個人の人工知能(パーソナルAI=PAI)を開発するオルツの最高経営責任者(CEO)、米倉千貴(かずたか)さん(38)が話しかけた。相手はPAIで作った自分のデジタルクローン。
米倉「今日の夜、何時からあいてる?」
デジタルクローン「20時00分からあいてるよ」
米倉「食事に行きたい」
デジタルクローン「OK、何食べる? 和食はどう?」
米倉「いいよ」
パソコンの画面上には自らの顔。自らの声に似せた合成の音声が応える。今年中の実用化を目指す。PAIはフェイスブックなどSNSの情報やメール、位置情報を取り込んでその人の行動、趣味、人との関係性、口調、癖などを自然に学習していく。結果、デジタルクローンが「その人っぽく」活動するようになる。
デジタルクローンは過去の人物も再現できる。本人の死後もデジタルクローンは動き続ける。「自分を残したい、という欲望をかなえる手段の一つと思う。プログラムの中で人は永遠に生きられる」。
海外でも取り組みが進む。米マサチューセッツ工科大学のプロジェクトから始まったベンチャー企業「Eternime」。オルツ社と同様、SNSでの記録などから人格を再現する。「昨日のパーティーはどうだった?」。そんな会話を1日数分、AIと交わし、40~50年かけてデジタルクローンが完成する。
人格を残そうという試みが進む一方で、姿だけでいい――と思う人もいる。
3Dプリンターでフィギュア作成などを手がける大阪市のロイスエンタテインメント。写真から3Dデータを起こし、実在する人の人形を作る。高さ20~30センチ。特殊な石膏(せっこう)を固めて着色する。価格は10万円以上だが、昨年は半年で30体の申し込みがあった。多くは亡くなった人の再現だ。
「正直、フィギュアか、と思う気持ちもある。どんなに会いたいと願っても会えないことはわかっている。でも、話しかけたい」。「忘れないと言いながら、徐々に記憶が薄れていくのも怖い。それを止めたかった」
ただ、AIで復活させたいとまでは思わない。「死を受け止められなくなってしまうから」
「残す」のではなく、「受け入れる」ための試みも始まっている。人工知能(AI)を搭載した人型ロボット「Pepper(ペッパー)」に、故人の人格などを宿らせる「デジタルシャーマンプロジェクト」。ここでは、AIが少し違う使われ方をしている。生前に録音した声やしぐさをペッパーが再現し、大切な人を亡くした遺族に寄り添う。ただプログラムは永遠には残らず、49日で自然に消える。その間に少しでも心の整理を手助けできたらという試みだ。文化庁の補助事業にも選ばれた。
多くの人がソーシャルメディアなどを通して情報をインターネットにアップロードしている。文書、画像、動画、音声など、これらの情報は「ライフログ」と呼ばれ、生活の記録を残している。ライフログを基にして、「デジタルクローン」をつくり出す。記録だけではクロ-ンはできない。人間の脳は、膨大なデータから、大切だと感じるものだけを選んで、記憶している。“何が重要なデータかを判断する”人工知能ができれば、感情豊かで人間により近い存在になるという。
遠い将来には、DNAに基づいて新しい生体を復活、創造させることも可能になる。そしてライフログなどのパーソナル・データと一体化されれば、身体を伴った、完全なクローンになる。DNAから再生した身体に情報をダウンロードすれば、不老不死が達成されると考えてもいい。デジタルクローンが人類の自然な進化の形になる可能性がある。
人の知性がAIとしてインターネット上に存在することになり、人が肉体を捨て、永遠に“再現”され続ける未来。AIたちが知性を集約し、科学技術を発展させ、物事を合理的に判断して、社会を進化させる。人間を含めた生物たちは最適に調整された環境で芸術活動や単純作業を楽しむ。インターネット上に移住した知性は意思をもち、人間の尊厳を守るために判断する。肉体を捨てることを選んだ知性には、生も死も大きな意味をもたないから、私利私欲におぼれることもないだろう。
これから人工知能の技術は産業的にも人間のパ-トナ-としても非常に重要になってくる。少子高齢化する日本、労働力が減ってくる中で人工知能は知的労働を肩代わりし、弱者のための働きやすい環境を作ってくれるかもしれない。人工知能に命令されて働く方が幸せだという時代がやってくるかもしれない。セクハラもパワハラもなく、常に合理的な判断をして、部下にやる気を起こさせる。
高度に知的な仕事は私的な欲望を消したAIに任せた方がうまくいく。最も期待したいのは政治家だ。国民の幸せを考える卓越したAIの大統領や首相の開発が待たれる。
強欲で頭の悪い政治家はもうたくさんだ。
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