アプリコット プリンセス

チューリップ城には
とてもチャーミングなアプリコット姫がおりました

赤穂事件 朱子学排除連名

2022-03-03 11:22:12 | 漫画
 

稲葉正休(若年寄)
「大層な剣幕、・・何用で御座いますか?」

堀田正俊(大老)
「ああ」
「其方に騙された・・」

稲葉正休(若年寄)
「いきなり、何ですか!」
「某が、何を騙したと仰せですか?」

堀田正俊
「其方が、先様から預かったとする遺言は偽物じゃな!」

稲葉正休
「某は、先様の将軍近習で御座ったゆえ
いざという時に混乱を避けるために、預かっておりました遺言状
何を根拠に左様な疑いを持たれる?」

堀田正俊
「証人がおる」
「その、偽の書状を書いた本人がおるのじゃぞ」

稲葉正休
「んんゥ」
「・・・・・・」

堀田正俊
「観念しろ」
「覚悟を決めて、諦めろ・・」

稲葉正休
「その、証人の名は・・?」

堀田正俊
「匠の大村加トじゃ」

稲葉正休
「大村加トが名乗り出たので御座いますか?」

堀田正俊
「やはり、そうか!」
「其方は、偽の遺言が大村加トが代筆した事を知っておったな!」

稲葉正休
「んんゥ」
「某を処罰する御積りか!」

堀田正俊
「いや」
「其方を裁く事は無い」
「ただ、条件があるぞ」
「上様は、引き籠りが激し過ぎる」
「引き籠って、多くの無茶な御触れを出そうとしているのじゃ」
「幕府の安泰を考えれば、上様の失脚は避けたいが
かといって、自滅の道を選ぶ訳には参らん」
「其方は、将軍である上様の正当性に懸念は無いのか?」

稲葉正休
「分かりました」
「某は、上様の暴走を食い止めて
幕府の安泰に努めようと思います」
「其の為に、上様の権力を削ぐ事を目的として
偽の遺言を利用しようと思います」

堀田正俊
「よくぞ申した」
「・・・・んんゥ」
「ところで、上様は何故に犬の保護に熱心なのであろうか?」

稲葉正休
「よくは存じ上げませんが、
話によれば、何やら怪しげな儀式を隠れてしておりまして、
御犬は、上様の守り神との事」
「御犬を粗末に扱えば祟りがあると信じております」
「きっと、柳沢の知恵で御座いましょう・・」

堀田正俊
「左様か・・」
「では、困った事が起きたぞ」

稲葉正休
「何で御座る?」

堀田正俊
「んんゥ」
「地震じゃ!」
「儂は、お犬の保護を許可しなかったが
運悪く、地震が起きてしまった」

日光地震(にっこうじしん)は、1683年6月17日 - 10月20日(天和3年5月23日 - 9月1日)に、栃木県北部の日光付近で発生した群発地震である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)


稲葉正休
「そういえば・・」
「日光は主祭神が徳川家康公、相殿に豊臣秀吉公・源頼朝卿」
「この地震は厄介ですな・・」

堀田正俊
「上様が心配じゃ・・」

稲葉正休
「では、御犬の保護を認めますか?」

堀田正俊
「それは、為らん!」

稲葉正休
「しかし、日光の地震は起こる時期が悪すぎました」
「一旦、上様に妥協する事が得策で御座います」

堀田正俊
「んんゥ」
「しかし、江戸市中の野良犬を保護するとなれば
大事じゃぞ」
「幕府は金欠じゃ」
「絶対に無理じゃ!」

稲葉正休
「上様がお怒りになりますぞ!」

堀田正俊
「その時には、偽の書状を提示して将軍としての正当性を問う!」



              赤穂事件 大石内蔵助参上 



 この年の6月23日(8月15日)にはじめて所領の赤穂に入り、大石良雄以下国許の家臣達と対面した。以降、参勤交代で1年交代に江戸と赤穂を行き来する。
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大石内蔵助
「主殿」
「お帰りなさいませ」

浅野内匠頭
「大石良重(大石内蔵助の大叔父)殿を連れ帰る事が出来なかった
済まぬ事・・」

大石内蔵助
「大叔父は如何なさったので御座いますか?」

浅野内匠頭
「饗応で過労があったのじゃ」
「健勝で御座ったのに」
「赤穂の損失じゃ・・」

大石内蔵助
「指南役の吉良上野介が、いちゃもんを付けておったと聞きましたが?」

浅野内匠頭
「江戸屋敷に毎日来ては菓子折りを置いていった」

大石内蔵助
「菓子・・」

浅野内匠頭
「大叔父殿は要らぬと申しておったがな・・」
「遠慮するなと言って置いていったそうじゃ・・」

大石内蔵助
「吉良上野介が何か知っているかも知れません・・」
「何か心当たりは御座いませんか?」

浅野内匠頭
「指南役は名ばかりで
仕事は何もせず、いちゃもんを付ける事で
必要経費を着服していたそうじゃ」

大石内蔵助
「しかし、何故、左様なケチが
菓子折りを持って来たのか?」
「毎日、菓子折りを持って挨拶に来ておったのか?」

浅野内匠頭
「大叔父殿は菰野藩主・土方雄豊殿との連名で
数々の悪行を幕府に報告すると申して、吉良を脅しておった」
「吉良は、赤穂を恐れておったと思うぞ」

大石内蔵助
「吉良上野介か・・」
「その者、如何なる顔をしておりますか!」

浅野内匠頭
「嫌な顔じゃ」

大石内蔵助
「如何様に嫌な顔で御座る」

浅野内匠頭
「そうよのォ」
「色々と悪事をしておるような顔じゃ」

大石内蔵助
「某が江戸に御供する時には
吉良上野介など、この棒で打ち据えてご覧致しますぞ!」

浅野内匠頭
「おおおォ」
「頼もしいのぉ」
「上野介がヒイヒイと泣き叫ぶ声が聞こえそうじゃ」
「愉快、愉快」

大石内蔵助
「主殿を辱める事は絶対に許しません!」

浅野内匠頭
「んんゥ」
「頼りにしておるぞ!」
 
 

