アプリコット プリンセス

チューリップ城には
とてもチャーミングなアプリコット姫がおりました

赤穂事件 綱吉復活!

2022-02-16 11:08:52 | 漫画


将軍綱吉
「おい!柳沢!」
「儂の評判は如何じゃ!」

柳沢吉保
「はい」
「皆の者、恐れ慄いて御座います」
「上様の権力は大いに高まりました」

将軍綱吉
「左様か!」

「おい!柳沢!」
「儂は新しい犬が欲しいぞ!」

柳沢吉保
「はい」
「御用意しております」
「江戸神田橋御番の又一郎は如何で御座いましょうか?」

将軍綱吉
「犬千代か?」

柳沢吉保
「はい」
「犬千代は今、江戸神田橋御番となり江戸住まいで御座います」

将軍綱吉
「犬千代のしつけは如何なっておる!」

柳沢吉保
「はい」
「備中足守藩主・木下公定が付いております」

将軍綱吉
「犬千代は、使の饗応役は出来そうか?」

柳沢吉保
「はい」
「それでは、
朝鮮通信使饗応役に任命しては如何でしょうか」

将軍綱吉
「うんうん」
「左様にせい!」
「子犬のうちにしつけておく事は必要じゃぞ」
「大人になると、犬のふりをするからな!」

柳沢吉保
「赤穂は武闘派と聞いておりますので
少々心配が御座います」

将軍綱吉
「何じゃ!」

柳沢吉保
「子犬は赤穂藩主で御座います」

将軍綱吉
「うゲ」
「藩主で子犬か?」
「んんゥ」
「犬千代は、もう子犬ではないのか?」

柳沢吉保
「いいえ」
「子犬で御座います」
「今は、犬千代以外の良き子犬は見当たりません」
「ただ、上様が直接にしつけ為さるのが宜しいかと・・・」


将軍綱吉
「じゃけどなァー」
「光圀が見張っておるぞ!」
「光圀にばれたら、叱られるぞ!」

柳沢吉保
「光圀を恐れては為りません!」

将軍綱吉
「ちょっと待て」
「備中足守藩主・木下公定が付いておったな」
「その者に探りをさせてみろ」
「光圀にばれないようにしつけさせるのじゃ!」

柳沢吉保
「では、子犬は暫く止めにして
しつけだけ木下公定にさせてみましょう」

将軍綱吉
「ああゥ」
「ぼやぼやしてると」
「子犬が大きくなるぞ!」

柳沢吉保
「直ぐに、又、機会は御座います」
「暫くの間は木下公定に任せてみては如何でしょうか?」

将軍綱吉
「んんんゥ」
「子犬が欲しいぞ!」

柳沢吉保
「暫くの我慢で御座います」



浅野長矩 (播磨赤穂藩の第3代藩主)
「某、初めての大役で御座います」
「宜しく、ご指導の程、お願い申し上げる」

木下公定 (備中足守藩主)
「おおォ」
「其方が赤穂守じゃな」
「其方は大器と聞く」
「大器晩成となる素質じゃ」

浅野 長矩
「赤穂の御霊屋に恥じぬよう
精進する所存に御座います」

木下公定
「んんゥ」
「流石、上様の御目に叶う逸材じゃ!」
「儂は、武芸として槍を嗜む」
「其方は武闘派の赤穂藩じゃ」
「共に剣術に励もうぞ!」

浅野 長矩
「はい」
「赤穂は武闘派で名を馳せております」
「武士道に則り、鍛錬し
武芸を高めて参ります」

木下公定
「今回の役目は幕府よりの朝鮮通信使饗応役じゃ」
「我らは、使者の安全と、使者の接待費捻出にあたる」
「使者を伊豆三島を無事に通す事」
「使者を存分に持て成す事」
「これが、我らの役目じゃぞ」

浅野 長矩
「少し、お伺い願いたい!」

木下公定
「何なりと申せ」

浅野 長矩
「朝鮮人街道は
関ケ原の戦いで勝利した大権現様が
お通りになった吉道で御座います」
「大名行列も憚る吉道を
朝鮮人街道として
使っているのは何故で御座る」

