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碧落

2006年03月16日 | コラム
 今年位、春がくるのが待ち遠しかったことはない。一雨ごとに春になるのを実感するのも久しぶり。雨といえぱ、小学校の教科書で出会った「くれないの二尺伸びたるぱらの芽の針やわらかに春雨の降る」という正岡子規の短歌を思いだす。暗誦して子規の鋭い感覚に改めて舌を巻く。フランスの詩人ヴェルレーヌの「巷に雨の降る如く」も春雨のパリ、舞台の名詩。「巷に雨の降る如く わが心にも雨ぞ降る かくも心に渉み入る この佗しさを如何にせん」(鈴木信太郎訳)。しっとりとしてこまやかな春雨の魅力は、日本もヨーロッパも同じらしい。「月さま、雨が」「春雨じゃ、ぬれていこう」とは、新国劇の名作で何度も映画化された「月形半平太」で、幕末の志土と恋人の芸者が取りかわすセリフ。イケメンの半平太は架空の剣術の達人で、舞台は京都、春雨がよく似合う。この近くで、春雨の似合う場所はどこだろうか。十年州も前になるが、春雨がそぼ降る中、松戸市の西端の江戸川の矢切りの渡しの船に乗った思い出が今も鮮明に甦る。対岸の寅さん映画でおなじみの柴又も、雨の似合う街だった。春雨のエアポートもロマンティックそのもの。送る人に送られる人。羽田空港よりも、やはり成田国際空港の方が絵になる。「はるさめかなみだかあてなにじみをり」-瀬戸内寂聴 (砂)

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