赤穂事件 豪農の卵
この時、本多政利は、出羽国庄内藩主・酒井忠真の預かりの身となっていた。
本多 政利（従五位下出雲守）
「赤穂も儂と同様に、幕府の罠に嵌ったな」
布里 （徳川頼房の8女）
「罠などと申してはなりません」
「幕府への忠誠こそが肝要ですよ」
本多 政利
「赤穂が抵抗すれば
儂も決起する」
布里
「預かりの身で決起もあるまいに」
「情けない」
本多 政利
「そうでもないぞ」
「今、庄内では領地が解放されておる」
布里
「解放？」
本多 政利
「金で領地が買えるのじゃ」
布里
「領地を買うのかえ？」
本多 政利
「いや、奪ってやる」
布里
「今度は、
預かりの身で騒ぎを起こすおつもりか」
「次に騒ぎを起こせば
其方は死罪じゃ」
本多 政利
「いやいや」
「儂は正義の為に立ち上がるのじゃぞ」
「今、庄内の領地は金持ちに奪われておるのじゃ」
「儂は、それを奪い返す」
布里
「左様ですか・・」
本多 政利
「そこで、其方の力を借りたい」
布里
「貴方は、以前にも光圀の力を当てにして
裏切られたことをお忘れか？」
本多 政利
「それは、其方の力不足じゃ」
「今度は、失敗せぬように
もっと、儂に協力してくれ」
布里
「水戸殿は其方を見切っておりますよ」
本多 政利
「頼るのは讃岐守じゃ」
布里
「馬鹿をお言い」
「讃岐守（松平 頼常）は大老の玄関番じゃ」
「其方の敵じゃ」
本多 政利
「いやいや」
「そうではないぞ」
「儂には分かる」
「頼常殿は
玄関番と罵られながらも辛抱して
大老の近辺で情報を集めておるのだ」
「大老に服従している訳ではない」
布里
「今度は、其方、頼常に裏切られる」
本多 政利
「全ては、赤穂次第」
「赤穂が幕府と争えば好機到来となる」
「儂は、領地を奪い決起する」
布里
「貴方は預けられた身の上
酒井忠真様が黙ってはおりませんよ」
本多 政利
「儂が戦う相手は商人じゃ」
「領地を商人から奪い返す」
布里
「無謀な事」
「情けない・・」
