ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

山白朝子【エムブリヲ奇譚】

2012-07-31 | and others
 
えーと。表紙カバーにつられまして…。
これって、劇団☆新感線『SHIROH』のポスターの方の作品かな、と。

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 エムブリヲ奇譚

 著者:山白朝子
 発行:メディアファクトリー
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ちょっと見、とてもきれいで、よく見ると、ものすごく気味の悪くて、さらによく見ると、やっぱりきれい、かなぁという感じです。
作品もそんな雰囲気。

時は庶民がやっと物見遊山をするようになった頃のこと、版元の依頼を受け、旅をして本を書く男がいました。
和泉蝋庵。
荷物持ちの同行者をひとり連れ、名湯、秘湯の噂を訪ねて、街道を行きます。
ところが、迷子の達人・蝋庵が行く道は、たとえ一本道であっても、いつしか目的地とは違う場所へとつながってしまい…という連作短編集。

『エムブリヲ奇譚』。
『ラピスラズリ幻想』。
『湯煙事変』。
『〆』。
『あるはずのない橋』。
『顔なし峠』。
『地獄』。
『櫛を拾ってはならぬ』
『「さあ、行こう」と少年が言った』。

語り手となるのは、いずれも蝋庵の同行者たち。
事の発端が蝋庵の方向音痴ということもあって、あー、またですかい?という感じにあっさりと始まりますが、よく考えると、ものすごく気持ち悪い状況です。
たとえば、人の顔のように見える魚の干物、とか。
具体的にきっちり想像できているわけではないのですが、なんだか、胃袋のあたりから何かせりあがってくるような気持ち悪さがあります。
そのくせ、作品それぞれも、1冊の短編集としても、終わり方は妙にさわやかだったりするのですよ。
人間って、ほら、こんなにひどいのよ、ね、ひどいでしょ、でも、そのくせ、ちょっとはわるくないところもあるにはあるのよねー、と、そんな感じで。

でも、さわやかな終わりといってもねぇ。
ちょっと、私にとっては気持ち悪いのが過ぎたかも。
ちょうど、イヤだなーと思うあたりを狙ったようにきたもので、なんだかあとから、思い出して気持ち悪くなってしまいました。
最後のお話『「さあ、行こう」と少年が言った』、そのタイトルの印象どおりのさわやかさで、かなり後味改善に貢献してるのに、それでも。

ちなみにこの方の別のペンネームは乙一さんだそうです。


[読了:2012-07]






参加しています。地味に…。
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