大手乳業各社は8月1日の出荷分から、家庭用のチーズやバターの希望小売価格を引き上げた。加工用の牛乳の生産量が減って、仕入れ価格が上昇しているという理由だ。特にバターについては今年5月、農水省が7千㌧の緊急輸入をするなど品不足は深刻で、スーパーで数量制限はいまも続いている。
だが、農業ジャーナリストの浅川芳裕氏は「よく考えればおかしくないか。同じ乳製品の牛乳やチーズなどが品不足になることはない。なぜバターだけが、頻繁にお店の棚から消えるのか」と疑問を投げかける。浅川氏によると、その裏には農水省のバター利権があるという。
オルタナ37号(2014年6月発売)第一特集「農水省がおかしい」から抜粋して紹介する。(オルタナ編集部)
バターについては、2008年にも品薄騒動があった。だが、翌年春には過剰在庫を抱えたかにみえた矢先の同年夏にはまた品薄になった。同省は2010年にも緊急輸入をしている。同じ乳製品の牛乳やチーズなどが品不足になることはない。なぜバターだけが、頻繁にお店の棚から消えるのか。実は奇妙でも何でもない。その答えは、天下り団体「農畜産業振興機構」によるバター輸入独占業務にある。通常の食品であれば、国産が足りなければ民間の事業者が輸入すれば済む。しかし、バターについては農水省のバター利権があるため、そうはいかない。独占輸入のペーパーワークだけで、毎年10億円以上の収入を得る。2億円近くある同機構の役員報酬の原資になっている。自ら輸入数量をコントロールし、バター不足を演出する自作自演だ。
4月には小麦価格の値上げが発表されたが、バター利権と同じ「農水省の独占業務問題」である。日本の小麦の需要量(年間約550万㌧)の9割は外国産で、農水省が安い輸入小麦を無関税で全量買い取り、「マークアップ」と呼ばれるマージンを1㌧につき2万円ほど上乗せして高く製粉会社に販売する国家統制が行われている。
マークアップとは、1割に満たない国内の小麦農家のために支払われる補助金原資である。これにより製粉会社への売り渡し価格は国際相場の約2倍になる。消費者は高いパンや麺などの小麦製品を買わされ、差額は農水省の差配を通じた、生産者への補助金バラマキに化ける。
国産小麦の生産量はわずか74万㌧で、生産額は260億円しかない。それなのに補助金の総額は約1300億円にのぼる。生産額の5倍の補助金で農業が強くなるはずがない。一方で農水省にとっては、この補助金を特別会計にすることで、自分たちの利権にできる。輸入価格に上乗せされる輸入小麦のマージンは、農家の保護というより、役所の利権温存に使われているのだ。マークアップを廃止すれば、小麦の値上げは必要ない。
バターや小麦利権は「TPP問題」とも密接に関係している。農水省では「白いモノ(麦、バターなどの乳製品、コメ、砂糖)を扱うと出世する」(農水省OB)伝統がある。
白いモノとは農水省が独占する国家貿易品目であり、すべてTPPで「聖域品目」とされているものばかりだ。
農水省は麦500万㌧、コメ80万㌧を輸入する世界に冠たる「輸入商社」である。TPPで、農水省が恐れるのは国内農業の壊滅ではない。貿易の自由化によって「農業保護」を名目に享受してきた輸入独占権を失うことにある。(浅川 芳裕: 農業ジャーナリスト)
農水省に巣食うバターの利権はマスコミで取り上げられない。この話題、20年前にも読んだことがある。国家予算から見たら少ない話なので誰も真剣には取り上げないようだ。各省庁、天下り団体をたくさん作って、勝手に関税をかけて輸入商品の価格を釣り上げ、その税金は○○振興のためと称して、農家や酪農家にバラマキ、あとは役人の交際費や給料になっている。座っているだけ、輸入許可するだけで濡れ手に泡、こんなおいしい利権、手放すわけはない・・・・
農林水産省所管の農畜産業振興機構の役員・職員の年収・ボーナス(2011年)
役員の年収・ボーナス(2011年)
役名 |
年間報酬 |
うち賞与 |
A理事長 |
902.3万円 |
224.9万円 |
B理事長 |
767.3万円 |
74.7万円 |
C副理事長 |
829.2万円 |
206.1万円 |
D副理事長 |
857.9万円 |
228.2万円 |
E総括理事 |
1,608.4万円 |
410.9万円 |
F総括理事 |
1,402.7万円 |
410.9万円 |
G理事 |
740.3万円 |
183.6万円 |
H理事 |
762.9万円 |
203.3万円 |
I理事 |
649.6万円 |
183.6万円 |
J理事 |
760.8万円 |
203.3万円 |
K理事 |
760.0万円 |
183.6万円 |
L理事 |
760.1万円 |
203.3万円 |
F理事 |
200.5万円 |
0万円 |
M理事 |
745.3万円 |
183.6万円 |
N理事 |
630.0万円 |
61.0万円 |
O監事 |
1,300.0万円 |
331.5万円 |
P監事 |
643.8万円 |
157.3万円 |
Q監事 |
532.8万円 |
52.2万円 |
それにしても膨大な独立法人が・・・・一体どんな仕事やっているんでしょう?
