goo blog サービス終了のお知らせ 

オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

教育勅語の中身はいい???

2017-03-26 | 政治
「教育勅語」について、松野博一文科相は3月14日の記者会見で、憲法や教育基本法に反しないような配慮があれば「教材として用いることは問題としない」との見解を示した。
また、稲田朋美防衛相は3月8日の参院予算委員会で「教育勅語の精神は取り戻すべきだと考えている」と持論を展開。福島瑞穂議員(社民)から「教育勅語が戦争への道につながったとの認識はあるか」という問われると、「そういう一面的な考え方はしていない」と反論した。
 
勅語が発布されたのは1890年。明治政府の軍事拡大路線を指揮し、治安警察法などの国民弾圧体制を確立した、内閣総理大臣・山縣有朋は、自由民権運動を潰し、天皇と国家神道支配の強化、富国強兵と中央集権体制の確立のため、教育勅語をつくらせた。そして、国民をたやすく誘導するための仕掛けが「親孝行」「夫婦仲良く」など、儒教をベースにした誰でも受け入れることのできる通俗概念だった。
その「親孝行」「夫婦仲良く」も、家父長制と男尊女卑の明治憲法下で、家族や日常生活での道徳を説くことで、「日本全体をひとつの家族とみなしたとき、家父長である天皇」に従わせる構造をつくりだしたのが、教育勅語であった。
 「森友学園のように小さい子どもに丸覚え、暗唱させるのはよくないけど、中身じたいはいい」などという分かったような意見をしたり顔で述べる輩も多いが、教育勅語は、子どもに暗唱させて洗脳する道具であったという事実をまるでご存じないらしい。各学校は天皇の御真影とともに教育勅語の写しを奉納する奉安殿を建て、生徒には最敬礼を義務付けた。そして、塚本幼稚園の園児たちと同じように全文暗唱を強制したのである。満州事変が起きたのは、勅語発布の1890年に小学校1年生だった第一世代が40代となり、彼らを親とする第二世代が成人したくらいの時期で、教育勅語による洗脳教育が完成された時期と一致する。
反戦の声をあげるような者もいなくなり、国家総動員法や特攻隊を正当化する概念の基盤として機能し、太平洋戦争へと突入していった。
 しかも、敗戦後、教育勅語はGHQから禁止され、日本の国会も排除・失効を自ら決議した。にもかかわらず、「いいことを書いている」との無知な意見が垂れ流される。その背後には、教育勅語を復活させ、国家のために国民に命を投げ出させる体制をつくりたいと考える勢力があるように思う。
 
安倍内閣の意図することは分かりやすい。共謀罪、性犯罪の非申告罪化、親学(親を教育して、家庭内で政府の意図する教育をさせようとする)など、社会・家庭内監視を正当化することによって、相互監視システムを構築しようとするもの。そして、年金原資を使って株価を操作したり、「水道法改正」と「種子法廃止」で日本の資産を外国に売り飛ばそうとするものだ。
小泉首相の規制緩和で、自治体は水道事業の大部分を民間に委託することが可能になった。しかし、水道事業に参入しても儲けが期待できないから民営化は進まない。 しかし、今回の水道法改正で、災害で水道管が破損しても、復旧費用の大部分は自治体持ちということになった。日本の水道事業の資産規模は約30兆円といわれ、災害リスクが大幅減となれば、大手外資企業が狙ってくる。自治体などにその地域に合った作物のタネの開発・普及を義務づけていたのが種子法だが、種子法廃止が実現してしまうと、外資系の種子会社が参入し、日本のタネを独占することにもなる。なかでもアメリカの『モンサント社』の遺伝子組み換え作物のタネが日本に広まることになりそうだ。
 
これ以上、事態が悪化しないうちに、退陣願いたいものだが、大阪の強欲なおっちゃんの暴露にも自民党はスクラムを組んで安倍首相を守る態勢。どこの国でも政治家が劣化している。
今の政治家の主な仕事は、国も地方も口利きであるようだ。有力な政治家になるほど全国各地から陳情団が押しかける。秘書はその陳情書を丁寧に受け取り、その9割を議員会館のダストシュートに投げ入れる。
国会議員は国の安全と国民生活の安心のために働くという第一義の事は頭にないようだ。同盟国であるアメリカのトランプ政権は動きがとれなくなりつつあり、北朝鮮はミサイルに核弾頭を取り付けて発射する練習に励んでいる。正論的には、大阪のゴミだらけの土地の事で騒いでいないで防衛問題を考えろと言いたいが、無能な政府がやる気を出せば、かえって武力衝突になるやもしれず、しばし、籠池のおっちゃんに頑張ってもらって安倍政権の動きを封じ、頼りない稲田防衛大臣が居座って自衛隊の士気を低めてもらいたいものである。

株高を演出する2頭のクジラ(朝日新聞)

2017-02-26 | 政治
約40兆円に及ぶ年金と日銀マネーは、いまや日本市場の「隠れた巨大株主」になっている。その存在の大きさから「2頭のクジラ」とも呼ばれる両者の公的マネーに支えられた「官製相場」は、企業の「稼ぐ力」を反映せず、株価に割高感をもたらしている。巨額の公的マネーが大株主になっている企業をみると、安定した業績や高収益の企業が目立つ。しかし、公的マネーの押し上げ効果は、実力以上の株価をもたらすことになりかねない。GPIFと日銀の実質的な保有比率が約12%と高いのが、カジュアル衣料「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングだ。
 同社の株式は、創業家出身で、会長兼社長の柳井正氏が約2割をもつ。他の企業との持ち合い株などを除き、市場に出回る同社の株式は全体の25%程度とみられるが、両者の割合が多くを占めるため、一般投資家が買いにくい状況になっている。投資家からは「企業の実力と比べて株価が割高になっており、手が出せない」との声もあがる。実際、ユニクロ事業の低迷で昨年10月に発表した16年8月期決算の純利益は前年より半減したが、株価は直近までに約6%上昇している。中央大商学部の原田喜美枝教授は「企業業績と株価の連動がどんどん薄まっている。公的マネーの巨大な存在が株価をゆがめている」と指摘する。事業再編や取締役の選任などを通じ、「稼ぐ力」の向上を促す企業統治(ガバナンス)の強化にも支障が出かねない。GPIFも日銀も、企業経営への「官」の介入を避けようと、株主総会での議決権行使は信託銀行などに任せている。米資産運用会社の幹部は「公的マネーが『もの言わぬ』与党株主になる恐れがある」と話す。取引のある複数の企業が互いに株式を持ち合って、異を唱えない安定株主として議決権を行使する関係が、形を変えて復活することを懸念する声もある。
 
