「2」というからには、もちろん「1」もある。
絵画の隠れた怖さを読みとるという本。
「1」を差し置いて、「2」を選んだのは表紙が既に怖いから。
いったい、この男は何者か。
怖い絵 2
著者:中野京子
発行:朝日出版社
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この人は、ブリュージュの商人アルノルフィニ氏。
なんと、これはアルノルフィニ氏の婚礼を描いた絵画『アルノルフィニ夫妻の肖像』での表情なのだ。
さまざまな象徴が書き込まれた作品で、読み解く楽しさ(読んでいるほうとしては他力本願な読み解いてもらう楽しさ)もひとしお。
だが、夫妻の脱ぎ捨てたサンダル(サンダルを脱ぐことでそこが聖なる場所、婚礼の場所であることの意味になるのだそうだ。)の形が、アルノルフィニ氏のものはつま先同士がくっついた形に、アルノルフィニ夫人のものはかかと同士がくっついた形になっていることの意味は未だ謎なのだとか。
私はまた単純にAとVだと思ってしまった。
稲垣足穂の『A感覚とV感覚』の「V」。(時代も全然違うのに。)
まあ、そうなると、アルノルフィニ氏のほうは足穂のいう「A」ではなく、単に逆さまの「V」になるだろうけれど。
「A」だったら、この時代、大問題なのではなかろうか。
…私の発想も単純であからさまだな。底が浅いというか。
本当はどういう象徴なのだろう。
ちなみに『アルノルフィニ氏の婚礼』はwikiで観ることができる。→こちら。
夫人のサンダルは正面奥、氏のサンダルは左側にある。
画像検索の途中で見つけた「手品師とクジラ」というサイトの記事も面白かった。それはこちら。
こういう本を読んだ時だけに、タイムリーといえばタイムリーな内容。私は勉強のために読んでいるわけではないけれども。
収録されているのは全部で20作品。がんばって書いてみる。
レンブランド『テュルプ博士の解剖学実習』。
ピカソ『泣く女』。(ピカソがものすごくひどい男に思える。)
ルーベンス『パリスの審判』。
エッシャー『相対性』。
カレーニョ・デ・ミランダ『カルロス二世』。
ベラスケス『ラス・メニーナス』。
ハント『シャロットの乙女』。(出てくるたび思うがランスロットは本当に人騒がせな男だ。)
フォンテーヌブロー派の逸名画家『ガブリエル・デストレとその妹』。
ベックソン『死の島』。
ジェラール『レカミエ夫人の肖像』。
ボッティチェリ『ホロフェルネスの遺体発見』。
ブレイク『巨大なレッド・ドラゴンと日をまとう女』。
カルパッチョ『聖ゲオルギウスと竜』。
ミレー『晩鐘』。(ダリの説がおもしろい。)
ドラローシュ『レディ・ジェーン・グレイの処刑』。
ホガース『精神病院にて』。
ブリューゲル『ベツレヘムの嬰児虐待』。(これはいろいろな意味で怖い。)
ヴェロッキオ『キリストの洗礼』。
ビアズリー『サロメ』。
ファン・エイク『アルノルフィニ夫妻の肖像』。
この本には南伸坊さんの文章が帯としてついている。
まさにそのとおりの本。
『これを知ってから見れば
絵は、いままでと違う見え方をするし、
面白がり方ができる。』
次は「1」だ。
表紙はジョルジュ・ド・ラ・トゥールの『いかさま師』。
目が怖いから、ダイヤのAのほうか。
怖い絵
著者:中野京子
発行:朝日出版社
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言われないと全然気づかないのに・・南伸坊のおっしゃるとおりですわ。
この本のいう怖さって、時代や作者の背景について知らないと(知ろうとしないと)わからないものだよね。みただけで、怖いのもあるけれど。