春節特集1 報道局長孔泉誕生

世界3億6000万人の孔泉ファンクラブ会員の皆さん、お待たせしました。そろそろ中国外交部報道局長に就任して6年目を向かえる孔泉ですが、彼と一緒にこの5年間を振り返ってみます。

もちろん報道局長就任以前の、例えば子供時代のエピソードなんかは出てきません。そんなネタ持ってたら本にして出します。報道局長時代(まだ辞めてませんけど)の発言を中心に日中関係も一緒に回顧しようじゃないか、という趣旨であります。はい、たいした趣旨ではありません。

あ、タイトルの春節はあまり気にしないで下さい。

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私が彼の名前を最初に耳にしたのは2002年の9月でした。中国国内からGoogleへのアクセスが出来なくなったというニュースで、その言い訳をしていたのが孔泉という名の男でした。その時は彼の映像など見なかったのですが、名前だけはなぜかずっと残っていました。たぶん後で出てくると思います。

その後の活躍は皆さんご存知でしょう。何度もニュースで見かけるようになりましたが、インパクトが強すぎて重大なニュースはいつも彼が担当していた気がします。脳内で勝手に変換されてます。重症。

あの声、あの顔、一度で良いから生で拝みたいものです。新しく北京駐在となった記者のフリでもして、何食わぬ顔で最前列に陣取り、追い出されるまで学生時代の話でも聞きたいものです。

そんな妄想はさて置き、孔泉の報道局長就任は略歴によれば2001年となっています。

 朱邦造氏、チュニジア、パレスチナ大使に転出
http://news.sohu.com/93/80/news147298093.shtml

「職務上の必要により、大使に転出となった。私の古い友人である孔泉氏が後任となる」
「まだ外交部報道官は辞めない。このまま皆さんの質問を受ける」

朱邦造の大使転出と、西ヨーロッパ局副局長だった孔泉が後任となるという報道が当時出回っていたそうで、記者が尋ねると朱氏はこの様にあっさりと認めました。同時に、孔泉の名が世に出た瞬間でもあります。

記事によれば、孔泉は1955年に北京ではなく広東で生まれ、小学生の頃からフランス語を学び、ベルギー留学を終えた後は外交部に入り、ヨーロッパで長期にわたって業務をこなし、ベルギー、フランス大使館で外交官として勤務していたそうです。

もちろん外交部に入る人間ですから、一つくらい外国語を喋れても当たり前なんですけど。ロシア語の使い手は多いですし、王毅は一応流暢な日本語を操れる設定になっています。しかし、フランス語を話す孔泉。想像できません。というかフランスと孔泉が・・・

 朱邦造、孔泉新外交部報道局長がそれぞれ挨拶
http://news.tom.com/Archive/2001/12/11-52263.html

何とお披露目会。中国の「顔」が交替するんだから当たり前なんですが。変わらぬご支持を、とか言ってる孔泉タソ。

朱邦造は職位こそ維持しているものの11月13日以降、定例記者会見をやっていません。局長不在の間は章啓月おばちゃん(現ベルギー大使)、孫玉璽(アフガニスタン→インド大使)、そして既にパンパンに太っていたと思われる劉建超で切り盛りしていたようです。

後に本人が述べたとおりの理由で、孔泉の記者会見デビューは2002年になってからでした。

 外交部新任報道官・報道局長孔泉第1回目の記者会見
http://www.fmprc.gov.cn/chn/xwfw/fyrth/1056/t3824.htm(2002年1月29日)

皆さんこんにちは。友人に言わせれば私は新顔だそうです。自己紹介をします。

私は昨年11月に朱邦造氏の後任として外交部報道局長に就任しました。本来なら元旦に皆さんに会うつもりだったのですが、唐家セン外相のアフリカ訪問に随行していたので、適いませんでした。新年はすでに明けましたが、農暦の午年はまだですので、この場を借りてその意味をご説明したいと思います。

まず、午年、そして今後私の在職期間中は、同席される各位と良好な関係を作りたいと考えております。私は最大限の努力で同席の各位にタイムリーで、正確であり、また全面的に中国の外交政策や中国の重大の国際問題に対する態度や立場を理解してもらえるよう努力します。