           赤穂事件 大老排除計画




稲葉 正休 (若年寄)
「大老(堀田正俊)は、江戸市中の犬の保護には反対で御座る」

牧野 成貞 (綱吉の側用人)
「其方も反対しておるのかな?」

稲葉 正休
「幕府の方針で御座る」

牧野 成貞
「日光地震で上様がお怒りじゃ!」
「江戸市中の犬の保護が出来ぬから地が揺れたと申しておる」

稲葉 正休
「お咎めが御座いますか?」

牧野 成貞
「処罰は免れまいな!」

稲葉 正休
「江戸市中には捨て子も絶えません
捨て子を捨て置き、犬を庇うのは如何なものか?」

牧野 成貞
「上様は、徳川将軍家の世嗣の長男(徳川 徳松)を亡くしたのじゃ」
「御犬の祟りじゃと申しておる」

稲葉 正休
「んんゥ」
「世嗣を亡くし、直ぐに日光地震・・」

牧野 成貞
「上様の苦悩が如何許りか、ご察し下され!」

稲葉 正休
「しかし、犬の保護とは関係ありませんぞ!」

牧野 成貞
「其方は、大村加トに期待しておるのか!」

稲葉 正休
「んんゥ」
「何の事・・」

牧野 成貞
「その者は、もう証人にはなれんぞ・・」

稲葉 正休
「・・・・」

牧野 成貞
「上様は、大老を始末せよと申された」

稲葉 正休
「大老を・・」

牧野 成貞
「大老を庇った者も同罪じゃ!」

稲葉 正休
「・・・・」

天和3年(1683年)、水害に悩まされていた淀川に赴き、河村瑞賢の随伴による視察を行い「淀川治水策」をまとめる。治水費用として4万両の費用を計上するが、不審に感じた堀田正俊が別途、随行した瑞賢に問いただした所「半額の2万両でも可能」との意見を得た事から、正休は淀川の治水事業の任から外される事となる。
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牧野 成貞
「大老は其方を蔑ろにしておるぞ」

稲葉 正休
「・・・・」

牧野 成貞
「上様に忠義を示せ!」

稲葉 正休
「如何せよと?」

牧野 成貞
「上様は、大老を始末せよと申されておる!」


           赤穂事件 京都所司代補任の頃



戸田忠昌 (老中)
「吉良殿の指南役は不適格との事」
「上様は承知下さいましたかな?」

牧野成貞 (徳川綱吉の側用人)
「指南役は赤穂の浅野長矩に施す事が役目に御座る」
「不適格は御座いません」

戸田忠昌
「大老は吉良上野介をお役目御免に処する事を
承知なされておりますぞ」

牧野成貞
「吉良上野介殿に、ご不満が御座いますか?」

戸田忠昌
「連名の報告書が出ておる」
「指南役は、職務を乱用して経費を着服しておるのだ」

牧野成貞
「指南料は当然の事」
「着服は言い掛かりじゃ」

戸田忠昌
「儂が京都所司代補任の頃じゃが、
京の都は腐敗と堕落で大いに荒廃していた」
丁度その頃、吉良上野介は京の公卿と幕府の連絡係を解任された」
「その後、京の贅沢三昧は改善され」
「京都の庶民は立ち直り、財政も改善された」
「吉良上野介は指南役には適さんぞ!」

牧野成貞
「上様は、嫡男を亡くされ」
「日光地震で心労が重なっております」
「これ以上、変な言い掛かりは
御遠慮頂きたい」
「それよりも、赤穂の浅野長矩を江戸に戻し
吉良上野介の指南を受けさせる事が重要」

戸田忠昌
「全ては、幕府で決定した事」
「吉良上野介は、お役御免に致しますぞ!」

牧野成貞
「駄目じゃ!」
「上様は、大変なお怒り御座る」
「嫡男の事、日光地震は全てお犬の祟りと申しておる」
「江戸市中の犬の保護を拒否した幕府重鎮は責任を負わされるぞ!」

