1Rはあまりにもかけ離れているから
すぐZH1ESの設定をHighゲインに変えて、ついてにONKYO DP-X1プレーヤーのDSDアップスケーリング機能もオンにした

調整後、前述の欠点がいくつか改善されました
音は暖かく聞こえやすくなり、中域はよりタイトで厚くなり、高域の耳障りさはまだ残っているが先ほど目立つではない
この構成でレヴューの基礎として本記事を書いた


MDR-Z1Rのドライバ構造

低域

Z1Rの低域の量は適切であり不足も過度でもない、わずかにテンポが遅くて柔らかく、ヒットポイントはあまり明確ではない
低さにはハイエンドヘッドホン並みの水準があり、自社のSA5000とCD3000と比べても確実に改善されている
しかし、前世代のフラッグシップであるMDR-Z7やライバルのTechnics EAH-T700ほど良くはない


Z1Rに搭載された70mm LCPドライバ

中域とボーカル

SONYの密閉型ハイエンドヘッドフォンは通常、やや暖かく、感情のある潤いボーカル表現力を備えている
MDR-CD3000、MDR-1R、MDR-Z7もそうでした
この表現力はMDR-Z1Rも見られるが、オープンエアのためか比較的に中域よりで、薄く、明るいである
私の経験では、ボーカルの厚さは中域の量だけで決めるものではなく、位相、応答速度、中低域とのバランス
さらに、アナログ回路の性能を組み合わせた結果ではある
Z1Rはボーカルの厚みと暖かさのは良い方であるが、今回の組み合わせでは良く駆動されたZ7程ではなく、ライバルのEAH-T700よりは劣ると思う
それと比べて、Z7のボーカルはより豊かで厚みと艶がある。
EAH-T700は独立した高域ドライバによって、温かみと感染力のある音と極めて高解像度でクリアな高域も発揮できている
Z1Rに戻ると、中域のボーカルはやや薄くて明るくなり、暖かさと潤いが不足している
このチューニングは、JPOPなどのジャンルにはある程度似合うが、純粋なボーカル曲には不十分である

よく駆動されたZ7 = TEAC UD-503バランス出力 + SONY MDR-Z7の組み合わせ、アンプゲインを最適なリスニング値に微調整する


Made in Japan

高域

MDR-Z1Rで最も問題があるのは高域である。細かくて不調和音の残響みたいな付帯音に少し五月蠅く聞こえた
まるでSONYが過去に使っていた失敗作BA高域ユニットのようである(今回はXBA-N3が過去の経験を反して高域の表現は良好)
あまり「ノイズ」で形容したくはないが、ノイズに近い歪みであることは間違いない
それほど耳障りではないが、やはり違和感があり、そして、気づいた瞬間まだ背景に溶け込む
さらなるエージングをすると、消えることを期待するしかない

それ以外の高域性能は一良好で、広がり、解像度も悪くない
Z11ESのHighゲインでは、エッジがはっきりして鋭く、やや力強く、寒色系な音がする
ただしこの構成では、繊細さと透明感はA2000Zに負ける


ハウジング情報に空気穴がある

音場

Z1Rは中型の立体音場で、奥行きが長く、左右はやや狭い
楽器の前後距離の関係が明確で、オーケストラと映画BGMではよく表現出来ている、シアター用途としては申し分ない
ボーカルの距離は遠くなく近くでもない、感覚的には前方5メートルくらいにポジションニングである


勿論リケーブルは可能、Z7と同じ3.5mm3極端子を使用

この辺の設計もZ7とまったく一緒

まとめ

MDR-Z1Rは決して音が悪いではない
もし、20万円ではなく4万円のサブ旗艦であれば、音はかなり良い方である
聴きながら、EAH-T700の優れた音と中域以下のZ7の磁性的な音が頭に浮かぶと何か足りないなと思いつつ自分がいる
Z1RとZH1ESの組み合わせは50万円近くかかる
同じ値段のSTAX SR-009 + SRM-727A + それなりのピュアDACと比べて、Z1Rには勝ち目は殆どない
この結果について、私は「エージングが不十分」なら受け入れるが「組み合わせが悪い」だと受け入れ難い
27万円もする自社のESブランドのアンプですらZ1Rを上手く駆動できないのなら
出力がもっと貧弱なNW-WM1ZとPHA-2AはZ1Rを上手く駆動できるわけがない

いずれにせよ、この段階で私がZ1Rに対する評価は「お勧めできません」



amzn.to




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