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中高年の健康管理「遺伝子診断は有効?」

2005年12月19日 | コラム
取材で京都に行ったので、久しぶりに一人で居酒屋に入り、のんびりと過ごした。
たいていは友人や仲間と飲むのだが、一人で飲むのもいいものである。
ぼんやりしながら客同士の話を聞いていたら、ここでも健康や病気の話が多かった。その中で、あるグループの一人が、「遺伝子診断の結果、糖尿病になりやすいといわれたのだが、どうしたものだろう」と仲間に話しかけていた。年の頃は四十歳前後か、やや小太りだが健康そうな男性で、しきりに悩んでいる。
まあ、酒を飲みながら糖尿病になりやすいといわれて悩んでいるのだから、それほど深刻ではないようだが遺伝子診断という言葉が気になった。そこで、帰ってきてからインターネットで調べてみたら、遺伝子診断はすでにビジネスになっており、がんをはじめ、糖尿病、高血圧、脳卒中、心筋梗塞など生活習慣病のなりやすさを診断してくれるという。費用は調べる遺伝子の数によって違うが数万円から十数万円というところが相場らしい。しかし、これはホームページ上で費用を公開している良心的?な施設の事で、聞くところによると数十万円も請求するところがあるという。
遺伝子診断にもいろいろな方法があるが、現在、注目されているのはSNP(スニップ・一塩基多型)による個人差を見る方法だ。
私たちのゲノム(遺伝情報の全セット)は三十億文字で暗号文のように書かれている。この文字がたった一字違うだけで、いろいろな個人差が生じる。たとえば、お酒に強い人と弱い人はアセトアルデヒド分解酵素を作る遺伝子の一文字が違うことがわかっている。
そこで、糖尿病患者やがん患者をたくさん集めて遺伝子を比較すると、健康な人とは違うSNPがわかってくる。SNPは遺伝するから、患者に特有のタイプのSNPを持っている人は、その病気になりやすいということになる。それを調べるのが遺伝子診断なのだ。
しかし、ちょっと待ってほしい。糖尿病やがん、高血圧、心筋梗塞など生活習慣病の発症には遺伝的要因も確かにあるが、生活習慣など環境要因のほうがさらに重要で、SNPがみつかったからといって必ず発症するわけでもないし、なかったからといって発症しないわけでもない。
仮に、その遺伝子診断が正確だったとして、それからどうしたらいいのだろうか。糖尿病のリスクファクター(危険因子)には肥満、運動不足、ストレス、喫煙、過剰飲酒などいくつもあることが知られている。
また、これらは糖尿病だけでなく動脈硬化のリスクファクターでもあり、最近ではメタボリックシンドロームのリスクファクターでもある。
遺伝子診断を受けるまでもなく、糖尿病が心配なら、生活習慣を改善してリスクを減らせばいい。
数万円も数十万円も払うのだったら数千円のジョギングシューズを買ってジョギングかウォーキングを始めたほうが、はるかに安上がりだし、リスクを確実に減らすことが出来るはずだ。(ヘルシスト編集部・鏑木長夫)





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