まもなく午年です。皆さんの健康とご多幸を、ご家族の幸せをお祈りします。

お披露目会と言い今回と言い何と殊勝な・・・言ってる事は全部嘘なんですけどね。

この後、孔泉初めての記者会見が始まりました。ここから長い報道局長時代が始まるのですが、次回へ続きます。多分。次回はこの5年間を孔泉など外交部報道官の発言と共に振り返る予定であります。盛り上がるかな。
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李登輝再来日も中共に止める術なし

前回のエントリーでは、つい泣き言を漏らしてしまい申し訳ありませんでした。また暖かい励ましの言葉をいただき、ありがとうございました。

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李登輝が5月に日本へ来るそうで、いよいよ定期訪問状態になってきました。台湾メディアはこの訪日を報じた読売新聞の記事を引用しています。

 日本メディアが李登輝の5月訪日を報道 李に近い筋「信頼度高い」
http://tw.news.yahoo.com/060111/43/2r2hi.html

日本の読売新聞は、前総統李登輝が、5月10日に訪日を計画していると報じた。李に近い筋によると報道の信頼性は高く、日程は調整中だという。今回の訪日の目的は李登輝が夢に見た奥の細道(本州の中部から北部)への旅である。5月は機構も暖かく、心地よくなっている頃だ。

読売新聞は李登輝の訪日を2~3週間と報道している。その際東京、秋田、そして松尾芭蕉で有名な奥の細道を訪れる予定だという。李登輝の日本の友人は午前にこの件を知り、次々と台湾の関係者に日程などを尋ねてきた。

李登輝は昨年訪米を果たしており、台湾帰国後の記者会見場で再度日本を訪問したいと明かしている。李登輝に近い人物によると、李登輝は数回日本を訪れ、日程の調整には全く困難はなく、さらに小泉首相の衆院選圧勝で新内閣の複数のメンバーが李登輝と友情で結ばれており、今回の訪日は決して問題にならないとしている。

またこの人物は李登輝の今回の訪日計画は、李登輝自身が様々なパイプを使って根回しをし、日本の友人の協力も得たもので、読売新聞の報道は信頼性の高いものであり、日程を5月にしたのは、4月だと奥の細道のある地域の気候がまだ暖かくないだろうと懸念しての事だと明かしている。

奥の細道は日本の俳聖(中国の詩聖に当たる)である松尾芭蕉が、1689年に江戸(東京)から徒歩で日光、黒羽、松島、山寺、最上川と北に向かい、そこから日本海に沿って新潟、富山、石川、滋賀と西に向かい、最後に岐阜に到達した苦難の長旅。1694年に完成した『奥の細道』は、日本文学史上に残る紀行文学となった作品。

素晴らしい。松尾芭蕉の補足が詳しい。「信頼性がかなり高い」とお墨付きもいただきましたし、訪日の日程などはほぼ間違いないかと。しかし同じ記事の引用でも、書き手に含むところがあるとこうなります。

 日本メディアが李登輝の5月訪日を報道
http://news.sina.com.cn/c/2006-01-11/15457955393s.shtml

台湾メディアが日本メディアの報道を引用したところによると、李登輝が今年5月10日に日本を2~3週間訪れ、東京や秋田、日本の詩人松雄芭蕉が旅行したことで有名な奥の細道などを訪問したがっている事が分かった。報道によると、日本は既に台湾人観光客の短期ビザを免除しているが、李登輝のような人物の訪問は更に審査の必要があるとしている。

日本政府は2004年12月21日、李登輝に入国ビザを発行し、入国を許可した。当時中国外交部は強烈な不満を表明し、抗議を行った。李登輝は台湾の急進的な"台独"勢力の総代表であり、国際的に徹頭徹尾のトラブルメーカーである。日本政府が李登輝の訪日活動を許可するなら、"台独"勢力の黙認、支持となり、"台独"勢力へ誤ったメッセージを発信する事になり、中日関係に深刻な障害となると考えられる。

