アジアはでっかい子宮だと思う。

~牧野佳奈子の人生日記~

“Food” がキーワードなのです。

2008-03-22 | ボルネオの旅(-2009年)
この村で初めてFood Festivalが開かれたのは3年前。
伝統食を見直し、観光客を呼び寄せ、村を活性化するのが狙いだという。今年は3月中旬に1週間開かれ、30人ほどの観光客が訪れた。

私が到着したのはちょうどその翌日で、まだ村に祭りの名残惜しさが漂っていた。
Barioというこの村の名前さえ知らなかった私が祭りに合わせて来られた訳はなく、しかしタイミングこそ逃したものの、祭りを成功させた主要人物たちのほとぼりの冷めていない内に話を聞くことができたのは幸いだった。


「食」のあり方が見直されているのは世界的なことで、ヨーロッパを中心に「スローフード」ブームが続いている。
ここBarioにFood Festivalをもたらした根源はイギリス人のJasonという人物で、彼によると、ヨーロッパではフードツーリズム(日本でいうグリーンツーリズム)のマーケットが相当な額に上っているのだとか。(正確な数字を忘れてしまった。。なんておバカさんm(_ _;)m)


彼は私に、そのスポットを見いだす条件を3つ教えてくれた。
①伝統的な食文化があること  
②景観がよいこと 
③交通手段が整っていること

Barioはこのうち③の交通手段が極めて乏しい(なんせ飛行機でしか来られないんだから。。)けれど、にも関わらず、特に欧米ではBarioの名が口コミで広がり、既に「知る人ぞ知る」人気の観光スポットになっている。ちなみに日本人でここを訪れるのは、熱帯雨林の研究者とその学生のみ。・・といっても過言ではない。あとは無計画ゆえに流れ着いた変わり者か。

そんなこんなで、とにかくジャングルの真ん中にあるこんな小さな村にFood Festivalの火は付いた。

詳細は実際に見ていないので何とも書きようがないが、様々な伝統料理が振る舞われた他、民族舞踊やゲームで人々は多いに盛り上がったのだという。もちろん、地元サラワク州での報道に加えヨーロッパの雑誌でも取り上げられている。


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村から歩いて4時間ほどの所にPa’ Lunganという村がある。
Miriで知り合ったパイロット・Davidのおススメだったので、ジャングルトレッキングを含め訪れてみることにした。

同行してくれたのは、ベテランガイドのLarry。中年らしからぬスマートな体型で、なかなか男前なナイスガイだ。

「これは野生の生姜で、茎も花も実も食べられるけど、根は食べられない。」
「この植物はこうやって皮を剥いで食べるんだ。」
「ぜんまいには食べられる種類が3つある。昨日君が食べたのはこの赤いやつだよ。」
「これも食べられる葉。肉と合わせて炒めると日本のスシよりずっと美味しいよ。」





Larryはところどころで立ち止まっては説明をし、生で食べられるものはその場で食べ方を教えてくれ、私はそれらを恐る恐る口にした。

彼らはときに、森のことを「ジャングル・スーパーマーケット」と呼ぶ。
欲しい食材は全て森の中にあるという意味らしく、確かに食卓に並べられるおかずは、どれも森の中で手に入れられる野生的なものばかりだった。





例えば今日の朝食はこんな感じ。
簡単に炒めたナシゴレン(炒飯)に、青葉の炒め物、小魚のフライ、タピオカ(イモみたいな根菜)のフライとマッシュボール。夜にはこれに加え、鶏肉やシシ肉、鹿の肉、魚、小貝などが並べられる。
時にはインスタントラーメンやクッキーも食べるけれど、あくまでおやつ代わりだ。


Pa’ Lunganで私たちを出迎えてくれたSupangさんは、食事のたびにひとつひとつ料理の説明をしてくれた。
「これは葉っぱとキノコを煮込んでつくったスープで、伝統的な料理よ。こっちはイノシシを焼いたもの。ソースに付けて食べるとおいしいわ。これは別のキノコと青葉を炒めた料理。全てジャングルスーパーマーケットのものよ。」

夫婦2人で営んでいる民宿風のアットホームな家には、特別なものは何ひとつない。
ただただ彼らの温かさと、手入れされた庭、丁寧に仕立てられたベッドメイキング、ダイニングに飾られたランの花なんかが、訪れる人の気持ちを穏やかにしてくれていた。


「そしてこれが、私たちが誇るBarioライスよ。知ってるでしょう?この辺りのお米は特別においしいのよ。」

「Barioはお米がおいしい」というのは、ここに来る前にも何度か耳にした。
標高が高いために朝晩の気温差が大きいこと、源流からのきれいな水が得られることなどがその理由だが、何にも増してBarioの人たちの気合いというか、米に対する誇りを強く感じる。

「日本の米と味比べしてみたこともあるんだよ。」
ホームステイ先の世話人・リアンは言った。
「こうやって、名前を隠してね、ん~おいしいね、こっちもおいしいね~って言ってさ、でも最後にはやっぱりBarioライスが最高だったよ。」

米粒は日本米のように太っちょではなく、少し細長くてパサパサした感じだが、炊くと水分を含んでふっくらと膨らみ、日本米に負けず劣らずしっとりした食感になる。どちらがおいしいかは好みの問題なので何とも言えないが、ここのお米は「最も日本米に近い」んじゃないかと個人的には思っている。


「でも、米をつくる人はだんだん減ってきてるんだ。」
リアンは続けて言った。
「Barioライスはブランドになってるけど、都会では他の安い米の方がよく売れる。Barioで米をつくっても、あまりいい収入にはならないんだよ。」

なんと、ここでも日本と同じ農業の問題があるのだ。
つまり、中国などの安米に押されて現金収入が少なくなる、若者が都会に流れる、農家が高齢化する、生産量が減少する・・・。Barioでは一部の米を直接ヨーロッパに輸出してブランドを保っているらしいが、それでも国内での需要が伸びない限り、全体的な状況が好転することは難しい。




この村の伝統と文化と景観を守るために、観光客を呼び寄せ、「食」をもってもてなし、自分たちの意識を高め、共に喜び合う。

Food Festivalやグリーンツーリズムは始まったばかり。

ジャングルに囲まれたこんなに小さな村で、新しい取り組みはゆっくりと確実に進んでいる。




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2 コメント

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Unknown (hosaka)
2009-07-04 11:28:03
すごいねー。頑張ってるねーー!!
写真もいいし。写真展見に行きたかったな。
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おぉぉぉ~ (アジかな)
2009-07-08 11:05:07
久しぶりの人や~!笑

もう私もマレーシア漬けですわ。
ご縁やね。全く。

お互いマイペースでがんばろ。
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