総務省発表の「独立行政法人の役職員の給与等の水準」(平成24年)上位50位/103法人
1位 |
原子力規制委員会 |
原子力安全基盤機構 |
231人 |
809万8000円 |
2位 |
文部科学省 |
宇宙航空研究開発機構 |
430人 |
781万円 |
3位 |
経済産業省 |
日本貿易保険 |
95人 |
775万1000円 |
4位 |
国土交通省 |
都市再生機構 |
3063人 |
765万4000円 |
5位 |
国土交通省 |
住宅金融支援機構 |
803人 |
764万5000円 |
6位 |
経済産業省 |
工業所有権情報・研修館 |
43人 |
761万9000円 |
7位 |
国土交通省 |
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 |
1159人 |
753万2000円 |
8位 |
厚生労働省 |
労働政策研究・研修機構 |
54人 |
751万4000円 |
9位 |
総務省 |
平和祈念事業特別基金 |
9人 |
750万3000円 |
10位 |
厚生労働省 |
年金積立金管理運用 |
62人 |
748万7000円 |
11位 |
経済産業省 |
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 |
305人 |
748万5000円 |
12位 |
外務省 |
国際交流基金 |
110人 |
718万7000円 |
13位 |
農林水産省 |
農林漁業信用基金 |
82人 |
716万9000円 |
14位 |
国土交通省 |
海上災害防止センター |
21人 |
715万5000円 |
15位 |
国土交通省 |
国際観光振興機構 |
37人 |
711万3000円 |
16位 |
厚生労働省 |
国立成育医療研究センター |
28人 |
707万9000円 |
17位 |
外務省 |
国際協力機構 |
981人 |
707万2000円 |
18位 |
財務省 |
日本万国博覧会記念機構 |
42人 |
705万4000円 |
19位 |
国土交通省 |
空港周辺整備機構 |
16人 |
700万8000円 |
20位 |
文部科学省 |
科学技術振興機構 |
444人 |
697万1000円 |
21位 |
文部科学省 |
理化学研究所 |
360人 |
695万7000円 |
22位 |
文部科学省 |
日本原子力研究開発機構 |
2015人 |
694万9000円 |
23位 |
経済産業省 |
中小企業基盤整備機構 |
620人 |
689万7000円 |
24位 |
経済産業省 |
情報処理推進機構 |
116人 |
687万4000円 |
25位 |
厚生労働省 |
勤労者退職金共済機構 |
228人 |
681万7000円 |
26位 |
農林水産省 |
農業者年金基金 |
49人 |
678万3000円 |
27位 |
経済産業省 |
製品評価技術基盤機構 |
318人 |
677万5000円 |
28位 |
厚生労働省 |
国立健康・栄養研究所 |
6人 |
676万6000円 |
29位 |
文部科学省 |
日本スポーツ振興センター |
275人 |
675万4000円 |
30位 |
国土交通省 |
水資源機構 |
1204人 |
675万2000円 |
31位 |
農林水産省 |
農畜産業振興機構 |
174人 |
674万6000円 |
32位 |
文部科学省 |
海洋研究開発機構 |
233人 |
667万3000円 |
33位 |
文部科学省 |
日本芸術文化振興会 |
197人 |
666万2000円 |
34位 |
厚生労働省 |
年金・健康保険福祉施設整理機構 |
9人 |
665万8000円 |
35位 |
農林水産省 |
国際農林水産業研究センター |
32人 |
665万2000円 |
36位 |
国土交通省 |
日本高速道路保有・債務返済機構 |
45人 |
665万1000円 |
37位 |
総務省 |
郵便貯金・簡易生命保険管理機構 |
24人 |
664万7000円 |
38位 |
経済産業省 |
日本貿易振興機構 |
495人 |
660万6000円 |
39位 |
総務省 |
情報通信研究機構 |
109人 |
660万4000円 |
40位 |
厚生労働省 |
福祉医療機構 |
211人 |
659万6000円 |
41位 |
厚生労働省 |
国立精神・神経医療研究センター |
23人 |
659万2000円 |
42位 |
厚生労働省 |
高齢・障害・求職者雇用支援機構 |
995人 |
656万3000円 |
43位 |
国土交通省 |
自動車事故対策機構 |
234人 |
654万9000円 |
44位 |
文部科学省 |
教員研修センター |
29人 |
652万3000円 |
45位 |
経済産業省 |
産業技術総合研究所 |
549人 |
649万8000円 |
46位 |
消費者庁 |
国民生活センター |
101人 |
644万9000円 |
47位 |
環境省 |
環境再生保全機構 |
84人 |
644万2000円 |
48位 |
厚生労働省 |
労働者健康福祉機構 |
1032人 |
640万5000円 |
49位 |
内閣府 |
国立公文書館 |
33人 |
639万9000円 |
50位 |
国土交通省 |
電子航法研究所 |
9人 |
638万5000円 |
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