報道では、李登輝の今回の訪問は民間団体の訪日要請に応じたもので、訪問日程は調整中であり、もし実現すれば2004年暮れに京都、金沢、名古屋などを訪問して以来、約一年半ぶりの訪日となる。日本外務省は、李登輝の訪日計画についてまだ正式には聞いていないと発表している。

先ごろ中国外交部の報道官は「李登輝は島内の"台独"勢力の代表的な人物であり、日本政府が彼に日本での活動を認めれば、中日関係を損なうだろう」と厳しく指摘している。

当時王毅は「戦争メーカー」という名言を作ったもののその年の流行語大賞には相手にされず、外交部も報復措置を取るとまで脅しておきながら何も無く、中国は結局何も出来ないと証明してしまいました。記事ではそれには触れられていませんね。

ああ、発給した後に王毅や劉建超が取り消すよう求めたというのもありました。王毅が「(李氏は)台湾独立勢力の代表的な人物。公職から退いたとはいえ分裂活動を進める急先鋒(せんぽう)だ。考え直していただきたい」で、劉建超が「日本政府は誤った決定を正すべきだ」でした。日本政府はマスコミを指導すべしとした発言と同種で、「中国は自由を理解していませんよ」といういい宣伝になりましたね。騒げば騒ぐほど、みんなが中国は異常な国だと気付く仕掛けになっております。

そういえば台湾人のビザ免除を決定した際、中国は不公平だとか言ってましたが、李登輝訪日に事実上障害がなくなることを恐れての発言だったのでしょうか。さてこれからどんな恫喝が出てくるのやら、楽しみです。

とりあえず12日の孔泉発言を置いておきます。

http://www.fmprc.gov.cn/chn/xwfw/fyrth/t230722.htm(外交部1月12日)

この問題においては、我々は何度も厳正な立場を表明してきた。我々は日本側が日中関係の大局から、日中共同声明など3つの政治的文書の原則に沿って、この問題を適切に処理する事を望む。

前回の訪日当時は3つの政治的文書などの原則に背くとか、報復措置を示唆したとか、激しかったんですけどねえ。しかし李登輝帰国後に行われた記者会見では、

http://www.fmprc.gov.cn/chn/xwfw/fyrth/t178684.htm(2005年1月6日)

一部日本のメディアがこの人間の事に非常に関心を持っているようだ。この問題は唐の有名な詩人杜甫のこの詩を思い起こさせる。

「爾曹身与名倶滅、不廃江河万古流」(好ましくない人物の名やその体は滅ぶが、大河の悠久の流れは途絶えない)

こういった急進的な"台独"勢力の総代表に対してだが、彼の一挙一動全てが正義感のある者の唾棄にあうだろう。

報復措置は無し!言葉責めだけ!ああ、愛知万博に格下の呉儀をよこしたのが仕返しなんでしたっけ。凄い報復だ。安心してお越しください。


追記(15:01):やっぱりまだ頭が動いてないんでしょうか。いや、頭が動いてないのはいつもか。昨日最後まで目を通さなかった、外交部記者会見の模様を読んでみると。

記者李登輝訪日に関してだが、あなたの発言の意図はどのような理由があっても、ビザを発給すべきではないという意味なのか。

孔泉:あなたの解釈は正しい。


記者:現在台湾市民は日本への観光ビザは免除となっている。もし日本政府が李登輝を普通の旅客として、いかなる政治活動もしないとして訪日に同意するとすれば、中国側の反応は。

孔泉:一人の人間の過去を見れば、その現在が分かる。現在を見ればその将来が分かる。李登輝はどのような人物なのか、日本側はよくご存知だ。我々は日本政府が中日間で交わした3つの政治的文書に基づき、台湾問題上で行った約束を守り、「一つの中国」政策を堅く守り、"台湾独立分子"に活動の場を与えないよう望む。

ビザ発給するなって言ってる。やっぱりただのアホだアホ。そもそも3つの政治的文章では、日本は中国の「台湾は中国の一部」という主張を理解、尊重すると言っているだけで、支持とか同意とかはしてないんですけど。悔しかったらペルーみたいに大使召還くらいしてみな。
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中共、それマジで言ってんの?