■東芝株、130億円含み損
 日本トラスティ・サービス信託銀行(JTSB)は昨年8月、東芝を相手どり、「不正会計問題で株価が下がり、保有する東芝株に損失が出た」として、約120億円の損害賠償訴訟を東京地裁に起こした。
 原告はJTSBだが、東芝株を実質的に保有し、損失を受けたのはGPIFだ。GPIFは信託銀を通じ株式を売買し、株式を持つ名義人は信託銀になる。GPIFは昨年3月末で7%超の東芝株を間接保有し、東芝の「隠れた大株主」だ。JTSBは昨年5月にもGPIFが保有する東芝株をめぐり、12億円超の損害賠償を求め提訴した。昨夏の段階で、年金マネーは東芝株で計130億円の含み損を抱えたことになる。東芝は昨年末に原発事業の損失が発覚し、再び株価は急落している。GPIFは経営破綻(はたん)した企業の株も間接的に保有する。公表された昨年3月末の保有株式リストをみると、時価総額「1円」「2円」と計上される株式がある。倒産した橋梁(きょうりょう)メーカーのサクラダと、編み機メーカーのシルバー精工だ。シルバー精工は「株価の乱高下による投機を狙った仕手株」(中堅証券幹部)で知られ、投資に不適切な銘柄だった。東証1部上場の両社は上場廃止になり、今は売ろうにも売れない。仕手株にまで年金マネーが手を出すのは、GPIFが、東証1部全体の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)などに合わせ株式に投資するためだ。
 
 年金の財源として着実な運用が求められるGPIFは東証1部の全銘柄を買い、市場全体が上がれば運用益も上がる投資手法を中心にする。一方、市場全体が下がれば、国民年金や厚生年金の加入者である自営業者や会社員が負担した積立金に損失が出る。
 日銀もETFを買い、特定の株式を買う仕組みにはなっていない。ただ、その「巨体」を市場は無視できなくなっている。
 
 
 
 去年7月の参院選後に公表された2015年度の運用損失は実に約5兆3000億円。それに加えて2016年4~6月の3か月間だけで5兆2342億円の穴を空けたことも明らかになり、この15か月での損失合計は10兆5000億円を超えた。
「短期の話をしても意味がない。政権発足時(2012年12月)からのトータルで見ると、運用益は27兆7000億円のプラスになっている」 安倍首相はそう言い訳した。
 
 GPIFはアベノミクスによる株価急騰が一段落した後の2014年10月に運用方針を転換し、従来の国債中心の「安全運用」からハイリスク・ハイリターンの「株式運用」に資金をシフトさせた。日本株式による運用比率が12%から25%へ高められ、外国株式が25%と、変動が大きい株による運用が50%を占めており、株価が上昇すればお金は増えるが、下がれば減る。ところが、それ以降の収支は大赤字。運用失敗は年金財政を直撃した。2015年度の厚生年金会計は保険料引き上げと加入者の増加で収入が3兆8500億円増えたが、5兆円以上の運用損失で5年ぶりの赤字に転落し、国民年金会計もリーマンショック以来7年ぶりの赤字となった。年金法改悪による受給額引き下げによって、国が年金生活者から召し上げる年金額は、今後10年間で10兆円と試算されている。運用の損失を年金減額で穴埋めしようと考えたように見える。
年金積立金の半分を株で運用するのはまるで素人が他人の金で無責任に大博打をやり始めたようなもの。ありえない話だ。
 
塩崎恭久厚生労働相は記者会見で、“短期的な変動に過度にとらわれることなく、長期的に安全かつ効率的な運用が行われることが大事だ”と他人事のように言っていた。
素人が考えてもリスクが大きすぎる。GPIFの最大の問題点は、既に東証1部上場の会社の多くで大株主になっており、株を持ちすぎてしまったが故に、株を売りたい時に売れないことだ。株式市場に大きな影響を与えることなく、株の売却を行うことができるわけがない。利が乗っているときに売れない株を持っていてもまるで意味がない。年金生活者から見れば、GPIFのギャンブル失敗のツケを、年金で強制的に補填させられる構図でしかない。

ラストベルトの復活は単なる選挙対策?

2017-02-12 | 政治
トランプ大統領は、ラストベルトの労働者に支持された。製造業の衰退とともに、時代についていけない白人労働者の転落があり、その人たちにとってはトランプは救世主のように見える。
ラストベルトの典型は、クリーブランド、ピッツバーグ、デトロイトなどだが、本当に今も衰退し続け、再生の息吹も感じられないのか?どうやらそうではないようなのだ。
クリーブランドは、ミネソタ産の鉄鉱石と、アパラチア産の石炭が積み下ろされる地で、鉄鋼産業や自動車産業が発達した。1920年には人口が約80万人となり、全米第5の都市になったが、60年代以降、重工業は衰退し、市も貧しくなった。市は衰退の一途をたどり、「アメリカで最も惨めな都市」とされた。確かにさびついてしまったのだが、現在は違う。都心部は、人口が同程度の日本の地方都市より洗練され、住宅地は、超高級住宅地だ。もちろん、荒廃した地域はあるが、環境のよい住宅地が広がっているのだ。クリーブランドで、製造業に代わって、金融、保険、医療産業など、高度なサービス業が発展したのだ。クリーブランドは、もともと医療産業が強かったので有力な医療機関が集まり、医療機器やヘルスケア産業関連の企業が多数集積し、医療産業都市を形成している。
ピッツバーグは、アンドリュー・カーネギーが近郊に鉄工所を創設し、鋼の生産が始まった。1901年には、他の鉄鋼2社と統合され、アメリカ最大の鉄鋼会社USスチールが設立され、同市に本社が置かれた。10年代には、全米で生産される鉄鋼の3分の1から2分の1がピッツバーグで生産された。しかし、70年代から80年代に、鉄鋼業は衰退した。工場は相次いで閉鎖に追い込まれ、町には大量の失業者が溢れた。製鉄工場の廃墟と公害が残り、アメリカで最も住みにくい都市の一つに転落した。しかし、ピッツバークも蘇っている。ピッツバークは、ハイテク産業をはじめ、保健、教育、金融を中心とした産業構造に転換し、健康医療産業の成長が著しい。同市は、全米2位の医療研究都市となり、世界中から企業や民間研究機関がピッツバーグに集まり、巨大な医療産業が形成された。鉄鋼工場の廃墟が医療施設群にとって代わったことから、ピッツバーグはいまでは全米で最も住みやすい都市になった。
 
