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住基ネットとマイナンバー制度

2015-04-20 | 政治

共通番号制度(マイナンバーは愛称)とは、行政運営の効率化を掲げ、国民全員に共通番号を強制的に付け、国が発行する「個人番号カード」を持たせ、個人の申告等にウソがないか国家がチェックする情報提供ネットワークである。国民総背番号制は、行政の効率化につながるとされながら、プライバシー侵害の懸念が指摘され、これまで何度も廃案になってきた。

 今回も政府は、脱税防止、社会保障サービスの向上などいいことずくめの制度としている。だが近年、共通番号を使ってきた諸外国では、個人情報の管理が難しいネット社会に移行する中、その弊害が社会問題化している。さらに、技術的な問題もさることながら、「兆円単位」とも試算されるこの巨大な「公共事業」にありつこうと、IT業界などが群がり始め、マイナンバー制度は利権の温床になるのは必須だ。
 
 ネット取引では通常、パスワードを定期的に変えることでセキュリティーが保たれる。それを、膨大な個人情報につながるいわばパスワードとも言うべき「共通番号」を生涯一つに固定し、手続きや取引に使い回すというのだから、危険極まりない制度だ。民間でも広く共通番号(米国では社会保障番号)が活用されている米国では、これを悪用したなりすまし犯罪が社会問題化している。2011年には米連邦議会で実際の被害状況を調査するための「公聴会」まで開かれ、制度の見直しが議論の俎上にのっている。このなりすまし犯罪の被害は全米で実に年間五百億ドルにも及ぶと推計されている。
 韓国で2011年7月、中国のハッカーが大量の住民登録番号を盗み出す事件が発生した。人口5000万人の韓国で、全国民の7割に近い3500万人の個人情報を盗まれるという大事件だった。
 住民登録番号は、戸籍や住所の変更、医療、保険、年金、金融商品や不動産、自動車の取引、税金、教育、徴兵、出入国などすべての行政サービスについて回る。国民が生まれてから死ぬまで、すべての個人情報を一つの番号で政府が管理する。確定申告も必要ない。政府が個人の収入と源泉徴収、使った医療費や教育費などを計算して自動的に税金の払い戻し金額を教えてくれる。病院も住民登録番号を使って、その患者が医療保険に加入しているのかを確認できる。パスポートを申請する際も、申請書と住民登録証だけを区役所に持っていくだけで済む。年金も住民登録番号で管理している。国連は2010年、2012年と2年連続で、電子政府評価1位を韓国に授与した。しかし、国民を番号で管理する住民登録番号制度は危険もある。犯罪を予防するために本人確認をする――という名目で、民間企業も住民登録番号を要求するようになった。WEBサイトの会員登録、携帯電話やインターネットの申し込み、ポイントカードやメンバーシップ登録、塾登録など、その分野は多岐にわたる。放送通信委員会の調査によると、約32万のWEBサイトが、会員登録の際に住民登録番号と氏名を本人認証のために要求していた。本人認証をすればネットで悪質な書き込みをしなくなる、本人名義の携帯電話やインターネット回線を使って違法なことはしないだろう、という狙いだった。しかし、結果は「ネット移民」を増やすだけに終わった。ネット移民とは、登録時に住民登録番号を要求しない欧米サイト――Facebook, Google+、Twitter――を利用する人々のことだ。
 住民登録番号の利用が広まるにつれて、「カネになる情報」として中国ハッカーが狙うようになった。代表的な被害事例はオンラインゲームである。ハッカーは盗んだ個人情報を使ってオンラインゲームサイトに加入する。そしてゲームの中で、武器や魔法のアイテムを獲得。それを仲介サイトで売って現金化する。金融監督院の調査によると、住民登録番号ハッキング事件が起きた後、犯罪者が、住民登録番号と氏名を使ってクレジットカードの会員になりすましてクレジットカードの追加発行を要求する詐欺事件が頻発するようになった。2011年8月だけで559件発生した。通常の3倍の数だった。最近はスマートフォンがターゲットになっている。知人または会社を装って、被害者にショートメッセージを送る。被害者が中身を読もうとしてURLをクリックすると悪性コードが端末にインストールされる。これでスマートフォンが乗っ取られてしまう。ハッカーは被害者のスマートフォンを自由に操作し、通話を盗聴したりショートメッセージを盗み読みしたりする。さらに、被害者の個人情報を使ってサイバーマネーを購入し、ポイント換金サイトを経由して現金化する。本人確認のためスマートフォンに送られてくる暗証番号もハッカーが横取りして決済画面に入力する。サイバーマネーサイトは、被害者が本人のスマートフォンを使って正常な取引をした、とみなして決済してしまう。被害者はキャリアから請求書が届くまで被害に気付かない。
 
 「住民基本台帳ネットワークシステム」、通称「住基ネット」の導入費用に約400億円もかけたにも関わらず、住基カードの普及率はいまだ5%に留まっている。総務省によると、住基ネットの運用に毎年かかるコストは約130億円。事業仕分けの際は、「運営法人が官僚の天下り先になっている」、「運営コストが高すぎる」といった指摘もあった。個人情報保護の観点等などから、住基ネットへの参加に難色を示す自治体も少なからずあった。住基カードは今のところ情報漏洩などのトラブルが少ないというが、たった5%の普及率では、問題など起きなくて当然だ。その住基ネットをおざなりにして、今回再び新たなマイナンバー制度を作るという。既存の高速道路に並行して、もう一本、新たな高速道路を作るようなもの。一度新規に建設されてしまえば、毎年膨大な維持管理費が発生し、それが業者に継続的な利益をもたらす構図は無駄な道路建設と同じだ。
 かつて住基ネットに一貫して反対してきた民主党だが、政権の座につくや「マイナンバー賛成」に翻身した。連合が賛成したためだ。
自民党でも野党時代、党内の一部で問題点を重視し、制度の導入に反対する声が噴出した。反対派議員らは結束し、「議員連盟」を立ち上げた。しかし、議連に参加した自民党議員らに対し、ITベンダーは個別に激しいロビー活動を展開して、彼らを切り崩し、議連は空中分解していったという。
  

 マイナンバーの導入には、初期費用だけで住基ネットの数倍となる約2700億円もの費用がかかると推定され、運営費は年間200億~300億円という。IT業界を儲けさせるだけでなく、新たに設立される「地方公共団体情報システム機構」が天下り機構になると指摘するメディアもある。政治家も官僚もお手盛りでやりたい放題ですなあ・・・・・

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