木下公定
「我らは、驕っては為らぬのじゃ」
「使者は最高の持て成しで饗応する事が慣わしで御座る」

浅野 長矩
「左様に諂うのは嫌で御座る」

木下公定
「んんゥ」
「これは、慣わしじゃぞ」
「我らが先祖からの御霊から授かった美徳じゃ」
「諂いではないぞ!」

浅野 長矩
「左様で御座いますか」
「では」
「我らは怠りなきように
饗応致すのみで御座る」

木下公定
「左様」
「持て成しは美徳じゃ!」

浅野 長矩
「ところで、何故に
某が大器晩成と思うのじゃ?」

木下公定
「其方が、上様の御目に叶っておるからじゃ!」

浅野 長矩
「それがよく分からぬので御座る」
「某は先様(家綱)との謁見が叶っておりますが
何も武功は御座いません」
「手柄無き者で御座る」

木下公定
「これからの働きに期待されておるのじゃ!」

浅野 長矩
「左様で・・・」

木下公定
「儂は、其方の事を頼まれた」

浅野 長矩
「ええェ」
「何故で御座る!」

木下公定
「其方が、立派な武将となるようにとの御指示じゃ!」

浅野 長矩
「いやいや」
「某には、赤穂の家老が付いておりますゆえ
その様な事は・・・」

木下公定
「しかし」
「上様の御命令じゃ」
「拒否は出来ん!」

浅野 長矩
「はい」
「何をすれば宜しいので御座いますか?」

木下公定
「そうは申しても
儂が指導出来るのは槍術だけじゃ」
「後からご指示が下る筈じゃ」



柳沢吉保(小納戸役)
「伊勢津守」
「下向は、およし下され!」
「某は小姓ごとき屋敷に下向するのは
みっとも御座いませんぞ!」

藤堂高久(伊勢津藩の第3代藩主)
「ああァ左様」
「見苦しいとは思うが、勘弁じゃ・・」
「勘弁しておくれ・・」

柳沢吉保
「何度も申す事」
「某は、小姓なのじゃぞ」
「何で藩主から命乞いを受けようか!」

藤堂高久
「ああぁ左様」
「頼む」
「儂は、何でもするぞ」
「許してくれ・・」

柳沢吉保
「何でもするのか?」

藤堂高久
「ああァ左様」
「申し付けてくれれば
何でもする」
「許して欲しい」

柳沢吉保
「ほォー」
「承知した」
「では、上様に相談してから
其方の処分を考えよう」

藤堂高久
「おおォ」
「上様に相談してくれるのか!」
「頼むぞ!」
「何でもするぞ」
「助けてくれ!」

柳沢吉保
「よし」
「では、手始めに、上様への手土産を用意せねば為らん」
「酒井忠清を擁護していた者共を列挙せよ!」

藤堂高久
「擁護するとは如何なる事で御座いますか?」

柳沢吉保
「上様は忠清を庇った者を
処罰せよとの、御命令じゃ!」
「庇った者を列挙せよ!」

藤堂高久
「あああゥ」
「某の正室の亀姫は、酒井忠清の娘で御座るので
忠清殿は義理の父」
「父親の葬儀をするのは子の役割で御座います」
「某の罪は何で御座いますか?」

柳沢吉保
「上様が申しておる!
忠清を庇った者共を始末するようにとの
御命令じゃ!」

藤堂高久
「始末するとは?」

柳沢吉保
「上様は、大権現様の曾孫である松平光長様でさえ
処罰為された」
「始末とは、そういう事じゃ!」

藤堂高久
「某は如何なる?」

柳沢吉保
「始末されますぞ!」

藤堂高久
「あああゥ」
「頼む!」
「許してくれ!」
「頼む・・」

柳沢吉保
「さァ」
「忠清を庇った者どもを
列挙せよ!」

藤堂高久
「ああああァ」
「あのォ」
「儂は、如何すればよいのじゃ?」

柳沢吉保
「これは、上様への手土産じゃ」
「手土産無しに何を頼む?」

藤堂高久
「んんゥ」
「忠清殿は義理の父で御座います」
「儂は、如何すればよいのじゃ?」

柳沢吉保
「では」
「他の手土産が必用じゃな」

藤堂高久
「あああゥ」
「何で御座いましょうか?」



池田 綱政(池田光政の長男)
「遺言とは!何を申される!」
「まだ、まだ、左様な事は、早う御座います」

池田光正(岡山藩池田宗家3代)
「お・」
「綱政・・」
「儂は、其方に謝らねばならん・・」
「儂は、仙台藩3代藩主の伊達綱宗の強制隠居の願い出をした・・」

池田 綱政
「はい」
「それは、酒井忠清殿からの要請で御座る」

池田光正
「んんゥ」
「儂は、上様から酒井忠清との共謀を疑われておる」

池田 綱政
「何と!」
「それは、御座いませんぞ!」
「我らは、万全の対策で疑いを回避しております」
「共謀は言い掛かりに御座る」

池田光正
「上様は、疑り深くなっておるぞ」
「其方は、如何するつもりじゃ!」

池田 綱政
「・・・」
「父上の偉業を引き継ぎたいと思います」

池田光正
「駄目じゃ!」

池田 綱政
「ええェ」
「引き継いでは為りませんか?」

池田光正
「いや」
「其方は、儂の後を引き継ぎ
岡山藩主となれ・・」
「引き継いでは為らんのは
偉業じゃ!」
「偉業に拘るな!」

池田 綱政
「如何なる事で御座る?」

池田光正
「家綱様の時代は、偉業が褒め称えられたが、
綱吉様の時代になり、偉業は逆に危険となったのじゃ!」

池田 綱政
「では」
「某は、如何すれば宜しいので御座いますか?」

池田光正
「愚か者となれ!」

池田 綱政
「うゥ」
「某は武士として生きとう御座る」
「愚か者に為れと申すのですか?」
「父上!」
「それは、惨い事で御座る」

池田光正
「其方には、大変な屈辱となる事は承知の上じゃ」
「しかし」
「綱吉様はお許しには為らん!」
「其方には、岡山藩を守る為に耐えて貰わねばならん」
「儂は偉業を残し名将と呼ばれる対して
其方は、馬鹿者呼ばわりされ罵られる事になる」
「如何じゃ、出来るか?」

池田 綱政
「そ・それが父上の遺言で・・」
「余りにも、惨い事・・」

「お家を守る事は大切ですが
それは逆効果で御座います!」

池田光正
「何でじゃ?」
「申してみよ」

池田 綱政
「伊達騒動の仙台藩3代藩主の伊達綱宗は遊興放蕩三昧で強制隠居」
「そして、越後のお家の取り潰しは、美作の贅沢三昧が原因で御座る」
「某は、父上の遺言が理解出来ません!」

池田光正
「それは、全て表面上の事柄なのじゃ」
「本当の理由ではない」
「儂は、上様から疑われておるのじゃぞ!」
「上様は、忠清を庇った者共を始末せよと命令された」
「我らは、疑われておるのじゃ!」
「其方が生き残る方法は
何も分からぬ愚か者として振る舞う事しか無い」
「許しておくれ」

池田 綱政
「忠清は下馬将軍として絶大な権力を握っておりました
忠清を庇う者は大勢御座ります」
「我らは、大目に見て貰えるのでは・・」

池田光正
「上様は、容赦なく処罰しておるぞ」
「我らが、助かる道は限りなく狭い」
「助かる為には、
自分の才能や個性、また、業績を捨て去り、
他の者から、優越性・能力が評価されては為らん」
「愚か者以外は生き残る事は出来ん」

