アブリル - どこにでもあり、どこにもない

岡崎平野を中心とする 植物 と カメラの対話

クリスマスローズ - 冬のリヴィエラ

2024-01-22 15:00:00 | みんなの花図鑑
(もう20年以上前のお話です)
シリアの首都ダマスカスの人々に「 今日はザバダニに行く」というと、皆さん「それはよかったね」と相好を崩します。
ダマスカスはオアシス都市で、その水源は近くのアンチレバノン山脈に冬季に降った雪なのです。
ザバダニ渓谷はそんな雪が地下を通って湧水する泉のある村なのです。


地下水が湧水してできた池の水なので、冬は池のほうが外気より暖かいのです。
緑の少ないダマスカスの人たちは 冬降った雪が溶けだし、カシオン山脈を開析して流れるバラダ川に流れが戻る雪解けシーズンが大好きです。
(ダマスカスの水道水は世界でも珍しく飲めます。雪解け水が長い時間をかけて石灰岩のなかを通ってきた湧水を利用しているからです)




クリスマスローズの花は下を向いて咲いていると言われます。
下を向いていなくとも、このように横を向いて咲いてることが多いです。
なぜなんでしょう?




クリスマスローズは地中海沿岸が原産の植物です。
クリスマスローズはその名の通りクリスマスのシーズンすなわち冬が花期です。
イタリア語で海岸のことをリヴィエラといいます。
リヴィエラは普通名詞ですが、狭義ではフランスのトゥーロン付近からイタリアのラ・スペーツィア付近までの地中海沿岸地方を指してリヴィエラと呼ぶようです。
「冬のリヴィエラ」すなわち冬季の地中海沿岸地方は雨が多いのです。




そこでクリスマスローズが下を向く理由としてよくもち出されるのが、「花粉に雨が当たらないため」というものです。
どこかで聞いた説明ですね
そうです、シクラメンです。シクラメンが下を向いて咲くのは冬の雨から花粉を守るため、というのが一般的な説明でした!(^^)!
原産地がほぼ同じなので、同じ理屈が通るというわけなのです。


では、リヴィエラ(地中海沿岸地方)原産の花はみな下を向いて咲いているのでしょうか?
そんなことないですよね



こちらは 夏のリヴィエラです。
ただし広義のリビエラ(地中海沿岸)で、実際は シリアのラタキア(シリア)の風景です。
やはり冬は雨や雪が降ります。
内陸ダマスカスの人は傘を持ってませんが、リビエラのラタキアの人は傘を持ってます(^^)/

(以下、脱線の又脱線で、すみません)
インドネシアのスラウェシ島で買い物をしていたとき、酔いどれ姉さんが私を捕まえて
「おしん、フジヤマ、雪(サルジュ)」
と言ったことがあります。
「雪なぞ降らない国の人が話すことばの中になぜ「雪」があるのだろう?」
といぶかったことがありますが、雪の降るイスラムの言葉の中に「雪(タルジュ)」があり、
クルアーン(コーラン)を読んでいると出てくるからマレー語インドネシア語に登場するんですね、きっと。




クリスマスローズがなぜ下向きに花を咲かせるのかについては、もう一つの説明があります。
それは、「下向きで咲く花を好むハナバチ類を誘っている」というものです。




「ハナバチ類は行動範囲が広く、一つの花での採蜜時間が短く、効率よく多くの花を訪れて受粉の可能性を増す、植物にとってはありがたい存在。このハチバナ類に好まれるように、花首を長くし下を向くように進化したと思われています。」(新建エクスプランニング「うつむく花の不思議」2019)






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