だって言論統制要請ですよ、これって。QQQQさんからコメントを戴きましたので、今話題沸騰中の孔泉発言を訳出してみました。

http://www.fmprc.gov.cn/chn/xwfw/fyrth/t230353.htm(外交部1月10日)

記者:中国の高官が日本との協議の席で、「日本のマスコミはいつも中国のマイナス面ばかり報道している。日本政府は管理すべきだ」と言ったそうだが、事実だろうか。もし事実なら、これは個人の考えなのか、それとも外交部の正式な見解なのか。これは日本への内政干渉に当たらないか。

孔泉:中国側高官の発言だが、あなたの引用は正確ではないと考える。我々は中国にいる日本のマスコミ、記者が中国で起こる全てを報道してもらいたいし、日本との友好関係を発展させる中国の積極的姿勢を報道している点を前向きに評価している。しかし、日本の一部メディアは対中報道で日中関係及び日中関係で生じた問題を報道する際、遺憾なものがあると言わざるを得ない。

中日双方の当局者は協議でこの問題に触れている。なぜこれらのメディアが中日関係にある摩擦や問題に熱心に騒ぎ立て、歴史問題など重大な原則において、何度も中国を含めたアジア人民の感情を傷つけるのかという点だ。逆に、2005年4月23日にジャカルタで小泉首相と会見した際に、胡錦濤主席が提起した中日関係発展に対する五点の提案など、中国政府についての報道が非常に少ないなど、深く考えさせられる点だ。

我々はメディアが両国人民の相互理解を高め、相互信頼を深めるという重要な役割を果たし、中日両国関係の友好という大局を重んじ、これらのメディアが両国国民の相互理解を深めるような報道をするよう期待している。

曲解報道しまくりのお前らが言うな的内容ですねえ。全てを報道した『新京報』は本気出したらすぐに潰されましたけど。

 日本に報道規制を要求 中国「対中批判多すぎ」  2006/01/09 20:51

 【北京9日共同】中国外務省の崔天凱アジア局長は9日、北京での日中政府間協議で「日本のマスコミは中国のマイナス面ばかり書いている。日本政府はもっとマスコミを指導すべきだ」と述べ、日本側に中国報道についての規制を強く求めた。

 メディアを政府の監督下に置き、報道の自由を厳しく規制している中国当局者の要求に対し、日本外務省の佐々江賢一郎アジア大洋州局長らは「そんなことは無理」と説明したという。

 日本側によると、崔局長はまた、小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題や日本国内での「中国脅威論」の高まりなども挙げ「(日中間にあるのは)日本が起こした問題ばかり。中国は常に守りに回っている」と批判した。

注目すべきは孔泉が個人の意見であると否定していない点。外交部、ひいては中共が日本政府もメディアを規制してしかるべき、規制できて当然と考えているからでしょう。でなきゃ個人的な発言であると訂正するはず。

コメントと重複しますが、「日中友好を促進する記事をもっと書け」という要請があったと明かすマスコミ関係者もおりましたし、メディアをただの宣伝機関だと本気で信じている中共人は存在します。

しかし、他国に向けてメディア統制するよう要請するとはあまりに軽率。「中国は言論統制国家です」と世界に向けて発信してしまっているのですが、そのメリットは無さそうですし。どういう意図があるのかさっぱり分かりません。

生ガキで大当たりをひいてしまい体調が最高に悪いので、今日はこの辺で勘弁してください。すいません。
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そろそろ新情報が欲しい領事館員自殺

沈国放、新京報関連は続報待ちです。もしかしたら続報など出てこなかったりして。

新年一発目という事で『環球時報』の電波記事でもどうぞ。脅威論もやけに尾を引いていますし、この件もしつこいくらい同じような記事が出てるわけですが、さすがに電波放出量のケタが違います。長いですが、良かったらどうぞ。

 日本 外交官の自殺事件を煽る
http://world.people.com.cn/GB/3998206.html

日本駐上海総領事館員の自殺事件は、日本のメディアの率先によって報道されて中日間で話題となり、両国メディアだけでなく、事態が進展するにつれて政府もこれに参加し、国際世論をひきつけている。事件から一年半経過した今、日本が結論の出ている自殺事件を持ち出してきたのは、下心があり、憤慨させるものだ。