池田 綱政
「お家存亡の為で御座る」
「某は、父上の遺言に従い
池田宗家を守り抜きたいと思います」

池田光正
「んんゥ」
「これは、父親として申す事では無い」
「これは、池田藩主としての遺言じゃ」
「心して受け止めよ!」

池田 綱政
「はい」
「必ず、お家を守り抜きます」
「其の為には、某が馬鹿となり
他の者に罵りを受けても構いません」

池田光正
「んんゥ」
「儂は、もう直ぐに死ぬ」
「もう、其方に助言は出来ん」
「如何しても耐えられぬ時には水戸守に相談するのじゃ」
「水戸守には儂からお願いをしておる」
「確りと耐えるのじゃぞ」

池田 綱政
「変な事になりました」
「真、変な世の中になり申した」

池田光正
「あッはは・・・」
「よいではないか・・」
「馬鹿になっても、領民を苦しませては為らんぞ」
「儂から、家老に頼んでおるから
全て任せるのじゃ」
「家老にも演技だと思われてはならんぞ」
「上様は、疑い深い
演技はばれるぞ」
「命懸けで馬鹿に徹するのじゃ!」

池田 綱政
「んんゥ」
「しかし、馬鹿以外は生き残れぬ世の中とは
一体何で御座いましょうか?」

池田光正
「一旦、世の中が馬鹿だられになれば
振り戻しが起こる」
「天と地が怒り」
「破壊が起こる」
「そして、時代が代わり」
「世の中は正常に戻る」

池田 綱政
「・・・・」
「それは、指針で御座いますか?」

池田光正
「いや」
「手引きには為らん」
「運命、いや、宿命じゃ!」
「我らが、生まれ変わり
反省する為に必要な試練なのじゃ!」

池田 綱政
「もしも、某が武士道に則る
賢明なる藩主となれば
如何為ると思いますか?」

池田光正
「間違いなく、潰される」
「これより、赤穂を見ておれ!」
「赤穂は疑われてはおらんが
武士道を推し進めておる」
「武闘派として名を馳せておる」
「必ず、上様は赤穂を潰すぞ!」
「二の舞を踏んではならんぞ!」

池田 綱政
「はい」
「赤穂の動きに注目致します」

池田光正
「んんゥ」
「光圀殿を頼れ」

池田 綱政
「はい」

池田光正
「難儀じゃぞ・・・」



(1649年)12月28日に父・光尚が死去したが、六丸こと綱利は6歳と幼かったため、通常であれば細川家は改易されかねないところであった。しかし光尚が、幕府に対して肥後領地返上の遺言をしたためており、徳川家の覚えがめでたかったことと、細川家臣の懸命の奔走もあって、綱利へ相続させるべきか否か幕府内で議論された。結局、慶安3年(1650年)4月18日に綱利への相続が認められたが・・
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柳沢吉保
「肥後国熊本守は小姓の屋敷に下向で御座いますか?」