アメリカは、ダメになってしまったわけではない。「グローバル化によって痛めつけられた白人層がトランプを支持した」と言われ、そうした人たちがいることは、事実だ。しかし、それがアメリカの平均かと言えば、決してそうではない。ラストベルトですら、全体としては目覚ましく復活している。しかし、アメリカの復活は、製造業の復活によってもたらされたものではない。新しい産業が生まれることで実現した。ラストベルトの場合は、医療産業であった。トランプ大統領はそれを理解してないのか、理解しながらも白人貧困層の支持を取り付けるために、1980年代までの主要産業であった製造業を復活させようとしているのか。
 
メイドインチャイナの製品であふれかえっているアメリカの市場でメイドインUSAの勝ち目はない。トランプブランドでさえ、メイドインチャイナなのだから、滑稽極まりない。中国の製品に高額の関税をかければ、困るのはトランプ支持層を含む貧困層である。当たり前のことだが、いつまでも滅びゆく産業に固執しないで、新しい産業を勃興し、そこで働く労働者を育成していくのが国の役割である。政策からこぼれ落ちた国民のセ-フティネットを厚くし、所得の再分配をして、消費(需要)を増やすのが国の役割である。独裁者の指先一つで国の産業構造が変わるはずがないのだ。
 
 
米国の国産車販売台数トップ10を日本勢が独占!
米国の自動車情報サイトCars.comは毎年自動車部品の国産化率75%以上で生産された国産自動車販売数TOP10のランキングを発表する。去年に引き続き今年もフォードのF150 がトップを独占! 2位は去年と同じく北米トヨタのカムリがランクイン、だが今年のTOP10ランキングには変化が見られた。なんと10台中7台が日本のメーカーによって独占された。今まで3年程ランクインしていたGM社が生産している3大クロスオーバー(Buick Enclave, Chevrolet Traverse, GMC Acadia)の部品の国産化率が75%を下回ってしまったのだ。
他にも去年の純国産率リスト(AMI)3位にランクインしていたDodge Avengerがランキングから消えた。その理由としては生産終了となり、後継車がいまだ発表されていないからだそうだ。
ちなみに米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)によると現在米国で販売中の車種の中で国産化率75%を達成したのはわずか13台のみと発表された。だが見事達成した13台中Dodge Avengerを含め3台が生産終了などによりリスト不適格とみなされた。
米国産販売ランキング TOP 10
 
フォード F-150 (生産工場ミシガン州ディアボーン;ミズーリ州クレイコモ)
トヨタ カムリ(ケンタッキー州ジョージタウン;インディアナ州ラファイエット)
ホンダ オデッセイ(アラバマ州リンカーン)
トヨタ シエナ(インディアナ州プリンストン)
トヨタ タンドラ(テキサス州サンアントニオ)
トヨタ アバロン(ケンタッキー州ジョージタウン)
シボレー コルベットスティングレー(ケンタッキー州ボーリングタウン)
ホンダ リッジライン(アラバマ州リンカーン)
ホンダ クロスツアー(オハイオ州イーストリバティ)
ダッジ バイパー(ミシガン州デトロイト)
 
「アメリカ国産指数」というのは米国産のパーツ使用率、生産場所、販売台数の3要素で決定される。従って、アメリカで生産され、かつ販売台数も大きい自動車が、「国産車」と定義されることになる。
 
 
トヨタとホンダの車がアメリカ国産車ランキングのトップ10車種中、7車種を占める。トランプが何か言ったら、アメリカから撤退すると脅してもいい状況ではないか?
 

日米首脳会談-トランプへの手土産

2017-02-04 | 政治
日米首脳会談に向け、政府が検討する経済協力の原案が2日、明らかになった。トランプ米大統領が重視するインフラへの投資などで10年間で4500億ドル(約51兆円)の市場を創出し、70万人の雇用を生み出すとしている。日米間の貿易不均衡を批判するトランプ氏に10日の会談で示して理解を得たい考えだが、日本の公的年金資産の活用をあて込むなど異例の手法だ。
 
 題名は「日米成長雇用イニシアチブ」。経済協力の5本柱で「両国に成長と雇用をもたらし、絆をさらに強化」するとうたう。米国でのインフラ投資では、約17兆円の投資で65万人の雇用創出を想定。テキサス州やカリフォルニア州の高速鉄道計画への協力、都市鉄道や地下鉄車両の3千両刷新などを盛り込む。
 巨額の投資には「日本のファイナンス(資金)力を最大限活用」と明記。メガバンクや政府系金融機関による融資のほか、外国為替資金特別会計、公的年金を長期運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資金活用も見込んでいる。
 また、日米以外の国の市場を一緒に開拓し、民間航空機の共同開発や原発の共同売り込みでも10年間で1500億ドル(約17兆円)の市場開拓をめざす。研究開発分野では、日本が得意なロボット技術、米国が先行する人工知能(AI)の連携を進める。医療介護分野のロボット開発、サイバーセキュリティーの向上でも協力する。(朝日新聞) 
 
 『朝貢外交』が始まった。
安倍総理が2月10日のトランプ大統領との会談で、51兆円の対米投資で、米国に70万人の雇用を創るという手土産を持っていくという。
 日本は黒字国だが、政府には金がない。毎年大幅赤字で、「2020年にプライマリー・バランス回復」という見通しも絶望的だ。その政府が50兆円をどこから捻出するのか?民間企業に対米投資促進を言うのならまだしも、報道によれば、外為特別会計や公的年金積立金の流用を考えているようだ。公的年金の積立金を使って、アメリカ人ファ-ストの政策を行うというのだから、安倍総理の頭もいよいよ末期症状だ。
 GPIFの株式運用で損を出せば、国民の将来不安を増幅し、日本経済に大きなマイナスだ。年金で生活する一人の国民として、ニュ-スを見た途端に、絶望的な不安感に襲われた。
 
国内のインフラ投資でさえも簡単にはできないGPIFの規定もあるのに、どうしていきなり海外インフラ投資ができるのだ?もう7割かたがリスク資産に入ってしまっているGPIFだが、さらに米国のインフラというリスクに投資するという。こういう事態になっても、国民は「No」を突き付けることができない。この国には国民を守るリーダーがいない。
 
