4投目に村上の大会新記録をさらに更新したディーン元気
「陸上日本選手権第2日」(9日、長居陸上競技場)
男子やり投げが行われ、ディーン元気(20)=早大=が84メートル03を投げ、12連覇中だった村上幸史(32)=スズキ浜松AC=をわずか8センチ差で抑え、初優勝を飾った。ディーンはこれでロンドン五輪代表に内定。村上も代表入りが濃厚となった。女子100メートルは女王福島千里が11秒45で3連覇を達成し、五輪代表に内定。2位には土井杏南(16)=埼玉栄=が入り、400メートルのリレーメンバー入りが有力。陸上史上戦後最年少の五輪代表が誕生する可能性が高くなった。
時代を変える!弱冠20歳の強き野心が、魂の一投を生んだ。12連覇中の王者村上が、3投目に自己ベストを塗り替える83メートル95を記録。崖っぷちに追い込まれたディーンが、こん身のビッグアーチを見せた。4投目、低い弾道で放たれたやりは、長居の夜を切り裂き、芝生に突き刺さる。84メートル03の記録が表示されると、両拳を握って吠えに吠えた。日本やり投げ史上に残る激闘に、終止符が打たれた瞬間だった。
試合後は「助走路の感じが合わなくて…。ラインから芝生までが長いですね、ここは。長居だけに」と、関西人らしくジョークをぶっ放しながらも「村上さんの連覇を止められたのが何よりうれしい。やるべきことが明確に見えていたのが勝因です」と振り返った。
生まれ育った関西の地で決めたかった。この日は英国人の父ジョンさん、母博子さん、兄大地さんら、家族がそろって観戦。「親の故郷への五輪切符を獲るのが、自分が生まれ育った関西であることに運命を感じる」。ロンドン五輪出場は開催が決まった時から、ディーン一家の悲願だった。ロンドン行きを決めた優勝者インタビューでは、スタンドの父に向かって「Thank you Daddy!(ありがとう、お父さん)」と、感謝の言葉を掛けた。
同じハーフのハンマー投げ金メダリスト室伏広治が憧れだ。「世界一の人。まだまだ及ばないけど、次(リオデジャネイロ)の五輪では同じぐらいの実績を残したい」。ロンドンは、さらにその先にある夢に向けてのステップでしかない。「まだここがゴールじゃない。まだ20歳だし、世界一も遠くないと思ってるから」。世界の頂点を見据えながら、ディーンの進撃はさらに加速していく。(デイリースポーツ)