細川綱利(肥後国熊本藩主)
「いやいや」
「下向などと、左様に申されるな・・」
「上様の加護に授かりたいのじゃ・・」

柳沢吉保
「ほォ」
「左様か」
「では、其方は大老の屋敷に赴く方が良いぞ」

細川綱利
「何を申されますか・・」
「上様の信認は、貴方様に御座います
どうぞ、お見知りおきのほど
宜しくお願い申し上げます」

柳沢吉保
「んんゥ」
「其方は、何故、そう思う?」

細川綱利
「我が肥後国熊本は改易の危機を乗り越えて参りましたから
大勢の行方は承知しております」
「今後、貴方様は幕府の司令塔と為られます」

柳沢吉保
「んんゥ」
「其方の妻は大姫と申したな!」

細川綱利
「はい」
「左様に御座います」

柳沢吉保
「点を付けよ!」

細川綱利
「天で御座いますか?」

柳沢吉保
「いや、天では無い点じゃ」

細川綱利
「はい」
「では、点を付けて犬と致します」

柳沢吉保
「んんゥ」
「其方は、利口じゃな」

細川綱利
「はい」
「良き名前となりました」
「有難く、頂戴致します」

柳沢吉保
「しかし、水戸守が怒らぬか?」

細川綱利
「どうで御座いましょうか?」

柳沢吉保
「其方、水戸守が怒って
改名を拒否したら如何する」

細川綱利
「水戸守が拒否為されましても
有難き命名で御座いますから
犬姫と呼ぶことに致します」

柳沢吉保
「左様か」
「喧嘩するなよ」
「犬姫は光圀殿の妹じゃ」
「目出度いのォ」

細川綱利
「はい」
「有難き、幸せに御座います」

柳沢吉保
「其方は、賢明じゃな」
「上様は、其方のような賢明な家臣を望んでおられる」
「其方は賢く生き残る事が出来る筈じゃ」

細川綱利
「お褒め頂きまして、有り難う御座います」

柳沢吉保
「よしよし」
「其方の事は、
儂が責任を持って面倒を見るぞ」
「しかし、裏切れば如何なるか
分かっておろーな!」

細川綱利
「上様の御加護に預かりし、この身
忠義の道を踏み外す事は御座いません」

柳沢吉保
「よしよし」
「上様には、お主を推挙致そう」

細川綱利
「推挙など、恐れ多き事」
「此の度は、お見知りおきのほどを
お願いに参りました」



朱舜水
「主殿に、お別れの挨拶に参りました」

徳川光圀
「んんゥ」
「左様か」
「何処に参る?」

朱舜水
「黄泉の国へ旅立ちます」

徳川光圀
「山に登り、世捨て人となるか?」

朱舜水
「お戯れを為さいますな・・」
「お別れに際して、ご忠告が御座います」

徳川光圀
「んんゥ」
「何じゃ?」

朱舜水
「今、主殿は大変に危険な状況に御座いますぞ!」
「綱吉様を挑発する事は、御控え下さいませ」

徳川光圀
「んんゥ」
「忠告、痛み入る」
「如何ほどの危険かな?」

朱舜水
「先ず、肥後国熊本藩守(細川綱利)正室のお名前改めを
認める事です」
「肥後守が改易になれば
主殿の強い味方を失います」

徳川光圀
「左様か・・」

朱舜水
「それから・・」
「申し難い事で御座いますが・・・」

徳川光圀
「んんゥ」
「冥途の土産に聞いておこう」

朱舜水
「では」「申し上げます」
「主殿の長子で御座います高松守(松平頼常)を
柳沢吉保に下向させる事で御座います」

徳川光圀
「んんゥ」
「左様に致そう」

朱舜水
「綱吉様は、対抗勢力を一掃して、
最後に主殿を処罰する計画が窺えます」

徳川光圀
「んんゥ」
「承知した」
「それでは、此方も対抗手段を講じねばな」

朱舜水
「はい」
「卑屈、屈服だけでは、
相手の思う壺」
「攻撃は、最大の防御で御座います」

徳川光圀
「しかし、肝心の時に
其方は、おらんようになるのじゃのォ」

朱舜水
「長子様(松平頼常)とは話を付けております
下向は表面上の事
実際は、相手の手の内を探る事が目的で御座います」

徳川光圀
「んんゥ」
「では」
「儂は、頼常を突き放すぞ
頼常は捨てる!」

朱舜水
「はい、英断に御座います」

徳川光圀
「・・・・」



堀田正俊
「大変な、ご迷惑を御掛け致しました」
「お蔭で、大老としての大役を、やり過ごす事が叶いました」

徳川光圀
「んんゥ」
「不満じゃ!」

堀田正俊
「おおォー」
「何か手抜かりが御座いましたか?」

徳川光圀
「んんゥ」
「忠清が死ぬのは想定外じゃった・・」

堀田正俊
「・・・・」
「某は、忠清殿は苦手で御座いました」

徳川光圀
「儂は、忠清の分も一人で背負い込む羽目になった」

堀田正俊
「いえ」
「某には、水戸守に恩が御座います」
「是非、恩返しさせて頂きたい」

徳川光圀
「んんゥ」
「無理をするなよ・・」

堀田正俊
「ところで、大変無礼とは存じますが
水戸守のことで巷の噂が広がっております・・・」

徳川光圀
「左様」
「儂は、媚び諂い卑しきおもねる者として辱めを受けておる」

堀田正俊
「何故、対処為さらぬので御座いますか?」

徳川光圀
「対処は簡単じゃ!」
「ただ、対抗すれば挑発することになる」
「今は、挑発する事は控えておる」

堀田正俊
「しかし、何もせずに放置は・・」

徳川光圀
「左様」
「放置は無策」
「ただ、挑発合戦は疲弊するだけ無駄じゃ・・」

堀田正俊
「んんゥ」
「水戸守の苦難時に恐縮で御座いますが
幕府は混乱の極みと為っております」
「今一度、お知恵を頂けませんか」

徳川光圀
「その混乱の理由は何じゃ?」

堀田正俊
「はい」
「上様が引き籠っておられるので御座る」

徳川光圀
「んんゥ」
「全ての政務は任されておるが
失敗は出来ぬとな・・」

堀田正俊
「上様は、館林家中以外は遠ざけ
引き籠り、何やら変な事を密かにしております」

徳川光圀
「其方は、幕府の中枢じゃぞ
上様が引き籠っておっても
幕府が混乱する事は無い」

堀田正俊
「ああァ」
「いや、左様じゃ・・」
「では、儂が取り仕切っても宜いのでしょうか?」

徳川光圀
「よいぞ!」
「上様が引き籠っておる事を理由にして
政務に混乱をきたすのは
失敗を恐れておるからじゃ!」
「上様の命令で動けば、
安全だという甘えがあるからじゃぞ!」

堀田正俊
「んんゥ」
「しかし、大老には上様の後ろ盾が必用で御座います」
「・・・・」
「水戸守が某の後ろ盾になってはくれんか?」

徳川光圀
「んんゥ」
「それには、今一度の条件がある」

堀田正俊
「最初の条件は
全ての情報を提供する事で御座った」
「今度は、何で御座いますか?」

徳川光圀
「今度の条件は非情じゃぞ!」

堀田正俊
「おおォ」
「何で御座る?」

徳川光圀
「少しづつ、状況に応じて開示する必要がある」
「先ずは、何らかの事件がきっかけになる」
「事件でなければ災害じゃ」
「これからは、暗黒の時代に向かおうとしておる
正義は廃れ、媚び諂いが蔓延して
人心が荒廃する」
「この時代を生き残る事は難儀じゃぞ!」



天和の大火(てんなのたいか)とは、天和2年旧暦12月28日(西暦換算1683年1月25日)に発生した江戸の大火である。28日正午ごろ駒込の大円寺から出火し、翌朝5時ごろまで延焼し続けた
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将軍綱吉
「やなぎさわぁぁぁ」
「儂を抱いてくれぇぇぇ」
「儂は怖いぃぃぃぃ」
「大権現様がお怒りじゃぁぁぁぁ」

柳沢吉保
「上様!」「抱いておりますぞ!」
「何も怖がる事は御座いません」
「上様には天の加護が御座います」

将軍綱吉
「やなぎさわぁぁぁぁ」
「とよとみ秀吉が攻めて来るぞぉぉぉぉ」
「おおおぉ」
「おだ信長が怒っておるぞぉぉぉぉ」
「うううゥ」
「光圀に叱られる・・・」

柳沢吉保
「如何為されましたか?」
「大火は消え」
「放火した八百屋の娘のお七は
鈴ヶ森刑場で火炙りの刑に処しました」

将軍綱吉
「織田秀雄の供養塔が火の元じゃ」

柳沢吉保
「いいえ、火の元は大円寺で御座る」
「ご心配の供養塔には骨は御座いません」

将軍綱吉
「儂は、知っておる」
「織田信雄の長女は
織田秀雄の妹の小姫じゃ」
「信長の怒りじゃ!」
「水戸の怒りじゃ」

柳沢吉保
「いいえ、供養塔など意味は御座いません」
「上様は、天の加護が御座います」

将軍綱吉
「おおおおおぉぉぉぉ」
「点の加護?」

柳沢吉保
「上様!お気を確かに!」

将軍綱吉
「なあ」
「光国の妹に犬姫としたのは
やり過ぎたかな?」

柳沢吉保
「いいえ」
「光圀は大いに恥をかいております」
「恥をかいても、逆らうことは出来ずに
手をこまねいております」
「光圀を恐れては為りません!」

将軍綱吉
「あェ」
「織田秀雄の妹の小姫に点を付けたら
心じゃぞ」
「うェ」
「織田秀雄が光圀に代わって
大火を起こしたのじゃ!」
「点を付け足して心となったのやェ・・・」
「大火は織田秀雄の心根じゃや・・・」