さすがにまずいと思ったのかGPIFの件は安倍首相がとりあえず否定している。
安倍首相は、アメリカのトランプ大統領との日米首脳会談を前に、東京都内のホテルでトヨタ自動車の豊田章男社長と会談し、トランプ大統領が重視する雇用の創出に向けた今後の対応などについても意見を交わした。日米両政府は、安倍晋三首相とトランプ大統領がワシントンで2月10日に予定する会談の後、大統領専用機「エアフォースワン」で一緒に南部フロリダ州へ移動する方向で調整に入った。
避寒地パームビーチにあるトランプ氏の別荘で、夕食を交えて再会談する。異例の厚遇に安倍首相がどんな約束をするのか、空恐ろしい。
 
エアフォースワンは大統領執務室などを備えていて「空飛ぶホワイトハウス」とも呼ばれる。日本の首相がエアフォースワンに同乗するのは、2006年のブッシュ元大統領(子)と小泉純一郎元首相以来となる。

1mmも進まない北方領土

2016-12-18 | 政治
北方領土は武力で奪われたもの、交渉で返す相手ではないだろう。
不可侵条約を破って侵攻し、降伏後にさらに占拠して、現在に至っている。クリミアが交渉で戻るわけがないのと同様に北方領土もまた交渉で戻るわけがない。
ロシアは水産資源が欲しくて国後、択捉を奪ったのではない。千島列島の海峡は冬季結氷して航行不能だが、国後、択捉以南は不凍海峡である。ロシア海軍の艦船が自由に太平洋に出入りできるという軍事的意味を持つ。北海道までソ連領にしようと目論んでいたのだから、どんなことがあっても4島は戻らないだろう。
世界中を見ても、占拠されていた領土が交渉で戻ってきた例はない。
 
竹島でさえ、戻ることはないだろう。日本と韓国は、ともに米国の同盟国であり、自由、民主主義、市場経済という価値観を共有するにもかかわらずである。
相手の弱みにつけ込んで領土を奪い取るのは、今でも国際政治の常識である。日本が中近東やアフリカの領土問題に無関心であるように、直接利害を有しない第三国は、日本の領土紛争に関心を示さない。国際司法裁判所の判決は何の強制力もない。
 
今回の日ロ首脳会談では領土は1ミリも進展せず、全国民が落胆している。自民党幹事長・二階俊博まで安倍首相の対応を批判したことが進展と言えば進展だ。「日本側としては、領土問題を解決し、平和条約を早期に締結することが課題であり、経済問題も大事かもしれないが、人間は経済でだけ、生きているわけではない。ロシア側には『もう少し、真摯に向き合ってほしい』と鋭く切り込んでいくべきで、国民の大半はがっかりしているということを、われわれも含めて、心に刻んでおく必要がある」
 
率直に国民に会談の不調をわびるべきなのに、あたかも返還に向けて突破口を開いたような高らかな宣言は慎むべきだろう。
 
さらに領土交渉に冷水をぶっかけるような一部報道が飛び出した。谷内正太郎国家安全保障局長がパトルシェフ安全保障会議書記に対し、引き渡し後の北方領土に米軍基地を設置する可能性を否定しなかったというのだ。ロシアのメディアは「(北方領土が)日本になれば、米軍基地が置かれる可能性がある」(国営テレビ電子版)と伝え、一斉に反発した。
ロシアのペスコフ大統領報道官は14日、日ロ高官が11月に、北方領土の2島が日本に引き渡された場合の米軍基地設置の可能性を議論したという日本の一部報道について「コメントしない」と語った。その上で「ロシアなら会談内容を明かさない」と述べ、日本側に強い不快感を示した。報道官は15、16両日の日ロ首脳会談で米軍基地問題が議論されるかどうかも問われると、回答を拒否した。
 
まさに側近がぶちこわしたことになる。この北方領土の米軍基地化の話が、プーチンが記者会見でも言及していたが、最大のネックになった形跡がある。北方領土返還反対論の外相ラブロフと国防相ショイグが連名でプーチンに書簡を送り、反対したといわれるのも、この安全保障上の理由からだとみられている。
 
ロシアは経済支援をもとに、ますます軍事基地化を強化しかねない。本来なら日本の主権を明確にしないままで共同経済活動などすべきではない。対露制裁を延長しようとしているG7の足並みを乱す会談結果だともいえる。
安倍の経済協力優先の方向は今に始まったことではないが、金をばらまくだけで日本の経済成長に貢献した事案はあるのだろうか。
プ-チンの催眠術にかかったかのような安倍首相の上機嫌は「殿ご乱心」にしか見えない。

オスプレイ不時着して大破

2016-12-14 | 政治
アメリカ軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の海兵隊の新型輸送機オスプレイが不時着したと報道された。現場は名護市の東約1キロの沖合で、機体は大破した。
 
毎日新聞は「オスプレイ バラバラの『不時着』 防衛省『墜落』否定」との見出しで、「上空から見ると機体の損傷度合いから『墜落』したようにも見えるが、防衛省は事故公表後にいち早く『不時着』と表現。安全性への懸念が広がることへの警戒感をにじませた」とした。
防衛省は「不時着」とした理由について、米側が「着水」と表現していることや、5人全員が生存していることから海面に強くたたきつけられたものではないとしている。稲田防衛相は「コントロールを失った状況ではなく、パイロットの意思で着水したと考えている」と述べた。( 毎日新聞)
 
今回の事故について、朝日新聞など全国紙やテレビのキー局の多くは「不時着」としたり「事故」と表現しているが、沖縄の地元紙である琉球新報と沖縄タイムスは「墜落」と表現している。
 
現場の海岸浅瀬に横たわっている事故機をみると、真っ二つに機体が折れて大破し、回転翼も飛び散って原形をとどめていない。これがコントロ-ル可能な状態で不時着と言うのでしょうか?
米軍準機関紙「星条旗」は今回の事故を「墜落(クラッシュ)」と報じ、琉球新報も当初から事故を「墜落」と報じている。
 これまでも米軍はオスプレイなどの米軍機事故で「墜落」という言葉を使って発表することは少ない。機体が大破して事故規模が最も重大な「クラスA」に分類された事故でも「激しい衝撃を伴う着陸」を意味する「ハードランディング」という言葉を使うことが多い。2015年5月に米ハワイ州で発生したオスプレイの事故も機体が炎上し、乗員2人が死亡したにも関わらず「ハードランディング」と説明した。事故は機体価格(約72億円)を上回る約97億円の損害額と算定され「クラスA」に分類された。
 13年8月に米ネバダ州で発生したオスプレイの事故も「ハードランディング」と発表し「着陸失敗」と説明したが「墜落」を否定した。AP通信はこの事故を「墜落」と報じている。
 1998年7月に沖縄県の米海兵隊基地キャンプ・ハンセン内で起きた普天間飛行場所属のUH1ヘリの事故も海兵隊は当初「事故(アクシデント)」ではなく「出来事(インシデント)」と発表した。「墜落」ではなく「ヘリが着陸しようとした際、急速に降下して地面にぶつかった」と記していた。
 実際はヘリが樹木に激突して大破し、乗員4人が負傷した。99年4月に米側が発表した報告書の表題は「海兵隊ヘリ墜落事故」と記し、この事故を明確に「墜落」と断定した。琉球新報はこの事故も当初から「墜落」として報道した。
 
