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重要 特発性側湾症 16年間-無治療患者のアウトカム No 4/5

2007-11-11 21:35:51 | 20年後のアウトカム
当記事のオリジナル作製は2007年11月11日です。データを整理して再公開することを計画していたのですが、なかなか作業が進みませんため、とりあえずもう一度このオリジナルのまま再公開することといたしました。

長期成績に関しても、もう一度データを整理していきたいと考えております。

2018年6月25日
august03


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専門誌 Spine. 2007 Sep 15;32(20):2198-207
タイトル A prospective study of brace treatment versus observation alone
     in adolescent idiopathic scoliosis: a follow-up mean of 16 years
     after maturity.
    思春期側弯症に対する装具療法と無治療(観察のみ)のプロスペクティブ
    比較研究 : 骨成熟後平均16年間の観察
........................................................................
この研究では、装具療法患者のみならず、比較対照として
「無治療患者(観察のみ)」を設定し、この患者さん方の協力を得て、無治療状態
での最短13年、最長18年、平均16年後の状態を調査しました。

1985~1989 初回SRS研究 (思春期特発性側弯症患者に対する装具療法効果)
       年齢    10歳~15歳 全員女子
       コブ角度 25度~35度
       側弯症タイプ シングルカーブ (胸椎側弯症と胸腰椎側弯症)
       41患者 装具療法
       65患者 観察のみ(治療は何もせず検査のみ実施)

 無治療患者のrisser sign 0~2  44人
              3  13人
              4   8人
 初潮を向かえていた人数  39人(60%)
 無治療患者のコブ角    平均29.5度 (23度~39度)
 骨成熟時のコブ角     平均29.9度 (10度~42度)
 無治療開始時年齢     平均13.8歳 (11.3~15.9)
 骨成熟時年齢       平均16.2歳 (14.1~17.6)

 観察時から骨成熟にいたる期間に6度以上のカーブ進行 26例 (40%)
 26例のうち13例は30度~40度に進行し装具療法に移行 13/65 (20%)
 13例のうち10例はカーブ進行(40度以上)のため手術   6/65 (9%)

初期研究 65人 ..... 6人(手術が必要になった)
          13人(装具療法に移行した)
    52/65人  (80%)無治療のまま骨成熟に至った
     
     
二次研究 40人 (9人が長期調査に参加不能となった)

この無治療患者40人に対して、骨成熟が完了したと記録された時点から、最小で
13.3年、最長18.4年、平均16.0年後の状態を調査しました。
下記は、初期研究から現時点にいたる約20年間を無治療で経過した患者40人の
データです。

  年齢          平均32.2歳 (29.8歳~34.5歳)
  経過年        平均16.0年 (13.3年~18.4年)
  骨成熟時のコブ角   平均30.6度 (21度~42度)
  現時点でのコブ角   平均35.0度 (21度~48度)
  平均16年間中に6度以上進行例 15例 (37.5%)
  同コブ角の変化     平均4.4度 (マイナス5度~14度)
  45度以上進行例        3例 (7.5%)
  手術例            ゼロ
......................................................................
(august03コメント)
* この研究での装具療法患者では療法中の手術例はなかった。
 一方、無治療(観察のみ)患者では、40%が6度以上進行、20%が30度~40度に進行
 10%の患者で手術を必要とした。

*この研究のすごいところは、無治療という状態を、思春期から30代にいたるまで
 継続した研究である、ということです。
 この結果からは、極論を言えば、25度~35度程度の側弯の場合、
 通常は装具を勧められるわけですが、何もせずに放置しておいても
 80%の患者さんは、思春期中においても進行することなく、そのまま生活して
 いけた、ということです。
 ......民間療法で効果があった、と喧伝されるのは、このような
    何もしなくても進行しない80%の患者さん。ということも言えるでしょう
    つまり、そのような患者さんは、わざわざ高いお金を払わなくても
    普通の生活をしていても、進行はしない側弯症だった、ということです。

この論文からは、手術に至った患者の発見時コブ角が何度であったのか、
    進行しなかった80%の患者のコブ角が何度であったかの詳細なデータは
    提示されていませんでした。
    しかし、手術および装具を必要とするまでカーブが進行した患者では
    全員が risser sign 0-2 というデータが示されていました。
    
    つまり、この研究結果からも、これまでの研究と同様に 発見時に骨成長
    が未熟であった場合は、カーブ進行のリスクが非常に高い。ということが
    示されました。

 *この研究を裏返しから読めば、次のようなことが言えます。
 例えば、私が整体や側わんヨガを経営するとしたら、次のような患者だけを選択
 して施術を行えば成功できるわけです。

  - シングルカーブ
  - 初潮をすでに向かえている
  - risser sign 3以上、可能な限り 4
  - 現時点でのコブ角 25度~30度 (25度以下ならさらにベター)

 これに合致する患者であれば、80%以上の確率で、患者さんの満足のいく結果を
 示して特発性側弯症治療において名声と富を得ることができるでしょう。
 
 *この条件に合致する患者さんは、装具療法をせずとも、装具療法をした場合と
  同じ結果を得ることができる可能性をもっています。しかし、それは100%とも
  言い切れません。病気には、患者個々での特異的なケースというものが必ず
  存在します。一般的データ、平均値によるデータから「はずれる」ケースという
  ものが必ず発生します。
 (例外のない法則はない、ということは100%の確率で述べることができます)

 *装具療法をすれば、ほぼ80%~100%の確率で「抑え込むこと」ができます。
 しかし、しなくても、ある確率の患者さんを除けば、得られる結果は同じに
 なるかもしれません。
 この研究論文を読んで非常に驚いたのは、この「ある確率の患者さんを除けば、
 得られる結果は同じになるかもしれない」ということについてでした。

 ここに述べたことをどのように捉えるかは、おそらく受け手の方の性格、
 ものの考え方によって異なると思います。

 このスウェーデンでの長期研究によって、
 ひとつだけ明確になったであろうことは、患者さんが自分の病気がどういうもの
 であり、どういう経過をたどるものか、というデータを得た。ということです。
 特発性側弯症は命に関わる病気ではありません。
 自分の(お子さんの)症状を冷静に観察して、内在するリスクファクターを冷静に
 検証して、自分で自分の進む治療方法を選択できると思います。

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