柳沢吉保
「上様!」
「お気を確かに!」

将軍綱吉
「あああああァぁぁ」
「小姫に点を付けては為らんぞ!」

柳沢吉保
「はい」
「付けませんぞ!」
「上様、小姫は九つで亡くなっております」
「怨念は御座いません」

将軍綱吉
「おおおォぉぉぉ」
「思い出した」
「小姫は祖父(徳川秀忠)の正室ではないか!」
「うううぇぇぇぇ」

柳沢吉保
「上様!」
「供養塔には骨は埋まっておりません」
「象徴に御座います」
「心配は不要に御座います」

将軍綱吉
「ええェ」
「しかし、幽霊が留まっておるぞ」
「怨霊が漂っておるぞ」
「怖い・・」

柳沢吉保
「では」
「悪霊を追い払う儀式を行う事で御座る」



堀田正俊
「吉良上野介の高家肝煎を命じる」
「万事抜かりなく致すよう、申し付ける」

吉良上野介
「有難き幸せに御座います」
「今回は、上様の要望も御座いますから
御金蔵からの出費をお願い申し上げます」

堀田正俊
「御蔵金に手を付けては為らん」
「其方を高家肝煎に任命したのは
指南役として指南料を受け取ることを認める事にある」
「指南料を使い対処せよ!」

吉良上野介
「それは、無理で御座います」
「霊元天皇の勅使として江戸に下向予定の
花山院定誠・千種有能の饗応の費用が御座いません」

堀田正俊
「節約致せ」

吉良上野介
「実は、上様が悪霊払いの儀式をすると申しております」

堀田正俊
「んんゥ」
「左様か、では御蔵金は臨時に支給する」
「節約致せよ」

吉良上野介
「実は、上様が赤穂守に御執心で御座いまして・・」
「その、費用も足りません・・」

堀田正俊
「はァ」
「執心じゃと!」
「戯けが!」
「何故、赤穂に資金提供する?」
「やりたければ、其方が自腹を切れ」

吉良上野介
「あああァ」
「しかし、赤穂からも指南料を貰うのですぞ」
「貰った金は、花山院定誠・千種有能の饗応に使うので御座る」
「上様執心に関しても、御蔵金を出して貰わねば
どうにもなりません」

