たぶん、わかりすぎるものも、わからなすぎるものも、おもしろいとは思えなくて、その間にあるものがその人の興味をひくのだ。
と、そんな気持ちになるエッセイ集。
ネオンと絵具箱
著者:大竹 伸朗
発行:筑摩書房
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『美術家。1955年東京生まれ。80年代初頭より国内外で作品発表を開始。2006年、「大竹伸朗 全景1955―2000」展(東京都現代美術館)。2010年、第8回光州ビエンナーレに参加。』というのが、本を見返したところにある著者・大竹伸朗さんのプロフィールです。
エッセイは他にも著書があります。例えば、『既にそこにあるもの』、『見えない音、聴こえない絵』など。
馴染みのある方かと問われれば、いいえと答えるしかありません。
作品にも漠然としたイメージでしか思い浮かびませんし。
ただ、そういう気分だったんです。
エッセイが読みたいなぁ、切れ切れに読んでいっても全然平気なような。
まさにそういう本でした。
著者の感性にひっかかる物事についてが語られていきます。
作品について。
創作することへの情熱。
出会った不思議な風景、心に残る人々。
著者の創作の原点となった記憶や、心ひかれる音楽や作品のこと。
もちろん、日々のことも。
うーん、これは一筋縄ではいかないお方、というか、非常に自由に思える雰囲気は憧れの対象ともなりそうです。
作品自体がそうかも。
銭湯を作品化するとかね。
そして、その銭湯はその後、地元で皆さんに使われているのだとか。もちろん銭湯として。
油彩あり、コラージュあり、造形物ありと作るものもさまざま。
スクラップブックも作品です。
そうだよねぇ。その人の感性で創るものはすべて作品なのですよね。
創りつづけることができるか。
自分の道を進み続けることができるか。
そこが難しいだけで。
そうあるためには、ある程度の「成功」というものが必要であるわけです。
そういった紆余曲折も垣間見えるエピソードも含まれるこのエッセイ集は、著者の世界に対しての不思議な立ち位置、価値観を楽しむことのできるものでした。
その感覚、わかる、わからない、それを行ったり来たりしながらの340ページ。
2006年発行の単行本『ネオンと絵具箱』が第1章、他の第2章、第3章は文庫で初収録だそうです。
第3章の連載は日本産経新聞。
へぇ…。
落語と絵との共通点を思う「与太郎の墨絵」などがありました。
いや、だからどうということはないんだけど。
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