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側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

特発性側弯症早期発見の為に 厚生労働省提出報告書 Part 3

2008-12-29 00:09:10 | VEPTR COM JAPAN
(添付写真は、レポートに使用した画像です)


Part2からの続き :

3. 早期発見の為に

思春期特発性側弯症の治療は、コブ角の進行に応じて下記の経過をたどります。

◇ 経過観察        
◇ 装具療法      
◇ 手術(脊柱固定術)

患者および親の心理からすればできれば手術は避けたい、という気持ちが強く働くことになるのは、他の病気と同じです。手術に至らない為には、現時点でとりうる唯一の治療法は、一日23時間を基本とする装具療法です。
装具療法により全ての患者の脊柱が元に戻るわけではありません。しかし少なくとも進行を「抑える」働きをもって、カーブが進行しやすい成長期が終えるまで装着することで手術を回避できる確率は決して少なくはありません。これも正確な統計データは存在せず、諸氏の研究報告結果もまちまちですが装具療法を行った50%~80%のこどもたちは手術をすることなく治療を終えています。
しかしこの装具療法もカーブが進行しすぎた患者には奏功は期待できず、コブ角45度~50度を超えた場合は手術を考慮することになります。
装具療法をできるだけ効果ならしめる為には、できるだけまだカーブが強くなっていない段階で発見され、そしてタイミングを逃さずに装具療法に入ることが重要であると考えられています。つまり、40度で発見されるよりは、35度で発見されるべきであり、35度よりは25度で発見されたほうが、手術を回避できるチャンスは高まる、といえます。
しかしながら、現実には、初めて発見されたときにすでに50度を超えていて
手術を選択せざるをえなかったとか、40度前後のボーダーラインであった。というような例はいまだに続いています。
学校自体が脊柱検診をしていない、脊柱検診で精密検査をするようにという指導を受けたにも関わらず整形外科を受診しなかった、脊柱検査での見逃しがあった等々の様々なケースが繰り返されています。

国内で側弯症手術が毎年どれだけ行われているかの正確なデータもありませんが、日本脊椎脊髄病学会が実施した2001年の全国調査によれば、回答のあった196施設で2001年の一年間で327症例の脊柱側弯症手術が行われていたことが報告されています。2008年の現時点においてこの症例数は増えていることはあっても減っていることは考えられません。しかし、ここで先の発見が遅れて手術に至ってしまった、というケースを振り返ってみますと、もしも、早期発見ができていたなら手術を免れていたかもしれない。というケースは存在するはずです。もちろん、これも医学的根拠となるデータは存在しない為に単なる推測の域をでませんが、仮に早期発見できていたら手術を回避できていたであろうとする症例が年間50例/全国であったとしたら、約2億円の医療費用が発見の遅れの為に費やされていることになります。
早期発見ができることで、患者の予後余命を大きく改善し、また医療費全体に対するインパクトも変わってくることは、全ての病気において言えることと考えます。側弯症もそれは同じです。
できるだけ早い時期に発見されること、発見されたならば経過観察を怠らないこと、進行が見られたならばタイミングを逃さずに装具療法を開始すること、
一日23時間を基本として継続すること。これが実施されるならば、いま以上に多くのこどもたちが手術を回避して健康な身体を維持して大人への階段を進むことができるようになるはずです。
すべての病気がそうであるように、側弯症においても、早期発見が治療のスタートラインとなります。

視点を海外に向けてみた場合、米国の側弯症への取り組みとしてふたつの点を日本の医療行政に対してもぜひともご検討をお願いしたいことがあります。

1. 民間療法による誇大宣伝誇大広告のインターネット上からの規制の徹底

行政には届いていない現場の話ですが、側弯症とくに思春期特発性側弯症の 治療を必要とするこども(と、その両親)を惑わしているのが、民間療法、特に
整体の宣伝です。

このような宣伝に騙されてしまう親のほうが悪いのかもしれません。しかし
親の気持ちとしては、藁にもすがる思いでいるところに「治る」と言われれば
信じてみたくなってしまうのは人の感情としては当然のことです。
しかし、このような民間療法は医学的根拠のまったくない詐欺的行為であると同時に、このような宣伝が氾濫していることが、側弯症という病気の正しい知識の普及の阻害要因となっています。
インターネット上に、米国をはじめとする欧米諸国では、日本のネットに氾濫しているようなこのような民間療法による誇大広告、誇大宣伝はその姿をほとんど見つけることはできません。側弯症とは、病院で治療を受けるものであり
その治療は先に述べた「経過観察」「装具」「手術」である。ということがネットで検索されたどのようなサイトにも同様に記載されており、患者を惑わすことがありません。
現代社会では患者はインターネットを通じて病気に対する情報を入手します。
ネットを規制することは難しかとは思いますが、このような整体等の宣伝の取り締まりもご検討していただければと願うものです。


2. 毎年6月を側弯症に対する理解を広めてもらう為のキャンペーン月間に

米国では毎年6月をNational Scoliosis Awareness Monthと銘々した
キャンペーンが、広く草の根から公的機関までを巻き込んで本年より開始され
ました。
どのような病気にも言えることですが、治療にとって第一に大切なことは、
その病気がどういうものであるかということについての正しい知識と正しい情報を患者自身が入手できて、そして理解することだと考えます。
これまでも側弯症についての啓蒙活動は行われてきましたが、残念ながら、先の整体等の民間療法者による逆啓蒙活動のために、一般人のなかには、側弯症とは整体で治すもの。というイメージができあがっています。
この現状を打破して、側弯症の正しい知識と正しい情報を広げるために、ぜひとも日本の行政におかれてましても、米国における普及活動月間と歩調を合わせた活動をご企画いただければと切に願うものです。
なお、米国の活動の意図には、側弯症治療に費やす膨大な医療費削減および
患者(の両親)の負担を軽減することによる経済的効果なども考慮していることが伺えることも付記したいと思います。

このような市井一個人のつたないレポートをお読みいただきましたことに感謝申し上げます。

(以上 厚生労働省提出報告書 )

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