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[連載]ヘッドホン初心者ガイド2:周波数帯域等の仕様を理解する

2020年11月28日 | ヘッドホン初心者ガイド
関連記事:前回はまた見てない方には是非見てください
[連載]ヘッドホン初心者ガイド1:初めてのヘッドホン選び方

ヘッドホンを選ぶ際の注意点、音響性能と技術仕様

ヘッドフォンを購入する際はまず、そのヘッドフォンの音が好きである
この部分は非常に主観的で、人それぞれで一概とは言えない
しかし、ヘッドホン・イヤホンの発展と共に、各メーカーは音楽性能も音響性能も大変な努力を注いできました
特に音響性能の指標は、公正に評価できる信頼できる要素であると思う

以下に、ヘッドフォンを買う前に注意できるいくつかのポイントを紹介する
これらの条件を満たすことにより自分が「欲しい」ヘッドホンを見つけ出すことができるかもしれない


ATH-AD2000XとATH-AD1000PRMの周波数特性(Zoom H2Nで録音)

1.周波数特性(例:8Hz〜40KHzなど)

メーカーは通常(20Hz〜20KHz, -3dB) と書いてある、
これは均一音量(電圧)で、出力音圧が基準値の半分に下がるまでの帯域幅を示している(3dB=2倍,-3dB=0.5倍)
例えば20KHzを超えても多少音はでるが、音量が小さければ意味はない


可聴帯域外の21KHzと35KHzのSIN波が同時に鳴らすと可聴帯域内の3KHzの合成波が出てくる

人間は20KHzまでの音しか聞こえない、さらに殆どの成人の聴力は17KHzまでと言われるが
可聴帯域外の21KHzと35KHzのSIN波が同時に鳴らすと、最小公約数の3KHzの合成波が生成される
3KHzなら誰でも聞こえるので、このようなささやかな要素を重ね合わせことで音の真実さを増やしていく

さらに、人間の耳は「周波数」だけを聞くではなく、音の「質」と「位相、時間差」にはとても敏感
同じく周波数でもサイン波と三角波では違うように聞こえてくるし、音の反射による遅延で方向と遠近も判断する

ほとんどの廉価プレイヤー、スマホ等は20KHz(カットオフバンド)を超える信号をカットするような作り(LPF、ローパスフィルタ)になっている
前世代のCDは44.1KHz(実質22KHz)までのことから、これに合わせただろう
しかしHi-Resの世代になって、192KHz/24Bit PCMのと2.8MHz/1BitのDSD音源も沢山あって
CDでは聞こえない空気感とアナログ的な滑らかさが感じる物が多く
ヘッドホン及び再生機器を選ぶ時も、周波数特性はできるだけ広い物を選ぶべき


SONY MDR-Z1Rのドライバユニット、殆どのインピーダンス特性と音圧感度はドライバで決まる

2.音圧感度とヘッドフォンインピーダンス

この部分は非常に重要である、特にスマホとエントリーグレードのウォークマンを使う人には注意してほしい
もし専用のヘッドホンアンプがない場合
音圧感度 100dB / 1m、インピーダンス40Ω未満のヘッドホンを選ぶ方が失敗しにくい

インピーダンスが40Ω(例:58Ω、100Ω、150Ω、300Ω)を超えるヘッドフォンは
ポータブルプレーヤーの出力電圧(≤1Vrms)が不十分なため十分な音量を得るのが困難である
これらの大型ヘッドホンは据え置きシステムでの利用を想定しており、ポータブルには適しません
場合によってエントリーグレードのUSB DACも上手く駆動できない場合はある

音圧感度100dB /1mWの音圧の意味は1mWの電力でどれだけの音を発することができるかを表する
低インピーダンスのヘッドフォン(インピーダンス 40Ω以下)は、音圧感度が98dBを超える場合なら通常どおり聞けるが
この値よりも低くなると駆動が難しく音量が足りない場合がある