戸田忠昌
「幕府は、資金が枯渇しております」
「もう、悪霊払いの儀式はお止め下さい」
「日光地震の復興資金も必要で御座る」

牧野成貞
「駄目じゃ!」
「御犬の祟りを鎮める為には
悪霊払いをする事が重要だと上様が申しておる」
「御犬を邪険に扱う大老を始末せよとの命令じゃ!」

戸田忠昌
「・・・・」
「大老を処罰・・」

牧野成貞
「大老を庇う者も容赦なく切り捨てられる」

戸田忠昌
「・・・・・」
「御犬を保護すれば
上様の怒りは収まるので・・」

牧野成貞
「もう、遅いぞ!」
「大老は御犬の祟りで・・・」

戸田忠昌
「大老を庇えば・・・」

牧野成貞
「よく考えよ!」
「上様に逆らって、生き残れる者はおらん」
「無駄な抵抗じゃぞ」

戸田忠昌
「んんぅ」
「水戸守は許しませんぞ!」

牧野成貞
「いずれ、光圀も始末する」

戸田忠昌
「なんと!」
「恐れ多き事!」

牧野成貞
「其方は、利口者じゃ」
「上様の権力は絶対じゃぞ」
「逆らってはならん」

戸田忠昌
「御犬のために
大老や幕臣、水戸守を処罰すると申すか!」

牧野成貞
「左様」
「其方は、長生きしたいか!」

戸田忠昌
「んんゥ」
「如何すれば宜い」






           赤穂事件 阿部忠秋の遺産



阿部正武(老中)
「実際、難儀じゃぞ」
「如何したものか・・」

牧野成貞(綱吉の側用人)
「上様は、生類憐みの令を出す事を検討しております」

阿部正武
「御犬の事か?」

牧野成貞
「保護する対象は、捨て子や病人、高齢者で御座る」

阿部正武
「それならば、大いに助かる」

牧野成貞
「では、老中武蔵忍守は合意為さいませ!」

阿部正武
「我が屋敷には、多くの捨て子がおる」
「これは、祖父(阿部忠秋)様の遺産じゃ」
「もう、限界なんじゃ」
「捨て子の保護は幕府でやって欲しい」

牧野成貞
「幕府は大老が仕切っておりますが・・」

阿部正武
「大老は御犬保護を拒否したのだ」
「捨て子は拒否しておらんと思うぞ」

牧野成貞
「いいえ」
「大老は、捨て子や病人、高齢者を見捨てろと申しておりますぞ」

阿部正武
「それは、変じゃ・・」
「御犬保護を拒否したと聞いておるぞ!」

牧野成貞
「同じで御座る」
「捨て子や病人、高齢者を保護したくないから
御犬を引き合いに出して拒否しているので御座る」
「其方は、我らの計画に合意為さいませ!」

阿部正武
「正直、もう限界なんじゃ!」
「捨て子を養う余裕が無いのじゃ・・」

牧野成貞
「助けますぞ!」
「その代わり、我らに協力なさいませ」

阿部正武
「何をすればよい?」

牧野成貞
「先ず、我らの計画を妨害する者共を
始末する必要が御座います」

阿部正武
「乱暴は為らんぞ!」

牧野成貞
「いえいえ」
「話しても諭しても、
言う事を聞かぬ愚か者は始末する以外ありません」

阿部正武
「・・・」
「大老を処罰するのか?」

牧野成貞
「上様は、嫡男を喪い、日光地震を大権現様の警告と恐れ
自念の責に押し潰されそうになっておられます」
「上様は、生類憐みの令で自らを慰めようと為さっておられる」
「これは、我らの計画で御座る」

阿部正武
「大老に、直接 ご忠告為さいませ!」

牧野成貞
「大老は、再三の忠告に耳を貸さず
上様の命令に逆らい、独断で幕府を動かしておりますぞ」

阿部正武
「計画とは?」

牧野成貞
「邪魔者を一掃する事で御座る!」



            赤穂事件 決定的な証拠



徳川光圀(水戸藩主)
「大老(堀田正俊)を引き立て、綱吉の権力を封じる!」
「其の為には、綱吉の将軍としての正当性を訴却する事が重要」
「先様(徳川家綱)の遺言が偽物だとする
決定的な証拠と証人を示す必要が出て来た」

大村加ト(光圀の侍医、御伽衆、進物番)
「はい、覚悟は決めて御座います」
「あの遺言は、某の作製した偽物で御座る」
「綱吉様の、将軍就任は訴却されねばなりません」

稲葉正則(大政参与)
「水戸守に従います」
「大老や幕府の重鎮を纏め上げれば
将軍の無謀な政策に対抗することが可能で御座る」

徳川光圀
「んんゥ」
「加ト殿!」
「心配は要らん!」
「其方には、常に護衛を付けておる」
「怪しい者は近づく事も出来ん」
「大切な証人じゃ!」
「身の安全は保障するぞ!」

大村加ト
「はい」
「某の命は、お預け致す」
「一度は、死んだ身」
「助けて頂いた主殿の為に、命を捧げますぞ!」

稲葉正則
「某も、最大限に協力致しますぞ」
「生類憐みの令は、断固として阻止する必要が御座る」

徳川光圀
「強力な証拠と証人があり「
「幕府の重鎮の協力があれば
生類憐みの令は阻止できる」
「この悪法を許しては為らんぞ!」

大村加ト
「はい」
「断固として、拒否致しましょう!」

稲葉正則
「左様じゃ!」

徳川光圀
「何度も申すが、
大老(堀田正俊)は儂の考えに同意しておる」
「綱吉を封じ込めなければ
幕府は大きな災厄に見舞われる」
「一旦、綱吉の暴走を許せば
もう、後戻りは出来んと思え」
「よいな!」

大村加ト
「松平光長様の協力も必要では御座いませんか!」

稲葉正則
「左様!」
「大老は、期限付きの大名家預け入れ処分としたのじゃ」
「名誉回復の上、復帰させる事が肝要で御座る」

徳川光圀
「んんゥ」
「有力大名の同意も必要じゃ」
「大老と相談して、光長殿を復帰させよう」

大村加ト
「いよいよ」
「主殿の時代で御座います・・」

稲葉正則
「左様」
「偽りの将軍は、不要で御座る」

徳川光圀
「そうはいかん」
「儂は、将軍の失脚を望んではおらんぞ」
「将軍を封じ込めれば、それが一番良いのじゃ」
「幕府を解体しては為らん!」
「幕府の政務は、幕臣がするのが良い」
「綱吉を権力を持たない、名ばかりの将軍として
祭り上げればよいのじゃ」

大村加ト
「はい」
「左様に御座います」

稲葉正則
「水戸守には先様から奉じられた
将軍への戒めの書状も御座る」
「その上、正当性を否定する偽の遺言が証明されれば
将軍の権力は地に落ちますぞ」

徳川光圀
「んんゥ」
「しかし、あまり落とし過ぎるのも拙い」
「程よく、陥れるのじゃ」

大村加ト
「なるほど」
「左様に御座います」

稲葉正則
「良いお考えと思いますぞ!」





大久保忠朝(老中首座)
「上様の命令に背き、
幕府で専横を繰り返す大老に対して如何致すべきか」

阿部正武(老中)
「幕府の政策は我ら老中で決めることが慣例で御座る」

戸田忠昌(老中)
「んんゥ」
「しかし、生類憐みの令は如何なものか?」

大久保忠朝
「三河田原守」
「我らは、善人の良将と呼ばれております」
「生類を憐れむは、善人の良将として当然の事」
「これは、上様の御命令ですぞ!」

阿部正武
「左様」
「これは、捨て子を幕府の責任で保護する事を意味しておる」
「病人ゃ老人も同様じゃ」
「弱きを助け、庶民の暮らしに安心を齎す」
「大老は、専横により私腹を肥やし、庶民を苦しめておる」