事故発生の一報は、当局の発表でも仕方がないが、NHKがヘリを飛ばして現場を撮影したのであれば、「墜落」と報道するのが真実を伝える報道機関の使命だろう。現場を確認し、画像を放映しながら、なお、不時着と言い張る。報道規制がかかっていた戦時中の「大本営発表」と同じだ。日本のマスコミは本当に情けない。
 
米軍の態度もひどいものだ。沖縄県の安慶田(あげだ)光男副知事は在沖米海兵隊トップのニコルソン四軍調整官に対し抗議した。安慶田副知事によると、ニコルソン氏は「パイロットは住宅、住民に被害を与えなかった。感謝されるべきで表彰ものだ」と抗議に不満を示したという。さらにニコルソン氏はかなり興奮した様子で「(事故を)政治問題にするのか」と言ったという。安慶田副知事は「県民はオスプレイの配備も訓練も認めていない」と述べたが、ニコルソン氏は最後まで怒りが収まらない様子だったという。安慶田副知事は面会後、報道陣に「謝罪は全くなかった。本当に植民地意識丸出しだなと感じた」と述べた。ニコルソン氏の激高した様子はNHK9時のニュ-スでも放映された。「事故は遺憾だが、パイロットはすばらしい仕事をした。沖縄の人を危険にさらさなかったパイロットの判断は遺憾に思わない」と興奮した様子で述べた。
 
防衛省は1機200億円のオスプレイ17機を購入する。米国防総省の国防安全保障協力局(DSCA)によると、価格は関連装備も含めると推定で総計30億ドル(約3600億円)。2015年度の社会保障予算削減分3900億円に匹敵する金額だ。2019年度から陸上自衛隊に順次配備する。

健康ゴ-ルド免許

2016-11-29 | 政治

1026日、小泉進次郎衆議院議員らを中心とする自由民主党若手議員20人のグル-プが、雇用や社会保障に関する大胆な政策提言を行った。

社会保険を全非正規労働者に適用拡大した「勤労者皆社会保険制度」、低所得労働者の社会保険料本人負担の免除、在職老齢年金制度の廃止、軽微な疾患・医薬品への公的医療保険適用の見直し、年金支給年齢の引き上げなど、人々の多様な働き方にあわせて、社会保障制度でセーフティネットを張っていく意図はわかるし、それなりに賛成できる。

ただ、「健康ゴールド免許」と言うのが気に入らない。

2020年以降、高齢化の進展に加え、医療技術がますます高度化すると、医療介護費用が一層高額化していく。 医療介護制度の持続可能性を確保するためには、「病気になってから治療する」だけでなく、そもそも「病気にならないようにする」自助努力を支援していくと言う。医療介護費用の多くは、生活習慣病、がん、認知症への対応であり、これら は、普段から健康管理を徹底すれば、予防や進行の抑制が可能なものだと言う。 しかし、現行制度では、健康管理をやってきた方も、自己管理が悪くて生活習慣病になってしまった方も、同じ自己負担で治療が受けられるのはおかしいという。今後は、健康診断を徹底し、早い段階から保健指導を受けてもらう。そして、健康維持に取り組んできた者が病気になった場合は、自己負担を低くすることで、自助を促すインセンティブを強化すると言う。

優良ドライバ-に「ゴールド免許」が与えられるのと同じ発想であり、医療介護版の「ゴールド免許」である。これには批判が噴出した。フリーアナウンサー長谷川豊氏の透析患者に対する暴言が背景にあった。長谷川氏は、人工透析患者の相当な割合が自堕落な生活を続けたことが原因による自業自得の患者であるとし、さらには自業自得の透析患者の費用は全額自己負担にし、無理なら「殺せ」と主張したのである。

今回の「健康ゴ-ルド免許」構想は、病気になったのは自己責任と言う意味で長谷川氏の暴言と同じものである。 確かに予防は可能だが、健康な生活をしていても病気になる人はいるわけで、自己責任と決めつけるのは、むちゃくちゃな話である。

「予防に努力した人と努力しない人を分けて、医療費負担額に差をつける? それでは病気になった人への制裁ですよ」。「認知症の人と家族の会」代表理事の高見国生さん(73)は言う。

 井手英策・慶応大教授(財政学)は「『中流』から転落しないようにと多くの人が必死になっている格差社会では、自己責任論が広がりやすい。そんな状況で努力した人・しない人と区別する政策は、社会のさらなる分断を招きかねない」と懸念する。

 同じ食事、同じ生活でも、病気になる人もいればならない人もいる。自己管理ができないから病気になるわけではないのだ。確かに医療費削減のために健康管理は必要だという理屈は正しいのかもしれない。しかし、そもそもこの議論は国民の健康が目的なのではなく、医療費の削減と言うところに狙いがある。

本当に検診が増えて予防医療が盛んになれば、医療費は下がるのか?現在の健診は、健康意識の高い、相対的に豊かな層の中高齢者が、自身の健康を高めるツールとして利用している。健康リスクの高そうな人たちが未受診であるという現状は、もし健康診断の受診率を高めた場合にどういうことが起きるのか?受診、そして保健指導の実施により、これまで受診してこなかった人たちの医療サービス需要を高めることで、医療費が高まる可能性すらある。予防医療というのは、そもそも医療費の削減のためにあるのではなく、国民の健康の質を高めるためにあるのであって、そのために費用がかかっても、健康上のリターンがあるならば、実施する価値はある。ただし、費用の節減を期待して実施するなら、必ずしも期待に沿えるものではない。 慢性疾患の抑制は、医療費を削減するが、長寿化によって、生涯ベースでみた医療費は果たしてどこまで減るか疑問である。殆どの人は、医療費の大部分を終末期に使う場合が多いが、その時期が先にくるか、遅くになるか、という違いに過ぎないかもしれない。確かに長寿で死ぬと終末期医療費が少なくなるという可能性も否定できないが、ガンなど不治の病が早めに見つかった場合、延命治療だけがいたずらに長くなるという可能性もある。