さらに、音量が3dB増加するごとに2倍の電源が必要になる
100dB/1mWのヘッドホンは理論的には103dBの音を出すために2mWの電力を必要とし
106dBは4mWの電源を必要とする
多くのスマホの定格出力が小さく、たとえ出力電圧が足りても出力電流の供給能力が足りずまともに駆動できない

だからこそ、ヘッドホンを入門するといずれ手持ちのスマホとウォークマンは対応できなくなり
専用のUSB DACとヘッドホンアンプが必要になる


ヘッドホンの音場の違い

3.ヘッドホンの音場とボーカルの関係

ヘッドフォンは設計目的によって音場の性能が異なり、大まかに次のように分類されます

図1:立体的な音場、ボーカルは適切な位置になる(オープンエアーヘッドホンでは達成しやすい)
図2:音場が狭く、左右がやや広いが奥行きはない、ボーカルは脳内か耳の傍に聞こえる(旧世代のオーディオテクニカは全部この種類)
図3:音場が広くボーカルも後退している、楽器演奏向け(Sennheiser HD800, SONY MDR-SA3000等)

最後には図にならないが、音場感はまったくなく、まるでスピーカーの傍で音を聴くようなヘッドホン(主に重低音を強調、DJ向)
一般論として、リスニング用途の高級ヘッドホンは音場性能を強調するものが多く
業務用のヘッドホン(スタジオ録音、マスターリング、ステージモニター、DJ等)は殆ど音場感を持たない(MDR-CD900ST / MDR-Z1000、MDR-EX800ST, ATH-M50など)
一般的にオープンエアーヘッドフォンの音場は密閉型ヘッドフォンの音場より大きい傾向がある
そして、イヤホンでヘッドフォンと同等な音場感を作ることは非常に難しい技術である

音場とボーカル性能と密接な関係があり、一般的には音場の広いヘッドホンだとボーカルが後退し、楽器やBGMの音がより突出して目立つ
音場の小さいヘッドホンは(オーディオテクニカ AD1000 /AD1000PRMがこのタイプ)、耳の傍で歌手が歌っているような感覚がある

音場が大きいほど音がより自然かつ余裕となり、リラックスした聴感が得られる
音場が小さければ小さいほど、音のディテールが鮮明となる代わりに聞く人のプレッシャーが大い
すべてのディテールとトーンを聞き取りやすくするため、業務用のモニターヘッドフォンはほぼ小音場である

近年、ヘッドフォンはボーカルの距離だけ近くにする努力をしていて、例えばオーディオテクニカのATH-AD2000Xは楽器の音場が広いままボーカルは近く聞こえるような音場感が得られる

4.ヘッドホンの周波数分布特性と解像度

低域(重低音)を強調するヘッドホンがあるように、一部のヘッドフォンは中音域(ボーカル)を強調し、一部のヘッドフォンは高域を強調する
私が付けたヘッドホン・イヤホンの評価では、5-5-5-5-5(低域-中低域-中域-中高域-高域)のようにバンドの分布特性を主観的に表し
音バランスを大まかに説明してある

市販されているほとんどのヘッドフォンのバンド周波数特性を調べることは簡単で、Google画像検索で[ヘッドフォン名] +frequency responseを検索するとすぐ答えが得られる


低域、中域、高域すべてが美しいAudeze LCD-4

低域を強調するイヤホン

重低音を強調する多くのヘッドフォンは、低音と中低音の音量が大きいために中音域は侵食され、ボーカルは低域の音に遮られる傾向がある
そして、初心者は重低音というキーワードに釣られやすい
重低音のパンチが強く、ドンドンドンでリズム感が強い爽快感が得られるかもしれないが、音響性能の視点からは非常に悪い要素である
残念ながら、多くの初心者は常に低音があるヘッドホンを高音質と誤解しており、全体的なバランスを無視している

実際、低音を強調するヘッドフォンでも、強調の仕方はそれぞれ違う
たとえば、SONYのMDR-XB90EXは低音のインパクトさを追求するが
中域のボーカルにはほぼ影響しないようにチューニングしてある

