~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

側弯症の治療は基本(装具)を守ること  カーブを抑え込めれば怖いことはありません

2010-01-02 00:51:54 | 20年後のアウトカム
当記事のオリジナル作製は2010年1月2日です。データを整理して再公開することを計画していたのですが、なかなか作業が進みませんため、とりあえずもう一度このオリジナルのまま再公開することといたしました。

長期成績に関しても、もう一度データを整理していきたいと考えております。

2018年6月25日
august03

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添付画像は、医学専門文献検索のPubMedを検索していて見つけた最新の研究報告書
のアブストラクトです。

昨日の「2010年の目標」にも記しましたように、側弯症の治療は「医学」が行う
ものであって、側わん整体が手をだすものでも、まして口をはさんで患者さんを
惑わすものでは決してありません。私august03は単なる憤りを述べているのではなく
医学的事実を示すことで、皆さんに(思春期特発性)側弯症とはどういうものであり
またその治療にはどういう方法があるかをこのStep by stepの中で示してきました。
今回は、その治療の結果がみなさんの将来.....これから10年後20年後にどういう
結果がみなさんの身体に起こるかについて、最新の文献を引用して、ご説明したい
と思います。



専門誌 SPINE 2009年12月号
Health-Related Quality of Life in Untreated Versus Brace-Treated Patients
With Adolescent Idiopathic Scoliosis: A Long-term Follow-up.
思春期特発性側弯症に対する装具療法患者と非治療患者の長期フォローアップ

試験デザイン:25度~35度カーブの思春期特発性側弯症患者に対する装具療法調査
スゥエーデンで実施された同調査後の長期フォローアップ
目的:この長期フォローアップ調査の目的は、以前実施された調査に参加した被験者
の“生活の質”を、装具療法患者と非治療患者とで比較することである。
背景データサマリー:以前の調査では“生活の質”について患者調査表SRS-22を
使用してのデータを公表していなかった。今回、その結果について発表する。
方法:前回調査期間中に、初潮が始まるまでにカーブ進行が6度未満であった40人の
患者に、あえて装具治療は行わず、「観察」のみとした。また同じ年齢群の37人の
患者には装具療法を実施した。ともに、研究プロトコールに定めた調査期間中の
検査と観察を完了した。“生活の質”については、SRS-22とSF36を用いた。
結果:前回調査は骨成熟完了をもって終了。今回調査実施時における平均年齢は
32歳で、装具療法患者と非治療患者とを“生活の質”の面から比較した結果、
そこには「差」がないことがわかった。
前回調査から今回調査までの間の期間の平均は16年で、前回調査完了時点での
カーブ角度は平均30度、今回の調査では平均35度であった。
SRS-22調査表の平均点は装具患者4.2点、非治療患者4.1点であった。
結論:治療終了時点で、25度~35度の中等度カーブの場合、30代における生活の質
は良好であることが判明した。これは、装具療法患者の場合も、非治療患者の場合
も同じであった。また、側弯症を有しない一般人における生活の質を同じ調査表
で調べた結果と、患者群とには差がなかった。

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(august03よりの説明)
 このブログ内でも何度かスゥエーデンにおける長期データについてご紹介して
きました。今回もその範疇の長期調査結果を示したものですが、09年12月という
最新の脊椎外科専門誌SPINEに掲載されていたものです。

調査研究発表自体は最新なのですが、実はここで述べられていることは、特に
目新しいものではなく、このStep by stepのなかで他の研究報告も含めて何度か
ご紹介しているものと同じ内容になります。同じ内容の「追加」「積み重ね」
ということになります。