戸田忠昌
「武蔵忍守」
「上様は、悪霊を恐れ
御犬の祟りを信じておりますぞ」
「必ずしも、捨て子の保護をするとは・・」

大久保忠朝
「三河田原守」
「我らは、良将ですぞ」
「上様に背き、大老の専横に加担するのは善人の行いか?」

阿部正武
「左様」
「我らが、領民に慕われておるのは
領民の要望に応えているからじゃ」
「上様も、同様にお考えじゃぞ」

戸田忠昌
「蔵人(牧野成貞)(綱吉の側用人)の企てを聞いた」

大久保忠朝
「蔵人殿は将軍の側用人じゃ」
「将軍は引き籠って御座る」
「我らが、将軍の命令を受けるには
蔵人殿を通さねば為らん!」
「蔵人殿に企てがあれば
上様の企てとなる」
「上様の企てとは何じゃ!」

阿部正武
「企てなどと申すではない」
「我らは、善人の忠臣であれば良い」
「上様の命令に背くのは
謀反人のする事」
「不忠に御座る」

戸田忠昌
「んんゥ」
「左様か?」
「儂も、其方も同様に
まだ、老中に引き立てられて間もない身」
「幕府の政務に携わっておるが
大老が全てを決めておる」
「一度、大老を交えて政務の有り方を考え直す必要が御座る」

大久保忠朝
「何度も申すが
政務は老中の仕事じゃ」
「大老は臨時に対応することが慣例となっておる」
「これは、大老の専横じゃ!」

阿部正武
「ここは、首座殿(大久保忠朝)の顔を立てては如何じゃ」

戸田忠昌
「左様じゃな」
「其方と儂は、新参者じゃ」
「首座殿の意見を尊重するのが良さそうじゃ・・」

大久保忠朝
「よし」
「では、上様の御命令に従わぬ大老の始末をせねばならんぞ」

阿部正武
「大老を強制隠居させますか?」

戸田忠昌
「しかし、上様は大老を命の恩人として
厚く信頼を寄せておりますぞ」

大久保忠朝
「いやいや」
「それは、過去の事」
「今は、違う」
「上様が、大老を始末せよと申されておる」

阿部正武
「左様」

戸田忠昌
「やはり、これは陰謀で御座る」

大久保忠朝
「不忠の大老を誅殺することが
上様の望みじゃ」

阿部正武
「左様」

戸田忠昌
「んんゥ」


              赤穂事件 決裂



戸田忠昌(老中)
「儂は、年は食っとるが新参者者」
「老中としては、頼りないかもしれん」
「今回は、若年寄との話し合いに立ち会うことに致した」
「宜しいかな?」

堀田正俊(大老)
「おおォ」
「立会人を交えて、話し合いですな」
「何を話しますかな?」

稲葉正休(若年寄り)
「率直に申し上げれば
大老は専横となっております」
「上様の御命令を拒絶してはなりません」
「老中は協議の上で大老を罷免しようとしております」

戸田忠昌
「話のように、老中で協議致しましたぞ」

堀田正俊
「協議をしたのか?」
「しかしな」
「上様の御命令は、野良犬の保護じゃぞ!」
「最近、上様が悪霊退治の儀式を頻繁に行っておる事もあり
幕府の御金蔵は乏しい」
「上様の命令とは申すが
実際は、側用人が仲立ちしておるのじゃ」
「老中の主張は通らんぞ!」

稲葉正休
「いいえ」
「今回の話し合いは、
某の立場を理解して頂く為に開いたので御座る」

戸田忠昌
「若年寄は、側用人から遺言を手渡されたと申しておる」
「そして、大老は、その遺言は偽物と申されたそうじゃな」

堀田正俊
「んんゥ」
「牧野蔵人(牧野成貞)か?」

稲葉正休
「上様が引き籠っておられるので
側用人の権力は想像以上に大きくなっております」
「某が受け取った遺言が偽物だという主張を撤回して頂きたい」

戸田忠昌
「もし、撤回できなければ
大老は処罰されますぞ!」

堀田正俊
「やはり、側用人の陰謀か!」
「逆に、牧野蔵人を処罰してやれば良いではないか」
「実はな、偽物の証拠はあるのだ」
「その偽物を作成した証人である
大村加トが証言する手筈となっている」
「偽の遺言で将軍となった綱吉様は
将軍としての正当性が損なわれる事になりますぞ」

稲葉正休
「んんゥ」
「それは自惚か・・それとも」
「上様に謀反か・・」
「大変な過ちですぞ!」

戸田忠昌
「左様な事を口が裂けても申すべきでは御座いませんぞ!」
「さあ」
「儂は、今の話は聞かなかった事に致す」
「なァ」
「悪い事は言わん」
「謀反を改めよ!」

堀田正俊
「謀反は上様じゃ!」
「其方達は悔しくは無いのか」
「我らは、幕府の為に真剣に働いておる」
「しかし、実権は蔵人を始めとする側用人が握っておるのじゃぞ」
「側用人は上様の後ろ盾で専横となっておる」
「この状態は改めねば為らん」

稲葉正休
「いやいや」
「話をはぐらかしては為らん」
「其方は、謀反を働きながら
その責任を側用人に責任転嫁しておるぞ」
「なァ」
「考えを改めて、我らと協力しろ」
「それが、其方の為じゃぞ!」

戸田忠昌
「大老は一人で孤立しておりますぞ」
「老中を敵に回してはなりません」
「皆と協力して対処することが最善で御座る」

堀田正俊
「孤立などしてはおらん」
「儂に協力する仲間は多いぞ」
「上様が引き籠っておられても良いではないか」
「ただ、上様が好き勝手に御触れを出し
それを無条件に受け入れておっては
老中など不要となってしまいますぞ!」
「上様の御触れを垂れ流してはなりませんぞ!」