 中日外交戦の正面展開

2005年12月30日、中国外交部は定例記者会見を開き、ある記者の外交官自殺事件の質問に対して、外交部の秦剛報道官は中国側の姿勢を改めて述べ、また「その件は自殺事件だ。駐日双方はこの件で既に結論を出している。一年半もたって。日本側が昔の事を蒸し返し、しかも自殺の中国当局者を結びつけるなど、完全に下心があってのことだ。我々は日本政府がわざと中国のイメージを傷つける行為に対し、激しい憤慨を覚える」と強調した。

秦剛の会見が終わると、12月31日に日本外務省は公然と反論を行い、いわゆる3点表明をした。

※1 1:在上海総領事館の館員が、平成16年5月6日に自殺した事案の詳細については、ご遺族の強い意向もあり、公表を差し控えるが、在上海総領事館の館員の死亡の背景には、現地の中国側公安当局関係者による、領事関係に関するウィーン条約上の接受国の義務に反する遺憾な行為があったと考えている。

2:12月31日の在京中国大使館のホームページは、「日本側は、館員が職務の重圧のために自殺したと表明」したとしているが、日本側がそのような立場を表明したとの事実はない。本件については、日本政府として、中国政府に対し、事件発生直後から、事実関係の究明を求めるとともに、厳重な抗議を行っている。

3:また、「この事件は中国政府関係者といかなる関係もない」との中国側の立場については、我が方として受け入れられず、そのような中国側の立場は最近の中国外交部報道官の記者会見における発言を通じて承知しているが、それ以前に中国政府から本件の事実関係について説明を受けたとの事実もない。

中国駐日日本大使館は、この館員が職務の重圧のために自殺し、遺族の意思に基づいて、中国側に事件を公表しないよう求めたとの声明を発表している。

 日本外務省は談話を削除

日本政府はこの件に対して曖昧な態度を取り、逃げ隠れしており、明らかに腹に何か持っている。2005年12月28日午後、日本外務省の鹿取克章報道官は、初めて記者会見場で一部メディアの報道を"証明"し、「確かに職員一名が自殺した」、「これは中国公安当局関係者による遺憾な行為が原因だ」と述べたが、記者の「中国公安当局関係者の"遺憾な行為"とは何か」という再質問には「詳細はここでは差し控える」と述べるに留まった。

12月31日、日本外務省は再度この事件について声明を発表したが、同じように中国公安の"遺憾な行為"についてははっきりと言及しなかった。さらに奇妙な事に、この声明は更新されてから21時間後に突然削除された。外務省職員の今回の談話については、1月1日付の『産経新聞』など日本の多くのメディアが詳細な報道を行い、これら報道はいまだネット上で見る事が出来る。


 カラオケクラブに行って自殺などありえない

日本メディアの報道によると、死んだ職員はまだ30代で、日本の外務省職員は一般的に50歳前後で課長に昇進するという、日本の駐上海総領事館の暗号通信を担当しており、事務職なのでクラスは高くない。たとえカラオケや夜総会に出入りしようが処分を受ける程度で、このような誤りを犯したから中国へ情報を提供させられるというような事はないし、自殺しなければならないなどという事はない。

実際には、風俗店に出入りしていても日本の政界もなんとも思っていなかったのだ。小泉の外交補佐を勤めた山崎拓も同様のスキャンダルで困った状況にあったが、この外交官よりずっとマシだとでも言うのだろうか。小泉は依然として彼を重用している。自殺の理由としては成り立たないのだ。

さらに言えば、日本政府の海外機構に属する職員の管理は厳しく、彼らの活動も制限を受ける。大使館の通信暗号を握っている職員ならなおさらだ。常識から言えば、日本の駐中外交官が誰と知り合いどこに出入りしているか、日本政府は把握しているはずだ。自殺後に事件の真相が分かったなどということがあるだろうか。もし、この件にいわゆる"政治的背景"があるなら、それならなぜ当時発表せず、一年半後になぜ公表したのか。その上、遺族がプライバシー保護を求めたのに、『週刊文春』はどのような"真相"を手に入れたというのか。

