大学4年生の青年が、家族の誰にも決心を打ち明けることなく、卒業旅行と偽って渡仏。その目的は外人部隊に入隊すること。
時は1995年。平成7年の春です。
お父さん、フランス外人部隊に入隊します。
著者:駒村吉重
発行:廣済堂出版
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『お父さん、フランス外人部隊に入隊します』。
ついぞ目にすることのない文字の並びです。
これが自衛隊なら、若干は見聞きし慣れたものになりますが、一足飛びに外人部隊。
なぜ外人部隊への入隊を志したのか。
その理由や、外人部隊でのこと事細かを知ることをこの本に求めるなら、たぶん満足できるものではないと思います。
もともとそういう本ではないのです。
『お父さん、フランス外人部隊に入隊します』ですから。
青年はフランスへ渡り、入隊審査を受ける段になってから、やっと父親に手紙を書きます。
彼の郷里では卒業式の日になっても旅行から戻らない長男を案じ、尋常ではない動揺が走っていたところへ、「外人部隊」という言葉が飛び込んできたわけです。
たった3行の手紙。
お父さん、フランス外人部隊に入隊します。
契約は5年間です。
申し訳ありません、どうしても言えませんでした。
空が落ちてくるような驚きとは、まさにこういう時をいうのでしょう。
想像しようと思っても、にわかにできることではありません。
この手紙から、父と子は十数通の手紙のやりとりをします。
この本では、その流れに沿いながら、フランスと日本に分かれた家族がそれぞれどのように暮らしていたのかを、振り返っていきます。
息子を「刹那主義者」という父。
父を「小市民的」という息子。
勘当されることは覚悟していたという息子。
親であること、子であることは断ち切ることのできない関係だという父。
彼らはその時、何を思っていたのかを知り、それについて思うこと、親子という関係について思うことがこの本を読む意味だろうと思います。
それにしてもすごいですよ。いきなり外人部隊。
行っちゃった者勝ちという感じです。
ひた隠しにしての渡仏。それはそうです。一言でも漏らせば、身動きがとれなくなるのは火をみるより明らか。
でも、それが出来たのは子であることの強みでしょうか。
戦火から遠い日本に生まれ育ちながら、どうしてこの選択があるのか。
それを問い、安全に生きてほしいと願うことを小市民的といわれては、お父さんに立つ瀬はありません。
元気でさえいてくれればいいとは良く聞くことですが、戦地へ赴くことが仕事である職業にあっては、その願いすら危うい。
親御さんとしてはどれほどの心痛だったでしょう。
とにかく命を落とさずに除隊までの5年間を過ごすことができて良かったです。
そもそも入隊することも大変で、入ってからも大変。
なにより、場合によっては、もっと別の出来事の成り行きがあり得たわけです。
いずれにしても、気丈な父子です。
書かれはしていませんでしたが、当然、生きて再会できないことも覚悟のうちでしょうから。
…お母さんも大変だよ…。
息子が旅立った後、庭に桜を植えたというエピソードに、朝な夕な、声には出さなくても話しかけ、祈っていらしたのだろうなとせつなくなりました。
子には子の人生があり、それを選びとることができる。
それは否定されることではありませんけれど、やっぱり、逆縁、それだけはだめだと改めて思います。
余談ですが、このノンフィクションに先だって、同じご家族を取材したNHKの番組が制作されていたのだとか。
アプローチが違うのだろうと思うと、そちらも観てみたくなりました。
某みさわ氏がきしさんの書評を拝見して、この本を読んだそうですよ。
ブログのコメ欄書き込みしない主義なのだそうで、かわりにお伝えしにきました。
某氏のレビューはこちら
http://naoki-misawa.hateblo.jp/entry/2013/08/02/004957
私は最近なかなか本を読むまとまった時間がとれないので、ツイッターをはじめて、細切れ時間でダダ漏れ会話にいそしんでいます。。。。
https://twitter.com/kamometuusin
あ、かもめさん、ツイッターを?きっとたのしいところになっているんでしょうね。みにいっちゃお。