要するに、「健康ゴールド免許」構想を、好意的に健康診断の促進策として捉えた場合でも、人々の健康の質は高まり、満足度は高まる可能性は高いが、医療費の節減効果として期待に沿えるかどうかはわからない。

さらに「健康ゴールド免許」構想の問題点は、インセンティブを高めるツールとして、患者の自己負担割合を使おうとする発想だ。民間保険の場合、患者の健康リスクに応じて変化するのは保険料率であり、自己負担割合ではない。そもそも、保険というのは、リスクに対して事前に加入者間でリスクシェアをするものであり、事後的に給付割合が変わってしまう保険などあり得ないのである。また、健康診断を受診しないのは、低学歴、低所得の人たちに見られる特徴で、「健康ゴ-ルド免許」は、所得の再分配の観点から、逆再分配をしようと言う危険な発想である。

誰も好き好んで病院に行くわけではなく、やむにやまれず行くのであり、あまり価格のことはかまっていられない。つまり、健康リスクの高い人たちに高い自己負担割合を課すというのは、彼らの医療支出をあげるということになる。

しかも、自己負担をあげることによって抑制できるかもしれない受診と、抑制できない受診がある。また、一時的に外来受診が抑制できても、その分、人々の健康状態が悪化し、結果として入院確率が高まるということになるかもしれない。このように、本来はきめ細やかな対応が必要とされる医療給付において、自己負担の増減でインセンティブをつけようとすること自体、弱者に冷たい施策である。

自分の命に係わることだから、インセンティブを与えなくても生活にゆとりのある人は自主的に健康管理をする。健康管理ができないのは生活に余裕のない人であり、一番医療保険を必要としているのに、あなたは努力していないから多く支払いなさいと国が言うのが正義なのか?平等なのか?

 人間が生きる上での基盤となる医療や教育、衣食住を市場原理に委ねるから、格差がますます増幅され、貧困が世代間に受け継がれてしまう。頑張った分だけ報われることを否定するわけではないが、生きる上で基盤になる医療や教育、衣食住で格差が拡がるのは正義とは言えない。誰もが頑張れるよう、基盤を整えることが政治の役割だ。ホームレスであろうと金持ちであろうと、平等に医療を受けられる、それが医療の在り方だ。

高学歴、高所得者が多いと思われる組合健康保険や共済組合の受診率は70%を超えるが、国民健康保険では34.2%、特に大都市の国民健康保険では27.9%と言う。健康リスクの高い人ほど検診を受けない。生活の苦しい人は検診を受ける時間的・金銭的余裕すらないのである。

もう一度言う。医療の施策は国民の健康長寿が目的である。その施策によって医療費が増大し、逆効果になるかもしれない。医療費を削減したいなら、薬価、そして薬漬けの治療にこそメスを入れるべきであり、検診を高めることで医療費削減を期待すべきではない。


TPPとともに農業改革も事実上の廃案へ

2016-11-25 | 政治

小泉進次郎氏は、自民党農林部会長を務めていて、全国の農家を巡っている。そして、「10年後の農業」のために大切なことは、「失われた持続可能な農業を取り戻すこと」と語る。日本のコメ農家の平均年齢は70歳を超え、跡継ぎがいない農家も多い。放置された田畑が急増している。

小泉氏は、「農家を増やす政策ではなく、農業経営者を増やす政策」を考えているという。家業としての農業を守るのではなく、「農業に就職できる環境を作りたい」ともいう。

手間暇かけて栽培する果物や米など、日本の農作物は世界的に評価が高い。目指すはオランダだ。面積も人口も九州と同じだが、農産物の輸出額は世界第2位である。

小泉氏は、「生産コストを下げ商品の付加価値をつけて、海外に輸出していく基盤を作っていくことが大事だ。人口減少を嘆くのではなく、イノベーションで解決する。人工知能(AI)の活用も重要だ。」

これまでのAIは、リンゴやイチゴ、トマトなどを認識できなかった。いまやAIは、この「認識」ができるようになった。つまり収穫作業、間引きや選果など、たいへんな労働作業をロボットに任せることが可能になるというのだ。農業が将来性のある産業になるというのだ。

農業改革は農協改革なしでは行えない。ひと口に農協といっても、地域の個別の農協(単位農協)のほか、事業ごとに県組織と全国組織がある。単位農協は、農業従事者や農業を営む法人によって組織された協同組合で、全国の数は679。農家に苗や肥料などを販売し、農業を指導し、農産物を市場に出荷するのが本来の役割だ。そのほか、貯金や共済保険も扱っている。

 全国組織としては、単位農協の指導・監査を行う全国農業協同組合中央会(JA全中)、販売、購買など経済事業を手がけるJA全農、貯金事業の運用機関として農林中央金庫(農中)、共済保険事業では全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)などがある。農協改革を行う場合、地域の単位農協には政治的な集票力があるので手をつけにくい。そこで、全国組織がターゲットになる。もともと、農業は地域性がポイントであるので単位農協は重要だが、画一的な指導を行う全国組織が単位農協の自主性を阻害すれば、農協全体ひいては農民のためにもならないからだ。

 農協改革を目指した改正農協法は、昨年8月に成立した。その柱は、JA全中の持つ強大な権限の源とされる、単位農協に対する監査・指導権の廃止だ。これは既に決着済みなので、JA全中は改革に前向きだ。残されたのはJA全農である。金融事業の全国組織である農中やJA共済連は、単位農協にとっても不可欠な存在であり、もはや金融事業なくして都市部の単位農協の存続は不可能なので、農中やJA共済連が改革の俎上に乗ることはない。

 農業改革を主導する自民党の小泉進次郎農林部会長が正念場を迎えている。力を注いできた全国農業協同組合連合会(JA全農)などの抜本改革をめぐり、積極的な推進を求める政府の規制改革推進会議作業部会と、性急な改革を嫌う与党幹部との板挟みになっているのだ。合同会議は2時間を超え、45人の議員から「農協つぶしで地方創生に逆行する」などの批判が続出した。参院議員61人は「提言を絶対に認めることはできない」との決議も出した。