稲葉正休
「ええェ」
「何と!」
「恐れを知らん不届き者!」
「上様を愚弄なさるつもりか!」
「其方の仲間、ひっくるめて処罰されるぞ!」

戸田忠昌
「おおォ」
「左様」
「言葉を慎みなされ・・」
「なァ」
「訂正なさいませ・・」

堀田正俊
「どうやら、話し合いは決裂したようじゃな」

稲葉正休
「決裂したのではないぞ!」
「大老が決裂させたのじゃ!」

戸田忠昌
「ああァ」
「大老!」
「謀反ですぞ!」

堀田正俊
「上様の謀反じゃ!」

稲葉正休
「もう、話し合いは無駄じゃ」


             赤穂事件 忠臣藤井紋太夫



徳川光圀(水戸藩主)
「其方の働きは分かっておるか」

藤井紋太夫(水戸家老)
「承知しております」
「大老(堀田正俊)の後ろ盾となっておられる
主殿を支える事で御座る」

徳川光圀
「大老が政務にあたっておれば
幕府は安泰じゃが
綱吉が幕府の方針に口出しをすれば
大きな災厄となるぞ」
「儂が、水戸に帰らず
江戸を住処にしているのは
大老を支える為じゃ」
「よいな!」

藤井紋太夫
「お願いが御座います・・」

徳川光圀
「もう宜いぞ・・聞き等無い・・」

藤井紋太夫
「頼常(光国の長子)様の下向は、お許し下さい」

徳川光圀
「柳沢吉保は影の実力者となった」
「頼常の下向は柳沢に取り入りたい為じゃ」
「頼常自らの意思じゃぞ!」
「我らの干渉する事では無い」

藤井紋太夫
「しかし」
「水戸家老一同、
この様な辱めを耐える事が出来ません」

徳川光圀
「これ以上申すな!」

藤井紋太夫
「失礼致しました・・」

徳川光圀
「頼常は高松藩主、主君は綱吉じゃ!」
「己の意思で、下向する者を
咎める事は出来ん!」

藤井紋太夫
「大老(堀田正俊)が幕府を取り仕切っておれば
柳沢を恐れる事は御座いません」

徳川光圀
「儂は、柳沢を恐れているのではない」
「幕府の崩壊を恐れているのじゃ!」
「儂には、将軍の正当性を問う偽の遺言と、
それを証明する証拠、証人を抱えておる」
「更には、先様(家綱)の戒めの書状も持っておるのじゃ」
「綱吉の不安は、いかばかりか・・」
「綱吉の不安を煽っては為らん」
「綱吉には、
おとなしくしてもらう事が一番宜いのじゃ」

藤井紋太夫
「恐れ入りました・・」

徳川光圀
「今のこの体制を維持する為には
柳沢の働きも重要なのじゃ」
「変な動きで、
館林を刺激しては為らん」

藤井紋太夫
「承知致しました」

徳川光圀
「大政参与、大老は我らの方針に従い
幕府の政務にあたっておるが
老中以下の思惑は分からん」
「老中は新参者もおるから
我らの意向を誤解無きように伝えておく必要がある」

藤井紋太夫
「大久保忠朝は、唯一の古参で御座います」
「戸田忠昌と阿部正武は新参で御座る」
「大久保忠朝を取り込むことが重要で御座います」

徳川光圀
「いや」
「大久保忠朝は駄目じゃ」
「戸田忠昌と阿部正武は新参じゃが、見所が有る」

藤井紋太夫
「しかし」
「大久保忠朝は老中首座の古参」
「首座に逆らうことは
新参には敵いません」
「首座を引き入れることが重要だと思います」

徳川光圀
「左様か・・」
「其方に任せる」

藤井紋太夫
「はい」
「命に代えて、首座を説得致します」

徳川光圀
「気を付けろよ!」
「言っておくが
大久保忠朝は館林の犬かもしれんぞ」
「あ奴は、信用為らん!」

藤井紋太夫
「はい」
「お任せ下さい」

              

            赤穂事件 大久保忠朝の権力




大久保忠朝(老中首座)
「今の状況は、側用人が上様の御命令を言い渡す事により
幕府の権力は、上様から直接話が聞ける立場に有る牧野成貞殿に移った」
「この状況では、我ら老中の政務は成り立たない事になる」
「某は首座として、幕府の政務を統轄して実行する立場じゃ」
「ある意味、幕府の最高決定機関の長である」

堀田正俊(大老)
「上様の御命令は拒否しましたぞ!」
「其方は、何を考えておる?」

大久保忠朝
「上様を蔑ろにしては為りません!」

藤井紋太夫(水戸家老)
「いやいや」
「今回、皆様に御足労賜ったのは
その事で、お願いが有るからで御座る」
「大老に大きな負担が掛かっております故
首座殿にも協力を賜りたく参上致した次第」
「何卒、ご理解の程、宜しくお願い申し上げる」

大久保忠朝
「んんゥ」
「では、確認じゃ!」
「水戸家老は何故に幕府の方針に首を挟む!」
「申して見よ!」

藤井紋太夫(水戸家老)
「いやいや」
「我が主殿(徳川光圀)は将軍綱吉様を推薦しました」
「そして、大老の助けで
目出度く、上様は将軍と成られたので御座る」
「始めから、関わりが御座る」
「無関係ではありません」