ここ数年、日本の自殺者数は高いまま推移し、毎年数万人が自殺している。この原因は不景気な日本経済、失業者増加、仕事と生活のプレッシャーの増大、同僚の無視や尊厳を傷つける一言、家庭内の問題、性格欠陥が全て自殺の原因になると分析されている。日本人の自殺の原因は非常に多く、日本社会の難題であるといえるだろう。

この自殺事件に対しては、日本社会の環境と本人から原因を探すべきだろう。例えば、彼の性格や家庭、同僚との関係、上司の圧力などだ。もし彼が駐上海領事館員で、中国と関係があり、自殺の責任を中国に擦り付けるなら本当に正義を失うだろう。この外交官の駐在先が中国でなければ、日本も責任を他人へ押し付けるだろうか。

実際、日本人外交官の職業上のプレッシャーは大きく、海外機構の外交官の自殺はそれほどまれなものではない。記者はこれ以前に駐カナダの日本人外交官が自殺したという話を聞いたことがある。日本政府は類似する偶発事件を国際政治問題にしてまで処理しているが、中国に対するイメージを落とそうとする悪意を持った行為としか考えられない。


事件の注目は続く

目下、中国政府は厳正な立場を表明したが、日本側はこの事件を注視しており、八方手を尽くしてこの機会に文章を書かせている。これは日本社会が作り出した悪い影響だ。ここ数日、日本の各大マスコミは事件の関連報道を行っている。一部の地方紙も重視しており、その注目度は国内の"重大ニュース"にも劣らない。

その中でも見られるのが、日中関係は特殊かつ敏感なため、すでに日本社会の注目の的となったというものだ。一部の日本人もブログなどで「日本もスパイ活動を強化するべき」、「中国、朝鮮など共産圏の諜報能力を過小評価しないほうがいい」など、事件に対する見解を述べている。

AFP通信、AP通信、亜州新聞網など海外メディアも続いて追跡報道を行っている。AP通信は「中日間の舌戦は両国衝突の一つであり、こういった事件は第二次大戦の口論や、東シナ海の石油資源や、日本の中国の発展に対する焦りもある」と論評している。

中日関係は低調がずっと続いている。新年の初め、日本はまたいわゆる外交官の自殺事件を持ち出し、今年中の駐日関係改善にまた影を落とした。日本は責任をもたずに中国を中傷しているが、こういったやり方は双方の感情の隔たりを深めるものだ。しかし事実はやはり事実であり、ある者たちがこの事件を機に中国のイメージを貶めようとしているがそれは徒労なのだ。

※1削除されたらしいですが
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/17/rls_1231a.html

参考 12月28日の外務省報道官記者会見:http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/hodokan/hodo0512.html#3

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自殺増加と結びつける力技には感心しました。ヤマタフは中国当局者に脅されていないので問題の性質から違うし、削除されていないのに削除したと言い張ってみたり、すぐにでも突っ込みどころがみつけられる記事です。

 
 名誉毀損訴訟を誘発する『週刊文春』
http://www.takungpao.com/news/06/01/01/ZM-505271.htm

『週刊文春』は政治家、官僚や文芸界の著名人のスキャンダルを派手に宣伝し、発行部数を高めてきた雑誌だ。

『環球時報』はグローバルと名乗りながら日本の話題ばかり扱う基地外雑誌として、これまた日本にしか興味の無い基地外に愛され部数を伸ばしてきた、とでも言っておきましょうか。言ってるのは『大公報』ですけど。

『環球時報』は文春が報じた谷垣財務大臣のあの報道も取り上げていますし、"産経がやってる反中週刊誌"(訂正:産経ではなく文藝春秋でした。申し訳ありません)の信頼性を揺るがせようとするのは当然。『人民日報』対『産経新聞』の代理戦争ですね。

同紙は『人民日報』傘下で、売れるために日本関連の話題をこの様に書き散らしている媒体ですから多少の割引は必要ですが、「中国のイメージを損なわせようとしている」と外交部の援護を行っているのは明白で、逆に文春のイメージを落とそうとしているようで。

