Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

ソフィー・マルソー 『うそをつく女』

2005-04-29 | rayonnage...hondana
先日、あるきっかけから手に入った本です。
ソフィー・マルソーの半生自伝。
とても興味深く、のめりこんで読んでしまいました。

どこが魅力なのかというと・・・
感じたことを文章にする、ということの難しさを、かなりのレベルでクリアしていると思うからです。
「思うこと」、つまり観念を文章にするのは、世の中にすでにある言い回しに助けられることがけっこう多く、”ほんとうにオリジナルなものなどない”、と多くの偉大なクリエイターたちが言うとおりだと思います。
でも、「感じたこと」、この曖昧模糊としたものをそのまま伝えるというのは、お手本があるような、ないような。
自分でも掴み切れないような感情を表すのって、たいへんじゃないでしょうか?

これは翻訳版なので、もちろん、いろんな内容やニュアンスが多かれ少なかれ、原型からは離れていると思いますが、ぽつ・ぽつ・とした、断片的な文章の全体的な姿からは、この「形になかなか表せない」ことのもどかしさ、そのものが浮き上がってくるような印象があり、こちらに直截的に訴えかけてきます。

言葉を尽くして多くを書けば、その分想いが伝わる、というものでもない。
かえって、多過ぎる言葉は、本質から離れていってしまう危険もあったりします。
言葉の海に、自ら溺れてしまう・・・。
そこを、ぎりぎりのところで、節度ある踏みとどまり方をしている本書だと思いました。

ソフィー・マルソーといえば、映画女優ではあるけれど、映画好きな友達からは「きまってつまらない作品ばかり」とばっさり斬られ、まあ実際、本人にしてからが、
「2作に1作は駄作」
と認めているくらいだけれど、わたしは、”肉体で語る”ことのできる、存在そのものが知的な人だと思っていて、映画の出来・不出来に関わらず、スクリーン上の彼女を見るのは大好き。
単に美しいだけでなく、奔放なしぐさの中にも、抑えきれない程の情熱や、慎ましさ、迷い、など、人生と直面した人の内面が感じられる。
こういう人を、女優、というのね。。という感動を、彼女をみて感じるのが大好きです。
その魅力ゆえに、多くの人が、彼女の動向から目が離せないのではないでしょうか?
良い映画はもちろん大好きだけど、存在感あふれる人間を味わうのも、映画の楽しみの一つですよね

本の話に戻って。
タイトルが、『うそをつく女 Manteuse』となってはいるけれど、本書の中の彼女は、つまらないうそ(つまり自分につくうそ)からはもっとも遠い率直な人柄を感じさせます。
過度な化粧や装飾を嫌い、あらゆる気取りや取り繕いを嫌う。
率直であることは、時に、傷を負い・負わせることでもある。
自分にうそをつかない、その彼女のひりひりした本音が感じ取れる表現たちです。
女の本性を、自分も女であるゆえに見てしまったおぞましい体験のこと、愛する人との頭がふわふわするような出会いのこと、世の中に迎合している、と信じている人たちの欺瞞。
冷静な視点が、ずしんとした説得力を持ってそこに存在します。

彼女の、雄弁な身体は、繊細で感性に満ちた内面あってのもの。
それが良く解る、魅力的な一冊です。

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2 コメント

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はじめまして (hallick)
2005-05-13 13:47:12
>めざせ、美人道♪



どういう方法だろうと読んでみましたら、納得です。

内面からの美しさこと、ほんとの美人ですものね。
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hallickさま (mi)
2005-05-16 20:08:08
はじめまして。

ありがとうございます!

近道がない道ですが、寄り道も楽しかったり。

しかしそれにしても、内面の充実って、実感が伴いませんよね。。とっても難しいなあ、と、日々毎に思うのです。

しかし、ゆえに登りたい道ですよね
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