ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

大竹伸朗【ネオンと絵具箱】

2013-02-03 | 筑摩書房
 
たぶん、わかりすぎるものも、わからなすぎるものも、おもしろいとは思えなくて、その間にあるものがその人の興味をひくのだ。
と、そんな気持ちになるエッセイ集。

【ネオンと絵具箱】clickでAmazonへ。
 ネオンと絵具箱

 著者:大竹 伸朗
 発行:筑摩書房
 Amazonで詳細をみる


『美術家。1955年東京生まれ。80年代初頭より国内外で作品発表を開始。2006年、「大竹伸朗 全景1955―2000」展(東京都現代美術館)。2010年、第8回光州ビエンナーレに参加。』というのが、本を見返したところにある著者・大竹伸朗さんのプロフィールです。
エッセイは他にも著書があります。例えば、『既にそこにあるもの』、『見えない音、聴こえない絵』など。

馴染みのある方かと問われれば、いいえと答えるしかありません。
作品にも漠然としたイメージでしか思い浮かびませんし。
ただ、そういう気分だったんです。
エッセイが読みたいなぁ、切れ切れに読んでいっても全然平気なような。
まさにそういう本でした。

著者の感性にひっかかる物事についてが語られていきます。
作品について。
創作することへの情熱。
出会った不思議な風景、心に残る人々。
著者の創作の原点となった記憶や、心ひかれる音楽や作品のこと。
もちろん、日々のことも。

うーん、これは一筋縄ではいかないお方、というか、非常に自由に思える雰囲気は憧れの対象ともなりそうです。
作品自体がそうかも。
銭湯を作品化するとかね。
そして、その銭湯はその後、地元で皆さんに使われているのだとか。もちろん銭湯として。
油彩あり、コラージュあり、造形物ありと作るものもさまざま。
スクラップブックも作品です。
そうだよねぇ。その人の感性で創るものはすべて作品なのですよね。
創りつづけることができるか。
自分の道を進み続けることができるか。
そこが難しいだけで。
そうあるためには、ある程度の「成功」というものが必要であるわけです。
そういった紆余曲折も垣間見えるエピソードも含まれるこのエッセイ集は、著者の世界に対しての不思議な立ち位置、価値観を楽しむことのできるものでした。
その感覚、わかる、わからない、それを行ったり来たりしながらの340ページ。
2006年発行の単行本『ネオンと絵具箱』が第1章、他の第2章、第3章は文庫で初収録だそうです。
第3章の連載は日本産経新聞。
へぇ…。
落語と絵との共通点を思う「与太郎の墨絵」などがありました。
いや、だからどうということはないんだけど。


 

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『LOOPER』を観てきました。 | トップ | ディック・フランシス【大穴】 »

コメントを投稿

筑摩書房」カテゴリの最新記事