自殺の原因を日本社会と結んでみたり必死なんですかねえ。必死になると日本の能力を高く見積もる傾向がありますが、この記事はまさにそれ。

日本政府がここに来て事実認定したのは、外相が川口から麻生に変わったという外務省自体の変化もあるでしょうし、日本全体の空気が変化したこともあるでしょう。ただ、証拠もなしに言い続けてると中国と同じになるので、そろそろ新しい情報が欲しいところです。

外交部の言う"既に結論が出ている"について説明があれば納得できるんでしょうけど、同じ内容を繰り返すだけですし、こちらも相変わらず芸の無い事で。文春は5日号で続編やるらしいので、その反応でも見てみましょうか。


追記(01/06/08:22):文春ではなく、安倍発言に食いついてきました。

 安倍官房長官、中国側に条約順守を要求・領事館員自殺問題(日経新聞)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20060105AT1E0500305012006.html

 安倍晋三官房長官は5日午前の記者会見で、上海の日本総領事館の日本人男性が2004年5月に自殺した問題で、「中国大使館がホームページで『日本側は館員が職務の重圧のために自殺したと表明した』としているが、日本がそのような立場を表明したことはない」と中国側に反論した。そのうえで「国際条約に沿った対応を行うことが大切であり、国際社会や両国関係の信頼につながっていく」と指摘し、中国側に外交官の保護に関するウィーン条約の順守を求めた。 (13:02)

 領事館員自殺、中国は誠意ある対応を(TBS)
http://news.tbs.co.jp/headline/tbs_headline3196708.html

 「中国側公安当局関係者による、領事館員に対するウィーン条約上の接受国の義務に違反する遺憾な行為があったという風に考えております」(安倍晋三 官房長官)

なかなかしつこくて好きです。

http://news.xinhuanet.com/world/2006-01/05/content_4014216_3.htm(外交部1月5日)

記者:今日、日本の安倍官房長官が「上海総領事館員の自殺は中国の国際法違反によるもの」と発言しているがこれについて。中国側はこの問題について日本と協議する用意はあるのか。

秦剛:この問題では、中国外交部と中国大使館は既に非常に明確に立場を表明している。中国は責任を負う国家である。中国政府は一貫して外交関係に関するウィーン条約と、領事関係に関するウィーン条約を遵守しており、在中外交員の合法的な権益を保護している。この事件の性質は我々が既に何度も述べている。

中国側は調査で得られた結論は厳粛で責任を負う。日本側の非難は全く道理の無いものであり、故意に問題を引き起こそうとしている。我々は日本に冷静に、適切にこの問題を処理し、日中関係に新たな問題を作らぬよう求める。

中国困ってます。

 麻生外相、自民総裁選への出馬「覚悟決まっている」
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060105AT1E0500H05012006.html

 外相は中国・上海の日本総領事館勤務の男性が自殺した問題について「昨年12月31日以前に中国から正式な釈明や、説明を受けたことは1回もない」と指摘。「外交官の保護に関するウィーン条約から考えてもおかしい。中国公安当局関係の話として『これはおかしい』と抗議している」と力説した。(イスラマバード=天野豊文) (20:35)

泥仕合になってきました。
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メディア規制に人事抗争。中共は今年も正常運転

あけましておめでとうございます。今年もお付き合いいただけるように、なるべく読みやすくするつもりです。

どうもきな臭いというか、年末から変な動きがあるようです。

まずは『新京報』問題の補足から。

『新京報』のサイトがやけに重いです。というかさっきからずっと繋がらないんですが、私だけですか?百度でもNGワードに指定された模様。PDF版を置いてあるのは『南方網』なんで大丈夫っぽいのですが、それでも重い。本気の介入でしょうか(午前4時25分に正常動作を確認)。


(左から『新京報』27日~31日の要職リスト。きれいにいなくなってます)

それを裏付ける、と言うと過ぎるかもしれませんが、昨日『新京報』は予定通り(たぶん)スタンドに並んだものの、ご覧のように削除された編集長以下の名前が31日付けでも回復されていません。責任者不在でどうやって報道の全てに責任を負うのやら。そういえば同紙のモットーだった"負責報道一切"のロゴが無くなってますね。