 作業部会が会議前に示した提言案では、全農は1年以内に資材販売事業から撤退、貯金や貸し出しなど金融事業を行う地域農協を3年後をめどに半減-などの急進的な内容だった。だが、党内では農業票に支えられる地方議員を中心に、提言案への反発が強まり、21日の全国農業協同組合中央会(JA全中)が都内で開いた農業改革に関する緊急集会には、二階俊博幹事長も出席し言い切った。「自民が皆さんを裏切るようなことはありません」

 自民党は7月の参院選で農業が盛んな改選数1の東北6県のうち5県で敗北。小泉氏は農業改革を訴えて東北にも応援に入ったが、結果は出せなかった。
自民党農林関係部会の幹部らは23日、政府の規制改革推進会議が提言した全国農業協同組合連合会(JA全農)など農協の急進的な改革案をほぼ白紙に戻す農協改革案の骨子をまとめた。3年後をめどに金融事業を行う農協を半減させるなどとした提言の内容は盛り込まず、従来通りJA全農に自己改革を促す。同会議が28日にもまとめる最終提言も同様の内容になる公算が大きく農協改革は事実上、失敗した。

TPPがやっと農業改革を推進するかに見えたが、これで元の木阿弥である。笑っちゃうね。


トランプ大統領

2016-11-11 | 政治

米大統領選はドナルド・トランプ氏が勝利したが、得票数ではヒラリー・クリントン氏が僅差で上回っている。にもかかわらず、トランプ氏が接戦を制したのは米国独特の「選挙人制度」が背景にある。各州に割り当てられた選挙人を選び、その選挙人が大統領を決める仕組みだ。大半の州は1票でも多く得票した候補がその州の選挙人を全て獲得する「勝者総取り方式」を採用するため、選挙人の獲得ではトランプ氏が289人とクリントン氏の218人を大きく上回っている。2000年の大統領選でも、得票数で上回ったゴア氏(民主党)に対し、大票田フロリダ州で537票差で選挙人を総取りしたブッシュ氏(共和党)が当選した。

EU離脱に続いて、また予想しない事態が起きた。まさかのトランプ大統領である。全米の出口調査によると、白人の55%、黒人の8%、ヒスパニック系の27%がトランプ氏に、白人の37%、黒人の87%、ヒスパニックの65%がクリントン氏に投票したという。

昔の良き時代に戻せというトランプはアメリカ孤立主義者で排外主義者。

「アメリカはアメリカの繁栄だけを考えていればよい。もっとアメリカを豊かにしよう。偉大なアメリカにしよう。アメリカ人の生活さえ良くなれば、あとは知ったことじゃない。」

世界の警察官を止め、アメリカが出てこなくなるなら、中国やロシアは大歓迎。意外と平和外交になるかもしれない。

日本との関係も、「なんで、オレたちがあいつらのことを命を懸けて護らなきゃいけないんだ。自分の身は自分で護れ。」ということになる。

「TPPもやめる。日本のクルマにも家電にも思い切り関税をかけてやる。アメリカだけ良ければいいんだ。」

白人の貧困層に受けたという。しかし、考えてみれば、クリントン大統領になっても議会は共和党が安定多数、重要な施策はまるっきり実現できなかったろう。オバマに始まる8年間の決められない政治が継続し、民主党がさらに信頼を失うのは明白だった。そう考えると、トランプになった方が4年後のアメリカには良いかもしれない。

保護貿易主義で白人困窮者を救えるのか。外に出て行った製造業を元に戻せるのか。白人の雇用を増やそうと思ったら、人種差別、またはニュ-ディ-ル政策のように公共投資を大規模にするしかない。最初の演説で減税と公共投資と言う相容れない政策を同時に実施することを明らかにした。

トランプは、市場に任せれば経済はうまく回るとアメリカが30年間にわたり主導してきた「グローバリズム」と「新自由主義」を、真っ向から否定した。その訴えがアメリカ国民の心をとらえた。格差の元凶はグローバリズムだ。一握りの富裕層だけが富み、中産階級が崩壊した。トランプが『中国が雇用を奪っている』『雇用を奪うTPPを止める』と自由貿易を批判すると、聴衆は拍手喝采し、熱狂した。これは“サンダース現象”にも通じる。サンダースも、新自由主義を否定し、TPPを『破滅的な協定だ』と批判して支持を集めた。

行き過ぎた新自由主義とグローバリズムが当のアメリカで限界に達しつつあることを今回の大統領選は示した。安い労働力を求めて企業が海外に進出したために雇用は減り、その一方、安い商品が海外から流入し、アメリカ製は競争力を失ってしまった。それにもかかわらず、安倍首相のTPP信仰は揺るぎないようだ。TPPはグロ-バリズムを進める政策だ。例外なき関税撤廃、自由貿易が大前提のTPPに参加したら、日本の産業と雇用が破壊される。世界の企業と戦って生き残れる企業が日本に多いと政治家も産業界も錯覚しているのか。日本が強い自動車産業だって、全メーカーが生き残れるはずがない。まず農業、林業、漁業は、外国産に太刀打ちできない。第1次産業が壊滅し、地方経済は成り立たなくなる。新自由主義とグローバリズムの本質は、一般国民を犠牲にしてグローバル企業を儲けさせることだ。世界的な大企業は潤うが、庶民には縁がない。だからアメリカも、産業界、特に金融業と製薬会社はTPPに賛成し、多くの国民が反対している。

日本製品が世界市場を席巻している時だったら、TPPのメリットがあったかもしれない。国際競争力が低下している今、参加するのは狂気の沙汰だ。「異次元の金融緩和」で経済対策に何十兆円もの税金をつぎ込んでもデフレはおさまらない。安い製品が入ってくるグロ-バル化を進めているのだから、当然だ。
 日本のGDPの6割は個人消費。一部のグローバル企業を強くし、多少輸出を増やしたところで、景気が良くなるはずがない。
アメリカの代弁者として経済学者やエコノミストが、新自由主義、規制緩和、構造改革をはやし立てる。年功序列、終身雇用、系列といった日本型経営をアメリカ型に変えて日本は豊かになったのか?雇用が守られることなく、派遣労働者が増え、結婚、子育て、マイホーム取得と言った当たり前の人生設計を立てられなくなった。将来不安で消費も低迷する。

 アメリカ大統領選でなぜ、「トランプ現象」や「サンダース現象」が起きたのか?まだアメリカほどの超格差社会になっていない日本はよく考える必要がある。

 

