オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

キューポラのある町

2011-06-13 | 映画


当時、日活映画は最盛期に入ろうとしていた。私も劇場で見たが、殆ど何も覚えていない。今回改めてみて、元気の出る良い映画だと思う。

鋳物の町、埼玉県川口市が舞台。辰五郎も、昔怪我をした足をひきずりながらも、職人気質一途に働いてきた。辰五郎のつとめている工場が買収され、辰五郎はくびになる。退職の涙金も出ず、妻トミ、長女ジュン、長男タカユキ、次男テツハルの五人家族は、暮らしに困るようになる。辰五郎は朝鮮人嫌い、組合嫌いの職人気質で、ジュンの親友ノブコの父の会社に仕事がみつかっても新しい技術についてゆけずやめてしまう。最終的には元の吸収された会社の事業拡張で戻ることになり、石黒家にも一家団欒の幸せが戻ることになる。

その間、タカユキの家出やジュンの高校受験、ジュンのパチンコ屋でのアルバイトや登校拒否、朝鮮人の北朝鮮帰還問題で次から次と難題が降りかかってくる。
親とは別に子供たちの世界があって、地域コミュニティの中で子供たちは成長していく。貧しくてもまっすぐに強く生きていく子供たちの模範的な姿が描かれていく。

「働いていても何かをつかみ取り理解する。それを積み重ね、付け焼き刃でない自分の意見を創り上げるのが本当の勉強だ。」
「一人では何もできない。話し合い、語り合い、助け合おう。」
「一人が五歩より五人が一歩前進して、日本が這いあがるとき」など、教条的な共産党のプロパガンダみたいな映画でもあるが、文句の付け所のない健康的な映画だ。

昔は元気なガキ大将やつよ~い姉ちゃんがいましたね。その子達がリーダーシップを取って子供たちの世界を取り仕切っていた。不思議に正義が貫かれていた様に思う。金持ちの子はリーダーシップも思いやりにも欠けていたからガキ大将にはなれなかった。二世政治家は人物的に政治家としては欠ける所があるのはうなずける。

小学生の友達に一才上のしっかり者がいて、わからずやのガキ大将にビンタを食わせて退散させたのをそばで目を丸くしてみていた自分を思い出す。その友達は今も意気盛んでロシア語と中国語の語学学習に数十年を費やし、モスクワや北京に何度も語学留学を果たしている。人格と言うのは子供の頃から周りの大人や子供たちの秘密の世界で練り上げられていくものなのだと痛感する。今のように核家族で篭の中で育った子供たちは親のコピーになってしまうことが多く、常識的で利口ではあるが、型破りには育ちにくい。特に親の厳しい管理下に置かれる男の子は型にはめられることが多く、この点からも女の方が自由で元気に生きられる日本の状況があるのかもしれない。


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