あらためて側弯症治療の基本を振り返ってみながら、この報告の意味とも重ねて
説明してみたいと思います。

①側弯症の治療は「経過観察」からはじまります。
 医師は、すぐに治療は開始しません。様子を見ます。そしてこの様子を見る、
 ということも大切な治療の一貫なのです。
 .....大塚測わん整体をはじめとする側湾整体は、この「様子を見る」という事
 を捉えて、整形外科医は何もしないが、自分らはすぐに測ワン体操や施術をして
 患者を「治す」と宣伝していますが、その考え方自体が間違っています。
 考え方というよりも、それは「商売の隙間を見つけて、うまく付け込んでいる」
 ということにすぎません。
 なぜならば、「経過観察」期間中に、進行せずそのままの患者さん、進行しても
 中等度に収まる患者さん、何もしなくてもカーブが減少する患者さん。
 そういう患者さんもいるからです。
 そういう事がありうるゆえに、その患者さんが「進行性」なのか、そうでないか
 を見極める必要があるわけです。
 この期間中は、神経質にならず、ある意味ではお母さん方も、決して心配を顔に
 ださずにじっと我慢することが大切です。お母さんが動揺すると、それはお子さ
 んに伝わります。この期間中は、じっと我慢することが大切なのです。

②進行性の疑いが濃い、ということになりますと、装具療法が勧められます。
 もちろん、するかしないかは、医師が決めることではなく、患者さん(ご家族)が
 結論をださなければなりません。
 お子さんともよく話し合って、あせらずに話し合ってみてください。
 セカンドオピニオンが欲しいと希望すれば、主治医は必要なレントゲン写真等も
 準備してくれると思います (費用はかかると思いますが)
 装具療法は、いわば、お子さん自身の自覚(前向きに取り組む気持ち)とご家族と
 学校、友人等の周囲の協力が必須です。無理強いすることは逆効果になり、
 精神的に追い込むことにもなりますので、ゆっくりと話あってください。
 
 装具療法の目的は、カーブ進行を「抑え込むこと」にあります。
 そして、ここに今回の調査報告も含めた「長期データ」の持つ意味合いがあります。
 結論を端的に述べれば、装具療法完了までの期間中を25度~35度に抑え込む事が
 できれば、その後の人生はほぼ側弯症を忘れて生活できる。ということが
 これらのデータから示されているわけです。

 ただし、全ての患者さんに装具が効果を持つわけではありません。
 データによりその差があるのですが、約70%~80%の患者で装具が効果を有する事
 がデータから示されています。
 側弯症の治療は、装具が基本。ということが言えるわけです。

③進行性の場合、ある限界を超えたら手術が勧められます。
 手術をするかしないか、それも皆さんが結論をだすことになります。
 リスクとベネフィットを考えて、お子さんがどういう将来を過ごすことが
 お子さんにとって幸せなのか、そういうことをじっくりと考えて結論を出す事が
 大切です。
 私august03は、自分でも掲示板を設置して管理していてこういう言い方は矛盾
 しているのですが、ネット掲示板ほど当てにならないものはない。と言わせて
 いただきます。特に、大塚整体の宣伝媒介となっている掲示版にはいまだに
 整体が患者のフリをして書き込みをしています。あのような掲示板が存在する
 限り、ネット掲示板は信用してはいけません。
 手術に関する情報が必要であるならば、「側弯症患者の会」に加入して、いま
 現在治療中の本当の患者さん(お母さん)がたと情報交換することをお勧めします

あなたのお子さんは進行性ではないかもしれません。その場合、装具療法はある意味
で過酷な試練を何年間も耐えさせる修行のような意味合いになってしまいます。
残念ながら、現代医学では、進行性か非進行性かを見極める技術がまだありません
前回紹介しました米国での臨床試験や、現在多くの研究が進められている遺伝子
レベルの研究が進めば、将来、遺伝子を調べることで進行性、非進行性が判明する
ことができるようになるかもしれません。
しかし、それがまだできない現時点で、皆さんにとっての選択肢は、装具をするか
あるいは、あえて運を天にまかせる方式で何もしないか、という二者択一となり
ます。
整体にいっても意味はありません。お金を無駄にするだけと、測わん整体に行く
ことは、日本の側わん症治療環境の破壊に手を貸すことになります。
皆さんにそろそろ、そのことに目を覚まして欲しいと願うのが再びこの一年の私
august03の日課になりそうです。
進行性か非進行性かは、いわばガンが進行性か非進行性かのレベルと同じような
ものです。進行性の側弯症であれば、整体にいっても止まるはずがありません。
非進行性の場合はお金を無駄にしたことになります。
一回5000円(交通費も入れれば1万円前後でしょうか)、一度通いはじめたら、
おそらくは彼らの口車にのって、断りきれずに10回、20回と通うことになるでしょう
あるいは、それ以上でしょうか。