稲葉 正休 (若年寄)
「水戸家老! 首座は
何か探りに来たのかと申されておるのです」

藤井紋太夫
「いやいや」
「探りなどと・・」
「主殿が心配しておる故」
「我らも力になれればと思っております」
「ご理解下さいませ・・」

堀田正俊(大老)
「首座は儂を専横と呼び批判しておる」
「上様の御触れを垂れ流すのが良いのか?」

大久保忠朝
「垂れ流す!と申すか!」
「大老は上様を愚弄しておる!」

藤井紋太夫
「首座殿」
「そのように、頑固になっては為りません
ここは、穏便に話し合いを致しましょう」

大久保忠朝
「水戸殿は上様の正当性を疑っておられるが
幕府の転覆を狙っておるのか!」

藤井紋太夫
「何を申される!」
「変な推測を為さらぬように」
「我が主殿は、上様を推挙為されたので御座いますぞ!」
「幕府の安定を何よりも望まれております」

稲葉 正休 (若年寄)
「幕府の安定を望んでおるのならば
上様の将軍としての正当性を疑う理由は何で御座る?」

堀田正俊
「正休、いい加減にしろ」
「水戸守に無礼は許さんぞ!」

大久保忠朝
「いいや」
「これは、肝心要、極めて大切な事で御座る」
「水戸守の心意を知らねば
協力など出来んぞ!」
 
堀田正俊
「やめろ!」

藤井紋太夫
「主殿(光圀)のお考えは
幕府の安定で御座る!」
「それ以外は、御座らん」

稲葉 正休
「いやいや」
「安定を何よりも望まれておられるのであれば
将軍の正当性を問う必要が御座らん」
「やはり、何かを隠しておられる」
「我らの協力が欲しければ隠し立ては為らん」

大久保忠朝
「さあ」
「本心を申してみよ!」

堀田正俊
「おい!」
「止めろと申しておるぞ!」

藤井紋太夫
「協力してもらえる事が約束出来ますか?」
「老中で揃い踏みで確約できますか?」
「ここで、大老と我が主殿に誓いますか!」

大久保忠朝
「本心を聞いてからに致す!」
「さァ」
「申せ!」

藤井紋太夫
「これは、儂の本心じゃ!」
「主殿とは関係は無いぞ!」
「それでも宜いか!」

大久保忠朝
「聞いてから決める」

藤井紋太夫
「主殿を巻き込むな!」
「約束できるか!」

大久保忠朝
「無論」

藤井紋太夫
「儂の持論じゃ」
「上様は野良犬の保護を捨て子の保護に先立って命令された」
「この様な命令を、そのまま受け入れる事は無策」
「二度と、この様な事に為らぬ様に
上様の正当性を疑い、
大老の負担を軽減する為に、
老中も団結して頂きたい」
「左様な、お願いで御座る」

大久保忠朝
「要するに、上様は無用との事ですな!」

藤井紋太夫
「お お待ち下さい」
「左様に申せば
何もかも、ぶち壊しではありませんか?」
「無用とは何で御座る」
「某は、左様な意味で申しては御座いません!」

大久保忠朝
「それが、水戸守の心意か!」

藤井紋太夫
「我が主殿のお考えでは御座らん」
「某の本心じゃ!」









               赤穂事件 混迷



綱吉
「犬!」

柳沢吉保
「はい」
「此処に」

綱吉
「犬が喋るな!」

柳沢吉保
「ワン」

綱吉
「儂の出した御触れが無視されておるぞ!」

柳沢吉保
「大老が拒否致しました」

綱吉
「大老を始末せよ!」

柳沢吉保
「御意」

綱吉
「あッ」
「光圀が怒るか?」

柳沢吉保
「おそらく、反撃が御座います」

綱吉
「ちょっと待て」

柳沢吉保
「はい」

綱吉
「何か良い考えはないか?」

柳沢吉保
「我らにお任せ下さい」

綱吉
「よし」
「其方に任せる」
「光圀も始末せよ!」

柳沢吉保
「反撃が御座います
我らは大きな打撃を受けますが
強行致しますか?」

綱吉
「いや」
「光圀は後じゃ」
「大老を始末せよ」

柳沢吉保
「御意」

綱吉
「あッ」
「藤井紋太夫を始末せよ!」

柳沢
「御意」

綱吉
「光圀が怒るか?」

柳沢
「おそらく・・」

綱吉
「何か良い考えは無いのか?」

柳沢吉保
「では、藤井紋太夫を追放致しましょう」

綱吉
「よし」
「島に流せ!」
「いや」
「光圀が怒るか?」

柳沢
「おそらく・・」

綱吉
「何か良い考えはないか?」

柳沢吉保
「御座います」
「藤井紋太夫は郷土米子に追放するのです」
「そうすれば、郷土への帰郷となりますので
光圀の干渉は避けられます」

綱吉
「其方に任せる」
「アッ」
「子犬の躾けは如何なっておる」

柳沢吉保
「浅野長矩は赤穂に帰りました」

綱吉
「躾が出来んではないか!」

柳沢吉保
「では」
「吉良上野介を赤穂に向かわせましょう」

綱吉
「あッ」
「池田は犬じゃったな」
「池田と吉良で躾よ!」

柳沢吉保
「御意」



            赤穂事件 徳川家康の外曾孫  



藤井紋太夫
「帰郷の挨拶に参りました」

池田 光仲
「おお」
「水戸殿は達者かな」

藤井紋太夫
「はい」
「我が主殿は健勝に御座います」

池田 光仲
「ところで、儂は変な事を言われておるぞ」
「儂の事を犬と申す者がおる」
「儂は犬か?」

藤井紋太夫
「いいえ」
「それは、岡山守の事で御座る」

池田 光仲
「あれ(池田綱政)は犬なのか?」

藤井紋太夫
「頻繁に側用人に下向し
媚び諂い、情けない有様」
「我が主殿の嫡男(松平頼常)も同様に御座る」

池田 光仲
「儂の息子(池田綱清)は
先様(家綱)の偏諱を受けて綱清に改名したが
その当時の大老(酒井忠清)からも偏諱を受けておる」
「今になって、改名も難しい」
「難儀じゃ」

藤井紋太夫
「上様(綱吉)は忠清殿を恐れ、
忠清殿を庇った者を標的にしております」

「これも、今の時代と諦めて、お家の安泰を第一に考えれば
犬呼ばわりも耐えねば為らぬと主殿は申しております」

池田 光仲
「水戸殿が屈辱に耐えておられるのに
我らが不満を持ってはならんな」

藤井紋太夫
「はい」
「・・・・ただ」
「赤穂の如き、武士道も必要だと・・」

池田 光仲
「んんゥ」
赤穂の領地は、(1645年)3月15日、池田輝興は突如発狂し、正室の亀子姫をはじめ、侍女数人を斬殺する事件を起こしたため、3月20日に改易された
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「陰謀じゃ」
「赤穂領は浅野に奪われた」