JVCのFXZ200は、フルパワー感を備えた肉厚の低音を実現しながら、中高域の性能を維持してある、しかし中域は若干影響されている
そしてみんなが大好きなBeatsの多くのヘッドホンとイヤホンは最悪の低域表現をしている
本文はBeats批判するための記事ではないため、また別の機会でBeatsヘッドホンは如何に音質が悪いかを説明するつもり(笑)


ボーカルが最高に美しいAudio-Technica ATH-W2002

中域、ボーカルを強調するヘッドフォン

このタイプのヘッドホンはほとんどすべてボーカル向であり、いわゆる女性ボーカルの艶と色付けをを強調するタイプ
もちろん、単なる中域が突出するだけのヘッドホンもある
中域を強調するヘッドホンの設計の難しさは中域と低域の部分に空っぽのような聴音感があり、音像が不明瞭になりやすい
この辺の処理の成熟度は、フラッグシップヘッドホン・イヤホンの売りでもある
たとえば、Fitear ToGo334とATH-AD2000は、中域の残響、音の密度、および音像の明確さのバランスがよく取れている


極めて高解像度で透明感のある高域性能を持つAudio-Technica ATH-AD1000PRM

高域を強調するヘッドフォン

オープンエアーヘッドホンは高域を強調するものが多い、例えばのオーディオテクニカのATH-AD1000 / AD1000PRM / AD1000Xなどは、透明感、透き通さとクリアな高域を強調している
勿論、W1000のような高域が煌めく密閉型ヘッドホンもある

個人的には、低域が良いよりも、いかに高域を美しくする方が技術的に難しいと感じている
高域がうまく調整されていないヘッドフォンは、ボーカルにサ行の刺さりが出やすくなる
サ行の刺さりとは、歯の間から発するの刺すような音の一種で、
日本の女性のボーカルソングをよく聞くと特に「さ・し・す・せ・そ」を発音する度に刺さるように聞こえる為「サ行の刺さり」と呼ぶ

僕はオーテク好きだが、2万円以下のオーテクヘッドホンはあまりお勧めしない

ここの2万円は新品の値段、中古なら全然ありです

手持ちのヘッドフォンはほぼオーディオテクニカであるため、僕は恐らくオーテクを勧めると思う​​でしょうか
実際には、オーディオテクニカの製品ラインが広すぎて幅も広いため、
明確なグレード付けを行うために、ローエンド製品の音質は価格帯中は理想とは言え難い

以前は少なくともATH-A900からお勧めするだが、今のA900Zは特色もなくただのA1000Zの廉価劣化版でしかないのでお勧めしない
今ではATH-M50XとATH-MSR7ならギリギリ万能さのある中間グレードとしてお勧めるかもしれない


Audio-Technica ATH-MSR7SE

amzn.to



しかし同じ価格でSHURE SRH840はあらゆる面でATH-M50を打ち負かしたと思う
また、この価格帯ではオーディオテクニカに欠けている女性ボーカルの艶もよく表現出来ている

amzn.to




JVC HA-RX900

低価格のエントリーには、JVCのHA-RX700(後継はHA-RZ710)をお勧めする
アマゾンでは3000円程度で、昔のA900らしい音がするコスパの良い密閉型ヘッドホン
そして名もしらない怪しい中国メーカー製ではなく老舗のJVC製

amzn.to



現在、オーディオテクニカの中間グレードの密閉型ヘッドホンの中に
女性ボーカル向けの物はほとんど存在せず(女性ボーカル向けのA2000ZとW1000Zは旗艦グレード)
オープンエアのヘッドホンもAD1000Xが演奏向けで、女性ボーカルはやはり旗艦のAD2000X
安価で美しい女性ボーカルを聞きたければ、
旧世代のA900 / A900LTD / W1000 / AD1000 / AD1000PRM / AD2000を探す方が良いでしょう
また、STAXのエントリーグレードとSHUREのもかなり良いものがある


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