北海道新聞2011.03.17.夕刊第１面
円急騰一時７６円台
戦後最高値投機筋、円買い
17日の海外の外国為替市場で円相場が一時、１ドル＝76円25銭まで急騰し、1995年４月につけた戦後最高値(79円75銭)を約16年ぶりに更新した。東日本大震災と福島第１原発事故を受け、日本の機関投資家や企業が円資金を確保するため、これまで蓄えたドルを円に換えて国内に戻すことを見込んだ投機筋などが円を買った。
急激な円高は、輸出企業の採算悪化など震災で混乱する日本経済に追い打ちを掛ける恐れがある一方、原油や食料の輸入にはプラスになる。欧州時間の17日夜(日本時問18日朝)には先進７カ国(Ｇ７)の財務相・中央銀行総裁が、日本支援で電話協議を行う見通しで、市場では、日本政府などが為替介入に踏み切るか注目している。
円相場は16日のニューヨーク市場で最高値の水準を突破、17日のシドニー市場でさらに円高が進んだ。円は一時、１日で５円近くの異例な値上がりとなった。続く東京市場では一時、79円台後半まで円は売り戻されたが、東京株式市場の日経平均株価(225種)が400円超下げる場面もあった。
円急騰は、欧州連合幹部が原発事故について「事実上制御不能」と語ったと伝わり、ニューヨーク株式市場が下落幅を拡大したのがきっかけとなった。
16日のニューヨーク市場の午後５時現在は前日比１円13銭円高ドル安の１ドル＝79円55～65銭。
原発事故は本来、日本経済への懸念から円安要因にもなるが、ドルの有力な買い手である日本から海外への投資が減るとの思惑を招き、円高ドル安が進みやすくなった。野田佳彦財務相は17日朝、「さまざまな思惑で神経質な動きが出ている」と述べ、円高は投機的な動きと示唆した。