藤井紋太夫
「今、池田領地は浅野に東西(赤穂と広島)に挟まれ
身動きが取れなくなっておりますな」

池田 光仲
「儂は、もう年じゃ」
「そろそろ隠居も考えておるが
世継は病弱」
「如何したものか?」

藤井紋太夫
「米子領主(荒尾成重)も御座いますぞ」
「米子は郷里で御座る」

池田 光仲
「左様」
「水戸殿の力添えが必用じゃ」

藤井紋太夫
「ところで、
赤穂守(浅野内匠頭)を、この地に招き入れる計画があると
指南役(吉良上野介)から聞きましたが」
「如何なる計画か、存じておられますか?」

池田 光仲
「んんゥ」
「赤穂は奪われた領地
その地の領主を招き入れ
接待せよと申すか!」

藤井紋太夫
「これは、また
何かの陰謀かも知れませんぞ・・」

池田 光仲
「しかし」
「岡山守池田綱政は犬となった」
「我らだけで
如何対処すればよいのじゃ・・」

藤井紋太夫
「一度、岡山守と
じっくりと話し合いの場を設けましょう!」

池田 光仲
「あ奴は、情けない奴じゃ」

藤井紋太夫
「我が主殿も協力する筈」
「我ら米子領も味方で御座る」

池田 光仲
「如何なる陰謀じゃ」 


                赤穂事件 友好 




吉良上野介 (高家旗本 高家肝煎)
「赤穂守を共に指南せよとの指示じゃ」
「岡山藩にて宴席を用意するように
お願い致す」

池田綱政(岡山藩主)
「はい」
「謹んでお受け致します」

吉良上野介
「あくまでも、赤穂守を指南する事で御座る」
「これは、大変に重要な任務と心得よ!」

池田綱政(岡山藩主)
「はい」
「我らは、何をすれば宜しいので御座る」

吉良上野介
「この重要な指南に掛かる経費を負担する事じゃ」

池田綱政(岡山藩主)
「はい」
「ところで、如何なる指南を為さいますか?」

吉良上野介
「上様は、朱子学の主を仰いでおられたが
朱子学は、上様には有害な学問であるとの見解じゃ」
「朱子学に於いて、万物天地の動きは人心の表れと為す」
「この朱子学の教えは
上様の心身に悪い影響を与えておる」
「上様は極度に恐れ
引き籠り、全ての災いを祟りとして遠ざけておられる」
「生類憐みの令は、天地の怒りを鎮める為の儀式の一環なのじゃ」

池田綱政(岡山藩主)
「はい」
「それは、山鹿素行殿も申されておりました」

吉良上野介
「その者は、儂と親密じゃぞ」
「儂とは、同じ考えを共有している」
「其方も、同士となるか!」

池田綱政(岡山藩主)
「あぁ・」
「ところで、赤穂守に如何なる指南をするので御座る?」

吉良上野介
「上様は、天変地異を極度に恐れ、
それが人心の表れだと信じておられる」
「日光地震は将軍の地位を揺るがす
謀反の兆候だと申しておる」
「上様は、其方のような
媚び諂う、犬を育成したいのじゃ」