堀田正俊
「んんんんゥ」
「其方の申しておる事はよく分からん?」
「上様が赤穂守に執心すると
何で御蔵金が必用なんじゃ!」

吉良上野介
「あああゥ」
「では、逆に教えて頂きたい」
「上様の期待に応える為には
如何すればよいのじゃ!」

堀田正俊
「それは、其方が考えよ!」

吉良上野介
「あああああァ」
「儂は、如何すればよいのじゃ!」

堀田正俊
「ではな」
「其方が、大切にしておる物を進呈すれば如何じゃ!」
「赤穂守が喜べば上様も納得なされる」

吉良上野介
「おおおおゥ」
「それはよい」
「何が良い?」

堀田正俊
「其方の宝を進呈すればよい」

吉良上野介
「あッ」
「上様が大切にしておる御犬に子が産まれたのじゃ!」
「その子犬を進呈するのは如何じゃ?」

堀田正俊
「犬はいかん!」
「生き物は、貰っても困るぞ!」

吉良上野介
「いやいやいや」
「上様の御執心じゃ」
「赤穂守が困っても構わぬ!」

堀田正俊
「お主は、赤穂に貢ぐのでは無かったのか?」

吉良上野介
「では、幕府の御蔵金を出してくれるか?」

堀田正俊
「はァ」
「兎に角、赤穂の接待は其方の自腹を切れ」
「幕府は、金欠じゃ!」

吉良上野介
「子犬を進呈する」



吉良上野介
「播磨殿には初めての饗応役で御座いましょう」
「指南役は、儂が幕府から承っておる」
「何でも聞くが良いぞ」

浅野内匠頭
「いや」
「初めてでは御座らん」
「某は既に、朝鮮通信使饗応役をしております」

吉良上野介
「・・」むッ
「いやいや、今回は霊元天皇の勅使の饗応役で御座る」
「大変に重要な役目じゃぞ」

浅野内匠頭
「はい、承知しております」

吉良上野介
「・・」ぎッ 生意気な!
「童子は、上様から特別なる愛護を受けておるそうじゃな」

浅野内匠頭
「拙者を童子と呼ぶことは無礼じゃぞ」
「某は浅野内匠頭と申す」
「呼ぶ時は、播磨赤穂守と呼んで頂きたい」

吉良上野介
「おおおォ」
「いやいや、悪意は無いのじゃ」
「まだ、幼き藩主殿じゃから
親しみを込めて、童子と呼んでみた」
「怒るではないぞ」

浅野内匠頭
「我ら赤穂の者を舐めてかかれば
容赦せんぞ!」

吉良上野介
「おおおォ」
「怖い、こわい」
「あまり、気張ってはならんぞ」
「なァ」
「もっと、気楽にすれば宜い」

浅野内匠頭
「んんゥ」
「ところで、我が赤穂の家老(大石良重)が
指南役(吉良上野介)から犬を預かったと申しておる」
「何のつもりじゃ!」

吉良上野介
「いやいや」
「友好の印じゃ」
「良い子犬じゃぞ」
「可愛がってくれ」

浅野内匠頭
「迷惑じゃ!」
「我ら赤穂を舐めたら
只では置かんぞ!」

吉良上野介
「・・・・」喧嘩腰?
「如何したのじゃ?」

浅野内匠頭
「我が赤穂の家老(大石良重)が怒っておるぞ」
「犬を連れて帰れ!」

吉良上野介
「おおォ」
「可愛い子犬じゃから
喜ぶと思うておった」
「残念じゃな・・・」

浅野内匠頭
「分かれば宜い」

吉良上野介
「んんゥ」
「しかし、儂は指南役じゃぞ」
「少しは、儂を立てて欲しい・・」
「分かるか?」

浅野内匠頭
「んんゥ」
「では、指南せよ!」

吉良上野介
「おおおォ」
「ではな、
今回の饗応に掛かる費用を赤穂からも捻出して頂きたい」

浅野内匠頭
「指南料は支払った筈じゃ!」

吉良上野介
「いやいや」
「指南料は指南代金じゃ」
「饗応に掛かる費用は別じゃぞ」

浅野内匠頭
「では、指南代金に相当する仕事をしてみよ!」

吉良上野介
「あのなァ」
「儂は、幕府から高家肝煎を承ったのじゃぞ」
「指南料を取ることを許可されたのじゃぞ!」

浅野内匠頭
「では、幕府から提示されている指南料を開示せよ!」

吉良上野介
「いやいやいや」
「あのなァ」
「提示など無いぞ」
「忖度せよ・・」



土方 雄豊 (伊勢菰野藩の第3代藩主)
「其方、指南役に噛みついたそうじゃな・・」

浅野内匠頭
「噛み付いてはおりません!」
「牽制したまで」
「拙者は犬では御座らん!」

土方 雄豊
「ははァ」
「威勢が良いな・・」
「しかし」
「何故、指南役と喧嘩したのじゃ?」

浅野内匠頭
「あれは、指南料を受け取っておきながら
更に、院使饗応料を催促してきた」
「二重取りじゃ」

土方 雄豊
「おおおォ」
「それで、喧嘩を為さいましたか!」

浅野内匠頭
「いや」
「あの者は、我らの江戸屋敷に犬を預けに来た」
「我ら赤穂藩士を愚弄する意地汚さを感じる」

土方 雄豊
「んんゥ」
「いやいや」
「しかし、指南役と喧嘩は宜しくありませんぞ」
「んんゥ」
「悪い事は言わん」
「和解する事を勧める・・」

浅野内匠頭
「それは、指南役に申せば宜しい」

土方 雄豊
「まぁ宜い・・」
「今時、珍しい気骨有る武将じゃな」
「ある意味、頼もしさも感じる・・」

浅野内匠頭
「これは、我らが赤穂の伝統で御座る」
「我らは、武道に則り不正を正す」
「武士道こそが真理と弁えておる」

土方 雄豊
「んんゥ」
「若いのに
一本筋が通っておるわい!」
「よし」
「指南役など必用ない」
「儂が纏めて面倒を見てやる」
「其方、儂となら協力できるか?」

浅野内匠頭
「某も、意地を張り過ぎた」
「未熟者ゆえ、ご指導賜りたく
お願い申し上げます」

土方 雄豊
「実を言うと、
儂も、あの指南役は嫌いなんじゃ」
「吉良は色々面倒を起こす」
「指南とは言うが
いちゃもんを付けるのが仕事」
「嫌われ者じゃぞ・・」

浅野内匠頭
「無駄な、いちゃもんに
指南料を払う意味は御座いません」

土方 雄豊
「左様」
「ここは、この院使饗応役にお任せ下さい」
「見事、院使饗応を成し遂げてご覧致しますぞ!」

浅野内匠頭
「おおおォ」
「よし」
「其方にならば、任せても宜い」
「赤穂は其方に院使饗応費用を払いますぞ!」
「共に、よりよい院使饗応と致しましょう!」

土方 雄豊
「目的は、院使を接待する事じゃ」
「接待には、必用経費が掛かる」
「何はともあれ、資金力が一番大切なのじゃ」
「指南役のいちゃもんがなければ
接待はやり易いと言うもの」
「我らだけでも院使饗応は十分じゃ」
「指南役は不要じゃ!」

浅野内匠頭
「おおおォ」
「指南役は不要じゃ!」

土方 雄豊
「よし」
「そうと決まれば話は早い」
「早速、資金を集めて準備じゃぞ」

浅野内匠頭
「はい」
「赤穂は、やる時には徹底的に邁進いたしますぞ」

土方 雄豊
「まァ」
「そのように気張らなくても大丈夫じゃ」
「資金の目途が付けば
我らがする事は何も無い」
「指南役のいちゃもんも無いからな・・」
「これは、やり易いぞ」

浅野内匠頭
「では、指南役とは何で御座る?」

土方 雄豊
「そうよなァ?」
「何かな・・・?」
「不要じゃな!」

浅野内匠頭
「吉良は不要で御座る」





吉良上野介
「無事に務めが出来ましたな」
「ご苦労で御座った」

大石良重
「んんゥ」
「何の用じゃ!」

吉良上野介
「いえいえ、お犬は何処で御座いますか?」

大石良重
「おおォ」
「その辺に、おらんか?」
「後で、藩士に確認すればよい」

吉良上野介
「しかしな」
「仮にも、儂は指南役を幕府から承っておる身」
「儂を差し置いて、勝手に為されては困りますぞ」

大石良重
「もう、務めは無事に終了した」
「難癖か?」

吉良上野介
「いえいえいえ」
「今回は、お礼に菓子を持って参上致した」
「つまらぬ物ですが、
どうぞ、召し上がって下され」

大石良重
「いらん!」
「持って帰れ!」

吉良上野介
「いやいやいや」
「遠慮はいらん」
「此処へ、擱いてくぞ」

大石良重
「要らんと申しておるぞ!」

吉良上野介
「処で、お犬は何処じゃ?」

大石良重
「しかしなァ」
「指南役(吉良)は今回の饗応で何をしていた?」
「指南料を受け取ってから
姿を見ておらん?」

吉良上野介
「何を仰せですかな」
「儂を爪はじきにしておいて」
「仮にも、儂は幕府の認可を得て
指南役をしておるのじゃぞ」
「無礼であろう!」

大石良重
「では」
「我ら赤穂と菰野藩主(土方雄豊)との連名で報告書を作成して
幕府に提出する」
「宜しいかな?」

吉良上野介
「あっははは」
「菰野藩主(土方雄豊)は儂と親密じゃぞ」
「赤穂と連名などしない」

大石良重
「実はな、
浅野家と土方家のあいだで縁談話が持ち上がっておるのじゃ」
「今は、色々と忙しい」
「じゃがな」
「両家の危機とあらば
時は惜しまん」
「連名は可能じゃ」
「其方は、職権乱用となる」