トランプ大統領誕生後、各地で反対デモが起きているのを見て、改めてアメリカの超格差社会はすさまじいと気づかされた。

金持ちの子弟しか、ハーバードには入れない。年間の授業料が7万ドルだという。アメリカのほとんどのエリート大学の授業料は高すぎて庶民は入れない。そして、エリート大学を出た者だけが投資銀行などで年収2000万~3000万からのスタートになると言う。

それ以外のアメリカ人は就職口がない。あるいは、大学を卒業してもアルバイトで食いつなぐ人生だ。格差がどうにもならないところまで拡がってしまっている。

今回の選挙戦で面白かったのはマスメディア、有力新聞が殆どクリントン支持を公表したにもかかわらず、国民はクリントンにそっぽを向いたことだ。ウォール・ストリートの代弁者のようなマスコミに国民が反逆したのは実に痛快だ。トランプは土建屋だから、実業は重んじるけど、金融業の大金持ちには増税するかもしれない。予測可能性が乏しい状況を市場が好むことはほとんどなく、トランプ氏は投資家にとっては悪夢だ。

バーニー・サンダースと部分的に通じるものもある。

バーニー・サンダースは社会主義的な方法、トランプは独裁的な方法で社会改革をやろうとしている。新自由主義やグロ-バル化が進めば、民主主義国家では国民が過激なチェンジを求めて意思表示を始める。そういう意味ではアメリカはとても健全な国だ。この4年間がアメリカでグロ-バリズムの転換点になることを祈りたい。少なくとも共和党の本質が露わになり、信頼を失うことを望みたい。

 


大統領選-サンダ-スの功績

2016-11-07 | 政治

今回の米大統領民主党予備選で、バーニー・サンダース氏が善戦した。社会主義を打ち出し、驚くべき人気を得た異色の候補がもたらしたものは大きい。熱烈な支持者からの小口の寄付金だけに頼って圧倒的強さを誇るクリントン氏に食い下がるサンダース氏は、無党派層を動かした。ワシントン・ポスト紙(WP)によれば、出口調査の結果、アラバマ、アーカンソー、マサチューセッツなどのいくつかの州では、サンダース氏を支持する有権者の45%は無党派であり、他の州でもサンダース氏に票を投じた人の3分の1が、無党派だとされている。民主党から出馬した理由はメディア報道を得るためだとサンダース氏は語っており、自らの主張を広めるために民主党を利用したとも言える。

TPPに反対したり、ウォール街を激しく攻撃することで、クリントン氏の政策を大きく、左寄りに変えることができた。若者を政治に引き付けた功績も大きい。サンダース氏は30歳以下の民主党有権者の76%という圧倒的な支持を受けていた。

 サンダース氏の撤退にあたって、クリントン氏は、サンダ-ス氏の教育プランを自分の政策に採用し、健康保険制度に関する方針にも積極的に歩み寄る姿勢を見せた。一家の年収が125千ドルまでの家庭の子どもたち、つまりアメリカの8割以上の家庭が対象となる学費無料化政策や現在65歳以上が対象となっているメディケア(老人医療保険制度)の対象年齢を55歳にまで引き下げるプランはサンダ-ス氏の功績だ。さらにクリントン氏は、現在のオバマケアに代わり、年齢にかかわらず公的保険制度に加入させるという政策を掲げた。2008年の大統領選時に彼女が提唱した政策である。また、患者の医療費支払い能力にかかわらず初期医療が受けられるようにするため、全米各地の(低所得者層向け)地域医療センターへの400億ドルの拠出も約束した。大統領選に立候補するにあたり、クリントンは、賛成の立場を取っていた環太平洋経済協定(TPP)に対して、反対の立場を取っている。民主党の候補者選びの終盤戦でクリントンが重要政策に関して左寄りに方針転換を図らざるを得なくなったことは、彼女がサンダース陣営の草の根的な選挙運動に苦戦していたことを示している。共和党のライバルであるドナルド・トランプが無策であるが故に、クリントンは左寄りの政策を取ることができた。民主党が掲げる現在の政綱は、まるでサンダースのウェブサイトから写し取ったような内容になっているという。
1
時間あたり15ドルの最低賃金の実現も含まれている。ウォールストリートの改革案として、大銀行の解体と、銀行業務と証券業務の分離を定めたグラス・スティーガル法の復活を提案している。刑事司法制度の改革としては、死刑制度の廃止、民営刑務所の廃止、警官の発砲に対する司法省による監査実施が挙げられている。さらに気候変動対策として、連邦議会に対し温暖化ガスの排出に税金を課し、すべての政策決定に際して気候変動問題を重要視することを求め、さらに、風力や太陽光などの再生可能エネルギーへの支出を増やすよう提言している。

サンダ-スは民主党の政綱を大きく変えた。「我々は大きく前進した。ここまで支援してくれた全国の何百万もの人々、その多くは初めて関わってくれた人たちだが、その皆さんのおかげで民主党の歴史に残る最も革新的な政綱を作ることができた」と、その功績を支持者のおかげとする。

社会主義なんてアメリカ人には絶対に受け入れられない思想のはずなのだが、それが若者に受け入れられ、無視できなくなっている現実がある。先進国のほとんどがリーマン・ショックの後始末に追われており、大量に発生した低所得者層がツケを払わされている。その一方で、大企業や大銀行は合併を繰り返して巨大化、富は十分に蓄積されているのにトリクルダウンはいつまでたっても起きない。極右の台頭が先進国で目立ち、自分たちが得るべき権利と自由を取り戻すために、社会的弱者に拳を振り上げる。本当の敵は企業国家なはずなのに、新自由主義政策なはずなのに、移民や貧困層に汚い言葉を投げつける。2008年の金融危機で人々の暮しを台なしにした巨大銀行、一般市民には手の届かない高額な医薬品や保険制度で人々を苦しめる巨大な医療企業、そのような大企業の利害に操られる政府や議会……強欲な資本主義経済による不均衡な富の配分を正すしか資本主義の再生はないのに、その犠牲者にも本当の敵が見えない。

資本主義の矛盾が一番先に現れるのが米国なのかもしれない。そして今、経済格差や貧困問題と人種差別の暴力が同じ根を持つ資本主義経済の構造的暴力であることが理解されはじめた。人種差別を維持する経済構造そのものを変えるための具体策として、収入や雇用の格差解消策、教育や生活の質の向上など具体的な政策が民主党の政綱に盛り込まれた

今回の大統領選が強欲資本主義の転換点になることを祈りたい。