昨日チェックを忘れていた『香港文匯報』によると、『光明日報』はすでに4名が出向し、『新京報』の副編集長などの要職に就かせることを決定したとあります。『太陽報』によれば、しばらくの間は社長の戴自更に編集長を兼任させ、他の要職は空けたままにしておくつもりだったとか、副編集長の孫雪冬、李多らは当初の予定では解任するつもりだったが、内外マスコミの注目を集めすぎたため保留とされたとあり、情報が錯綜しています。

しかし、編集長復帰によるスト終了で、一応の解決をみた後に発行された31日の紙面でも編集長以下の名前はありませんし、昨日のスト終結エントリーは早まりました。先に謝っておきます。ごめんなさい。

30日付の雁の記事、あれは『新京報』最後の抵抗になるかもしれませんよ。




以前、『新京報』を買った時に貰ったマグカップ。"負責報道一切"というスローガンが懐かしい。あちこちのビルの屋上にありましたね。

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もうひとつは沈国放の左遷。人事抗争に負けたから、その開放的な言動が誰かの癇に障った、私生活に問題があるのだ、などの理由が出てきましたが、一番最初の人事抗争の理由が不明だったため、怪しいのはこれだと思っていました。『太陽報』はそんな私の疑問に答えてくれています。ああ、またミスリードされてるのかしら。

中国外交 銭其シン時代に別れ
http://the-sun.orisun.com/channels/news/20051231/20051231020441_0000.html

沈国放の解任は胡温人事再編成の一手目である。中共第十六次四中全会以降、胡温体制が始まり、中央、地方の人事再編成を開始し、それは外交にも及んできた。中国外交はまもなく銭其シンの影から抜け出す事になる。

80年代、新聞局局長出身の銭其シンが外交部長に就任すると、新聞局の人間を大抜擢し始めた。李肇星(現外交部長)や馬毓真(元駐英大使)、呉建民(元駐仏大使)らがそうだ。銭其シンを核心とする新聞局派閥が形成され、過去10数年に渡って外交部の主流となっていた。銭其シンが外交部を離れた後も、"新聞局"は李肇星を新しい主人に向かえ、沈国放はその新鋭となり、外交部の新しい指導者となった。銭其シン自身は"外交の父"となって、外交においての発言権を確保してきた。

しかし、江沢民が中央軍事委主席を辞職すると、李肇星の外交への影響力は小さくなった。江沢民時代、海外訪問となると李は常に付き従っていたが、胡錦濤、温家宝は何度も海外訪問を行ったにもかかわらず唐家センとして随行するのみで、重要な問題は唐が発言していた。

また、前の対外連絡部長だった戴秉国(外交副部長)が、外交部党組書記と常務副部長を兼任し、近頃また中央外弁主任となっって胡錦濤の特使として何度もアメリカを訪れている。目下外交部で活躍が目立つのは、唐家センのアジア局長時代の部下であり、その中には武大偉副部長や、王毅駐日大使も含まれる。
沈国放の更迭は前ぶれで、李肇星の辞任も時間の問題でしかない。銭外交の時代は終わったのだ。

なるほど。武大偉と王毅は二人とも前後して副部長と駐日大使を歴任していますし、戴秉国は事実上外交部の業務も仕切るという党組書記を兼任し、対外連絡部長時代もアジア共産党を仕切っていたとか。日中共産党の和解も彼の功績ですかね。唐家センはアジア局副部長だったようなんですけど、そこは香港紙ですから期待してはいけないのかも。

私のような単純な人間は、王毅の召還もそういうの意図があってのことかと考えたくなります。確実に言えるのは、沈国放は外交の舞台から外され(一級降格されてるらしいです)、李肇星は来年定年を理由に退任の見込みだということ。どっちにしろ外交部の対日政策が激変する事はなさそうですが、誰が外交部の主導権を握ったかが問題。この流れだとやはり胡錦濤でしょうか。

新年1つ目のエントリーから意味不明になりました。今年もこんな感じで続きますので。
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