アジアはでっかい子宮だと思う。

~牧野佳奈子の人生日記~

着ることは、生きること?

2014-12-08 | アフリカの旅

コンゴ共和国の紳士「サプール」を紹介する番組を観た。

NHKオンデマンド:http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2014059592SC000/index.html?capid=sns003

 

月収2~3万円の暮らしをしている普通の男たちが、週末になるとブランドもののスーツに身を包んで通りを闊歩する。こどもたちはそれを憧れの眼差しで眺め、大人たちは自分の町のヒーローとして賞賛する。
服にかけるお金は収入の3~5割。それでも「これは文化だから」と家族も誇らし気に見守る。

そんな内容。

 

感動的な言葉がいくつもあった。

「サプールは暗闇を照らす明かりのような存在」

「着飾ることで品位が身に付き、心も豊かになる」

「着飾っている時は幸福感がある。頭の中から馬鹿げた考えがなくなる。悪いことをしたり、誰かを罵ったり、無礼なことをしなくなる」

「金持ちの家に生まれなくても、楽しみは自分で見出せる」

「サプールは平和主義を貫く者。服こそが己を主張する武器である」

「人から見られていることを意識して、常に前を向くこと。美しい所作があってこそ、人を惹き付けられる」

「サプールは、相手がライバルであっても尊敬しなければならない。それは自分も尊敬される存在でなければならないということ」

「サプールが怯えたり悲しがったりしてはいけない。自分を信じて、不安がらず、男として勇敢な振る舞いをすること」

「着飾るとは、誇りをもつこと」

 

そして最も感動的なシーンは、一番弟子がサプールデビューする日にスーツを買ってあげる師匠の言葉。

3年間無償で服のコーディネイトや紳士の心得を教え、デビューの日には4万円もするジャケットを身銭を叩いて買い与える師匠に、「なんでそこまでするんですか?」と尋ねる漫才師の大地洋輔さんに、こんな言葉が返ってきた。

「そこから、この国の将来が生まれると思うんだ。この国には若者が必要なんだよ」

 

…もうそれだけでも充分ジーンとくるのだけど、大地さんは更に尋ねる。「どうしてそこまでできるのか?」と。そしてこの返答。

「それが美学なんだよ。愛情であり、平和なんだ」

「愛情があるなら、大人はいい習慣やいい行いを見せてあげるべきなんだ」

「いい服はいい習慣を生み、それで人はまた成長できるんだ」

 

もう、ガツーンって感じだった。

 

サプールという文化は、こどもや青年たちの憧れをつくり、人としてのモラルを教え、町のヒーローとなって人々の誇りを高めている。そしてそれを担う男たちは、全て自費でまかなうばかりか持ち出しで後継者を育て、文化という名の平和を未来につないでいるんだ。

そしてその土台にあるのは、愛情なのだという。

 

本来なら、彼らの役割は政治家であるはずなんだろうなぁ、と画面を見ながら思った。

1960年に独立したばかりのコンゴではきっとまだそれが難しい。

だけど日本だったら、本来の政治家はそういう町のヒーローであるべきなんじゃないかって。

 

ちなみにサプールという文化は、フランス植民地時代にヨーロッパ服の気品と清潔感に憧れたコンゴの人々が、独自の色彩を加えて楽しむようになったのが始まりだという。

「好きな色を選ぶことで自由を表現している」と、自らもサプールだという経済大臣は言う。

 

アフリカの、根本的なたくましさと遊び心が、愛おしい。

 

番組の中で、こどもたちが大地さんのコメントを嬉しそうにリピートしているのが微笑ましかった。

「全然ダメだったよ!」「これはヤバい!」

 

…そうやってすぐに真似できちゃうんだぁ。すごいなぁ~。

 

日本も和洋折衷をつくり出すのが上手だといわれる(もしくはそう思っている)けれど、それを誇りに変えるところまではなかなか難しい。

「愛国」ということすら、教科書で政府見解を教え込む、なんて意味不明な方法でしか高められない現状ですから。

 

そしてはたと思う。

私も、週末くらいはお洒落して出かけてみようかしら…。

ジャージにトレーナーでコンビニ行って1日終わり、とか、コンゴの男性が見たら零点なんだろうなぁ…自分。

深く反省して、上記の言葉リストを見直した。

 

「いい服はいい習慣を生み、それで人はまた成長できるんだ」

 

…重い。…重すぎるぞ、今の私には。

 


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