吉良上野介
「おおおおォ」
「いやいやいや」
「報告書の提出は指南役の役目じゃぞ」
「其方の言い分は筋が通らぬ・・」

大石良重
「まァ」
「兎に角、今はな忙しいのじゃ」
「実はな、主殿の結婚もある」
「弟君の縁談と、主殿の結婚が重なって目出度きおりじゃ」
「其方も、多少の不満はあろうが
大目に見ては如何じゃ?」

吉良上野介
「処で、お犬は何処で御座る?」

大石良重
「ん?」

吉良上野介
「いやいやいや」
「上様が大切にされていたお犬が子を産んだのじゃ」
「その子犬の事を申しておる・・」

大石良重
「ふン」
「ふざけた事を申すな!」
「おい! 其方は上様から預かった大切な子犬を
他人の屋敷に捨てに来た不忠者じゃぞ!」

吉良上野介
「んんんゥ」
「お犬に何かあれば
如何為るか分かっておるな!」

大石良重
「お犬を粗末に扱えば如何なるか
其方の責任じゃ!」



土方雄豊 (菰野藩主)
「娘と其方の弟・浅野長広殿との縁談は了承して貰えますかな?」

浅野内匠頭
「いえいえ」
「両家に良縁で御座います」
「良き話で御座る」

土方雄豊
「貴方も結婚が決まったそうですな」

浅野内匠頭
「いやいや」
「家老が急いで決めたのじゃ」
「日取りも、数日後になりそうで御座る」

土方雄豊
「家老の大石良重殿が赤穂江戸屋敷に
吉良上野介が通って来ると申しておったが
いちゃもんを付けに来るのかな?」

浅野内匠頭
「毎日来るのじゃ」
「『お犬がおらん』『何処におるのじゃ!』
と申して、毎日騒いでおる」

土方雄豊
「御犬?」
「んんゥ」
「それは、きっと館林藩で飼われていた御犬じゃな」
「上様の御犬じゃ」

浅野内匠頭
「何で御座る?」

土方雄豊
「上様(徳川綱吉)は野良犬を集めて
保護しておるのじゃ」
「館林藩の野良犬は保護されておる」
「江戸には、野良犬が多いが
館林藩から連れて来た犬は御犬と呼ばれておる」

浅野内匠頭
「御犬は貴重なのですか?」

土方雄豊
「貴重なものか!」
「只の野良犬じゃ!」

浅野内匠頭
「左様で・・」
「しかし、御犬が行方不明となると・・」

土方雄豊
「心配無用」
「江戸には野良犬が溢れておる
御犬に似た野良犬を探せばよいのじゃ」

浅野内匠頭
「御犬と野良犬の違いは御座いますか?」

土方雄豊
「んんゥ」
「もしかすると、焼き印が押されておるかもしれん」

浅野内匠頭
「では、似た犬では誤魔化せません」

土方雄豊
「大丈夫じゃ」
「焼き印など後からでも押せる」
「心配は要らん!」
「ただ、吉良が面倒じゃな・・」
「吉良殿は屋敷に犬を探しに来るだけですかな?」

浅野内匠頭
「いえいえ」
「あの者は菓子折りを毎日のように持って参る・・」

土方雄豊
「アッははは」
「それは宜い」
「吉良は、赤穂に好意を持っておるのじゃ!」
「御犬は自らの失策となっては困るから探しておるのじゃ」
「御犬の不明は吉良の罪となる」

浅野内匠頭
「しかし、何故にあの者は御犬を持って来たので御座るか?」

土方雄豊
「赤穂藩に媚びを売るためかな?」

浅野内匠頭
「何故で御座る?」

土方雄豊
「其方が、上様の寵愛を受けておるのかもしれんな・・」
「心当たりは無いか?」

浅野内匠頭
「そういえば」
「朝鮮通信使饗応の際に、備中足守藩主・木下公定も
左様な事を申しておりました」



堀田正俊
「お助け下さい」

徳川光圀
「んんゥ」
「江戸市中の野良犬を保護せよと・・」

堀田正俊
「はい」
「御犬と野良犬の区別を禁じると申されております」

徳川光圀
「江戸市中でも捨て子が溢れておる」
「大名、旗本の地方では、更に酷い状況じゃぞ」
「捨て子を保護することが先決じゃ・・」

堀田正俊
「上様は、引き籠りで状況が分かっておりません」

徳川光圀
「幕府の方針は、大老が決定すればよい」
「引き籠っている上様は、そのまま引き籠らせておけば宜しい」
「其方が、拒否すれば宜い」

堀田正俊
「しかし、上様の命令で御座る!」
「んんゥ」
「助けて下され!」

徳川光圀
「では」
「二つ目の条件を出すぞ」

堀田正俊
「ああァ」
「条件で御座るか?」
「如何なる事で御座る?」

徳川光圀
「これからの条件は非情だと忠告した事を覚えておるか!」

堀田正俊
「あああァ」
「左様であった」
「非情で御座るか?」

徳川光圀
「儂には、先様(徳川家綱)からの戒めがある」
「戒めは、書状として保管されており
上様も承知している」
「戒めに反すれば、今の将軍の地位は正当性を失う」
「最悪として、幕府は転覆する」