一見治ったように「見える(非進行性)」確率は、50%あります。これは丁半バクチと
同じなのです。そして、丁半バクチで確率50%の親元がどれだけ儲かるか想像できる
でしょうか。これほど楽に金もうけができる商売はありません。ネットで患者さん
に恐怖を植え付け、医者の悪口を言ってさえいればいいわけです。こども騙しの
写真を並べて、ビフォーアフターと書いてさえおけば、その患者さんが一か月後
半年後、1年後にどうなったかということに考えを及ばす以前に、焦っている
お母さんはコロリと騙されてしまうわけです。

そして、最悪は、通っているあいだにカーブが進行し、ふと気づいたときには
手術せざるえなくなっていた。という例がいまだにあるということです。

手術はできればしなければしないほうがいいのです。
そして、その為には、装具療法を進められる状態になったら、装具療法を続けられる
環境を作ることに努力してください。

そして、もしも手術が必要になったとしても、それが人生の終わりのような
そういう意識は持たないことです。手術はいわば最後の砦であって、しかも頑丈な
頼もしい砦です。もしそれがなかったら、それこそお子さんは悲劇的状態になって
しまうことになります。手術で治せる、ということがどんなに安心感があることか
そのことに目を向けて見てください。
ガンは手術しても治らない種類のガンがたくさんあります。でも側弯症は手術を
すれば元のような身体を取り戻すことができるのです。

側弯症に限らず、患者さんは自分の病気については正しい理解が必要です。
皆さんも、正しい知識を学んで、側弯症を恐れるのではなく、この病気と闘う勇気
をもって進んでいかれることを願っております。

august03



STUDY DESIGN.: The previous Scoliosis Research Society brace study (JBJS-
A, 1995) included patients with adolescent idiopathic scoliosis (AIS)
with moderate curve sizes (25 degrees -35 degrees ).
The Swedish patients in this study were examined in a long-term follow-
up. OBJECTIVE.: The aim was to analyze and compare quality of life in
adulthood between AIS patients who were only observed or treated with a
brace during adolescence.
SUMMARY OF BACKGROUND DATA.: Quality of life as measured by the SRS-22
has not previously been presented for adult untreated AIS patients.
METHODS.: Forty patients who were only observed (due to a curve increase
of less than 6 degrees until maturity), and 37 brace-treated patients
attended the complete follow-up, including clinical and radiologic
examination, and answered 2 quality of life questionnaires (SRS-22 and
Short Form-36 [SF-36]).

RESULTS.: No differences were found between the groups in terms of age at
follow-up (mean: 32 years), follow-up time after maturity (mean: 16.0
years), and curve size at inclusion (mean: 30 degrees ) or at follow-up
(mean: 35 degrees ).
The SRS-22/total score was a mean of 4.2 for braced patients and 4.1 for
only observed patients. Neither total scores/subscales of the SRS-22 or
SF-36 differed significantly between the groups. For the SF-36, no
differences in relation to the Swedish age-matched norm scales were
found for either group.
CONCLUSION.: Patients with moderate AIS report good quality of life in
their 30s, as measured by both the SRS-22 and SF-36, regardless of
whether they received no active treatment or were brace treated during
adolescence. Neither of the groups displayed any difference compared
with the age-matched norm groups for the SF-36.


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ブログ内の関連記事
「装具をしなければ50%の確率でカーブは悪化します No.2」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/fee622a7588131f2f77289c25d19fd2f
 
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「特発性側弯症 20年後のアウトカム No.4」
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「特発性側弯症 20年後のアウトカム No.3」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/2adfe0ba14cc2c85b09a511b957b5497



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