池田綱政(岡山藩主)
「はい」
「某は、犬で御座る」

吉良上野介
「おおおォ」
「良く申された」
「其方のような犬を
上様は望まれておる」

池田綱政(岡山藩主)
「では」
「赤穂守を犬にしたいので御座いますか?」

吉良上野介
「左様」
「しかし、犬にすると言えば
反発されるからな」
「だから、この事は内緒で指南と申しておるのじゃ」
「実際は、犬の躾けじゃ!」

池田綱政(岡山藩主)
「浅野家は武闘派で御座います」
「武士道が御座いますから
簡単に犬にはなりませんぞ!」

吉良上野介
「ほォ」
「其方は、簡単に犬になれたのじゃな?」
「其方には、武士道は無いのか?」

池田綱政(岡山藩主)
「某は、馬鹿で御座る」
「犬にでも、何でも為りますぞ」

吉良上野介
「おおォ」
「良い心掛けじゃ」
「共に、浅野長矩を犬にする事を
使命と致しましょう」

池田綱政(岡山藩主)
「ところで、一体何をすれば良いのか?」
「ご指南下され」

吉良上野介
「浅野長矩は子犬のうちに
躾ける事が肝要じゃ」
「成犬になっては
犬の振りをするからな」
「出来るだけ早く躾けるのじゃ!」

池田綱政(岡山藩主)
「某は、馬鹿で御座る」
「犬の躾は、指南役には敵いません」
「いやはや、如何したらよいものやら??」

吉良上野介
「何も、心配は要らん」
「儂は、犬の躾に慣れておる」
「儂に任せろ」

池田綱政(岡山藩主)
「そうして下されば助かります」

吉良上野介
「但し、必要な経費は其方が負担するのじゃぞ!」

池田綱政(岡山藩主)
「あァ・・はい」
「では、経費は家老に相談して
出来る範囲で協力致します」

吉良上野介
「おい」
「経費も出さん
躾も出来ん
其方は、何をするのじゃ!」

池田綱政(岡山藩主)
「あああァ」
「では」
「弟と山鹿素行殿と相談して対処致します」

吉良上野介
「んんゥ」
「其方は藩主じゃ」
「其方が決定すれば良いではないか」

池田綱政(岡山藩主)
「某は、弟と相談しなければ
決められないので御座る」

吉良上野介
「まァ宜しい」
「金さえ負担すれば
それでよい」

池田綱政(岡山藩主)
「はァ・・」




  
           赤穂事件 儒学、軍学者 山鹿 素行



山鹿 素行 (播磨国赤穂藩へお預けの身)
「指南役(吉良)が接待を用意しておりますが
御気を付け下され」

浅野内匠頭 (播磨国赤穂藩主)
「また、吉良か?」
「何故、我らに付き纏うのじゃ!」

山鹿 素行 
「赤穂守は将軍綱吉様から特別な寵愛を受けております」
「その接待を指南するのが
吉良殿だとお考え下され」

浅野内匠頭
「其方は、吉良と親密なのか?」

山鹿 素行
「はい、某は指南役と交流が御座います」 

浅野内匠頭
「儂は、吉良は好かんぞ!」

山鹿 素行
「吉良殿は
将軍綱吉様から信頼されております指南役で御座います」 
「好き嫌いで済む問題では御座いません」

浅野内匠頭
「んんゥ」
「其方は、幕府で軍学を学んでおったそうじゃが
何故、この地(赤穂)に預かりの身になっておる?」

山鹿 素行 
「某は、儒学者でも御座いますが
朱子学の危険性を知り、朱子学を批判しました」
「幕府は、朱子学を進めたいこともあり
某の考えは受け入れられない事となりました」

浅野内匠頭
「朱子学は危険なのか?」

山鹿 素行 
「朱子学は使いようによれば良い学問で御座るが
使い道を誤れば大きな災いと為り得るのです」

浅野内匠頭
「では」
「幕府は、使い道を誤っておるのか?」

山鹿 素行 
「いいえ」
「将軍綱吉様が
朱子学を信じ込んでいる事が問題で御座います」

浅野内匠頭
「幕府は、武道よりも学問が重要と申しておる」
「朱子学も、その一環じゃぞ!」

山鹿 素行 
「はい」
「実は、朱子学は自然の摂理は人心によって影響を受け
全ての自然の摂理は人の心の表れと考えるので御座います」
「逆もまた然り」
「自然災害は人心の荒廃から齎され」
「災害は、良からぬ事の兆し」
「災害が起こった時には、
幕府を脅かす
謀反を企む者が現れた兆候として
認識されたので御座います」

浅野内匠頭
「左様か?」
「何が問題なんじゃ?」

山鹿 素行
「日光地震は
将軍綱吉様に大きな衝撃を与えたので御座います」
「綱吉様は
日光東照宮が大きな地震に見舞われたのは
徳川家康大権現様のお怒りと信じております」
「そして、その怒りの矛先は
謀反者に向かったので御座る」

浅野内匠頭
「左様か・・」
「確かに、朱子学は恐ろしいな」

山鹿 素行 
「今回の吉良殿による接待は、お断りなさいませ」

浅野内匠頭
「おおォ」
「断ってもよいのか?」

山鹿 素行 
「儂の方から、吉良殿に話を付けましょう」

浅野内匠頭
「それは、助かる」
「儂は、吉良とは会いたくない」

山鹿 素行
「会わぬ方が身の為と存じ上げます」
 
浅野内匠頭
「身の為?」
「嫌な事を申すな・・」 

            赤穂事件 朱子学排除連名




藤井紋太夫(水戸家老)
「其方は、赤穂にお預けの身
某は、帰郷を申し渡され、江戸に近づけん訳じゃな」

山鹿素行(儒学者)
「ただ、連名があれば
幕府に申し入れが可能かと・・」

藤井紋太夫
「んんゥ」
「赤穂は将軍の肝煎だから
浅野内匠頭との連名は有効じゃ」

山鹿素行
「では、犬千代兄弟の連名と致しましょう」

藤井紋太夫
「しかし、最近は幼名や改名に犬の字を貰い受ける事が多いな」 

山鹿素行
「はい」
「これは、水戸守の妹君が大姫から犬姫に改名した事が大きいかと」

藤井紋太夫
「これだけ、流行れば
媚び諂いも、辱めとは為らんな」
「武士道は廃れる一方じゃ」
「情けない」

山鹿素行
「時代が変わったように見えますが
全ては朱子学が原因で御座る」
「幕府から朱子学を排除して
正常な世の中に戻す必要が御座います」

藤井紋太夫
「我が主殿(光圀)は、江戸で孤立しておる」
「儂は、帰郷命令で動きがとれん
其方は、連名書を持って江戸に行き
主殿の様子を儂に伝えて欲しい」
  
山鹿素行
「はい」
「では、水戸家臣と連絡が取れるように
手筈して頂きたい」

藤井紋太夫
「んんゥ」「しかし」
「儂が、滅多な事をすれば
我が主殿の窮地を招く事に為り兼ねん」
「如何すればよい?」

山鹿素行
「では、水戸守と連絡出が取れるように
書状を頂きたい」

藤井紋太夫
「もしもの時は?」
 
山鹿素行
「心配無用に御座る」
「危険があれば書状は焼き捨てます」

藤井紋太夫
「んんゥ」
「書状を持たせるのは、待ってくれ・・」

山鹿素行
「某は、赤穂兄弟の連名書を持ち
命懸けで江戸に行くのですぞ!」

藤井紋太夫
「んんゥ」
「分かっておる」
「兎に角、主殿に迷惑を掛けぬと誓ってくれ!」

山鹿素行
「無論」
「水戸守を失えば、幕府は終わりで御座る」

藤井紋太夫
「んんゥ」
「分かった」
「書状は、後で必ず焼き捨てるのじゃぞ!」

山鹿素行
「水戸守は孤立などしておりません」
「大老、大政参与、幕臣は水戸守と共にあります」
「孤立しているのは、将軍綱吉様で御座る」

藤井紋太夫
「おいおい」
「将軍様に孤立などと申しては為らん」
「江戸に行ったら、言動に気を付けねば・・・」
 
山鹿素行
「無論、分かっております」
「某も、無暗に命を投げ出すつもりは御座らん」

藤井紋太夫
「んんゥ」
「幕府は、分裂しておるな・・」

山鹿素行
「はい」
「将軍が権力を持てば
世は、破滅に向かうでしょう」

藤井紋太夫 
「如何したものか?」          


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