堀田正俊
「おおおォ」
「書状を公開為さいますか?」

徳川光圀
「現状では、書状は公開出来ない」
「ただ、其方の力があれば
上様を封じ込める事は可能じゃ」

堀田正俊
「如何すれば宜しいので?」

徳川光圀
「其方が所有する先様の遺言書を無効にするのじゃ!」

堀田正俊
「えええェ」
「如何するじゃ?」

徳川光圀
「其方は、遺言を美濃青野藩主・稲葉正休から
受け取ったと申しておったな」

堀田正俊
「左様で御座る」

徳川光圀
「では、稲葉正休は
先様の遺言を誰から受け取った!」

堀田正俊
「それは、先様だと思いますが・・」

徳川光圀
「先様は、遺言を書状にして残すことを拒否しておった」
「書状に残し、後から悪用されては困ると申された」
「其方の持っている書状は偽物ではないのか?」

堀田正俊
「おッ お待ち下さい」
「水戸守も遺言は本物と申されたではありませんか!」

徳川光圀
「んんゥ」
「左様に申した」
「儂が認めたから、其方は大いに高められ
感謝されて、一挙に大老になれたのじゃ!」



池田 綱政 (備前岡山藩)
「父池田光政より水戸守を頼れとの遺言で御座いました」

徳川光圀
「んんゥ」
「光政殿は亡くなられたか・・」

池田 綱政
「はい」
「静かに・・」
「遺言では、赤穂の二の舞は踏むなとありました」
「赤穂は隣で御座るが
情報が無く、困っております」

徳川光圀
「んんゥ」
「大石良雄が亡くなったそうじゃ」

勅使饗応役のお役目が終わった直後の5月に阿久里と正式に結婚。またこの結婚と前後する5月18日には家老・大石良重(大石良雄の大叔父、また浅野家の親族)が江戸で死去している。大石良重は若くして筆頭家老になった大石良雄の後見人をつとめ、また幼少の藩主浅野長矩を補佐し、2人に代わって赤穂藩政を実質的に執ってきた老臣である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

池田 綱政
「何かありましたか?」

徳川光圀
「毎日のように、指南役の吉良上野介が 
菓子折りを持って機嫌取りをしておったそうじゃ」

池田 綱政
「菓子に・・」

徳川光圀
「詮索無用」
「何も心配は無い」

池田 綱政
「赤穂は、本来池田の領地で御座いましたが
今では、浅野内匠頭が領地に代わり」
「更には、浅野長照は備後国三次藩の第2代藩主。」
「岡山藩は完全に取り囲まれ
幕府からは、酒井忠清との共謀を疑われております」

徳川光圀
「知っておる」

池田 綱政
「お力をお借りしたい」

徳川光圀
「光政殿は如何様に申しておった」

池田 綱政
「はい」
「馬鹿に為れと・・」

徳川光圀
「赤穂の二の舞に為らぬ様に
馬鹿に為れと申したか・・」

池田 綱政
「左様で御座います」

徳川光圀
「其方、柳沢吉保の屋敷に挨拶に参ったか?」

池田 綱政
「いいえ」
「真っ先に、水戸守を頼りにして参りました」

徳川光圀
「馬鹿に為れとは、その事じゃぞ」
「其方は、柳沢吉保に媚びるのじゃ!」

池田 綱政
「えええェ」
「そんな、・・」
「下向せよと申されるので・・」

徳川光圀
「左様」
「武士としての意地は捨てる事じゃ」
「媚び諂い、馬鹿に為るのじゃ!」

池田 綱政
「・・・・・」

徳川光圀
「嫌か・・」
「未だ赤穂が潰されぬのは忠清擁護では無いからだぞ」
「しかし、赤穂は、武士道を貫いておる」
「何れ、何かしらの困難に巻き込まれる」

池田 綱政
「殺生じゃ、武士道は貫きたい・・」

徳川光圀
「耐えるのじゃ!」
 



将軍綱吉
「ガるるるォ」
「柳沢!ガぁ」
「きさまァァーー」
「儂の命令が聞けんのか!!」

柳沢吉保
「おぉぉお許し下さい」
「御犬の保護は無理で御座います」

将軍綱吉
「じゃがまじィー」
「つべこべ言わずやれ!」

柳沢吉保
「お許し下さい」
「我らには、幕府の信頼が御座い・・・」

将軍綱吉
「信頼じゃとォー」
「ガるるるるゥーー」
「儂は、将軍じゃぞ!」
「将軍の命令じゃ!」

柳沢吉保
「光圀が・・」

将軍綱吉
「はァア!」
「また、光圀が邪魔をしておるのか!」
「おい」
「光圀を始末しろ!」

柳沢吉保
「はぁはい」
「始末するとなれば・・」
「重臣の藤井紋太夫が
家綱の書状を預かっている可能性が御座います」

将軍綱吉
「そ奴も一緒に始末じゃ!」
「切れ!」

柳沢吉保
「ああァ」
「他にも、書状を預けておる者がおるやも・・・」

将軍綱吉
「皆、切り捨てよ!」

柳沢吉保
「実は、家綱の遺言が偽物だとばれました・・」

将軍綱吉
「えェ」
「証拠を出して来たの?」

柳沢吉保
「いいえ」
「まだ、大丈夫で御座いますが
光圀を始末すれば、
きっと、我らは逆襲に会います・・」

将軍綱吉
「ンンンンャャ」
「光圀はほっとけ」

柳沢吉保
「では、御犬の保護は?」

将軍綱吉
「将軍の命令じゃぞ!」
「きさまの首を切ってやろうか!」

柳沢吉保
「あッ はい」
「お望みであれば・・」

将軍綱吉
「では、証人を始末せよ!」

柳沢吉保
「はい」
「今、大村加トを探して居ります」
「更には、稲葉正休に圧力を掛けております」

将軍綱吉
「邪魔者は消せ!」

柳沢吉保
「はい」
「仰せの通りに致します」

将軍綱吉
「ああああォ」
「返事はよい!」
「早くやれ!」

柳沢吉保
「御意のとおり
仰せ付かりました」

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