懐かしい気分にさせてくれた1作。
以前コメントでおススメいただいた本です。
がんばる女の子の物語は大好きです。
『歌う船』シリーズの第2作。
1作目から読みたいところですが、続き物ではないのでよいことにして。
さくさくと読み進め、ああ、楽しかったとそういう感じです。
![]() | 旅立つ船 (歌う船」シリーズ) 著者:アン マキャフリー&マーセデス ラッキー(Anne McCaffrey&Mercedes Lackey) 訳者:赤尾 秀子 発行:東京創元社 このアイテムの詳細を見る |
ヒュパティアは原因不明の病のために動くことができなくなった女の子。
彼女は殻人、シェルパーソンになることになります。
人間の脳を核にして、機械の体を纏った人たち。
彼女は宇宙船に生まれ変わります。
それは体の自由を否応なしに奪われた彼女の人生に希望を与えることに。
この幸運は彼女自身が呼び寄せたものです。
彼女の精神の強さが周囲の人たちを魅了した結果。
チャンスをものにした彼女はいよいよ宇宙へ出ることになりますが、殻人にはパートナーとなる『筋肉』、ブローンと呼ばれる非殻人が必要です。
彼女とともに宇宙での任務にあたる大切な存在。
彼女はアレックスというパートナーを得て、宇宙へ出て行きます。
自分の病の原因を突き止めたいという願いを胸に秘めて。
アレックスとのコンビで事件を解決していくヒュパティア。
次第に2人は惹かれあっていくようになります。
当たり前といえば当たり前。もともと気の合う人をパートナーとして選んでいるわけですから。
とはいえ、彼女は殻人。
触れ合う掌さえなく、しかも『筋肉』と『殻人』の恋はご法度なのです。
常識的な範囲での恋愛感情ですら、かなりつらいものがあることは想像に難くない。
もし不幸な形での感情のすれ違いがあった場合、宇宙船である殻人は筋肉を監禁しているも同然。
逆に筋肉は心中覚悟で船の中枢を破壊してしまえるわけですから。
それならば、禁じましょう。さもありなん、です。
さて、ごく健やかな感情で彼を想う彼女はどうするか。
前向きな彼女の脱帽です。
老化する体を持たない彼女の寿命はどれくらいなのでしょう。
宇宙を旅することができる体を得たことでおそらく彼女は非殻人より長命なのではないかと思います。
愛する人たちの死に数多く直面していかなければならなくなるのだろうと思うと切なくなります。
他の『船』のシリーズを読んでみると、生まれながらの殻人と彼女と考え方がずれているところが見えてきて面白かったりします。
殻人によっては、ブレインとの恋愛は初めからありえないと思っているし、寿命のことも、そんな長さが違うのが当たり前だと思っているふしもある。
一方、彼女は他の殻人とは違い、動ける人間としての生活を送ってから殻人になった、唯一のもの・・・
恋に悩んでしまうヒュパティア・・・いかにも、途中から殻人になった彼女ならではの話で、面白かったです。
koharuさんのおっしゃる、ヒュパティアのずれを楽しみにして。
最後の打開方法なんて、生まれながらの殻人には思いつかなそうですものね。