Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

うまくいかない時、こそ。 『とまどい』

2004-12-31 | cinema... eiga
がんばっているのに、どうにも物事がうまくいかなくって、ため息出そうになる時期って、ありませんか?
こんなに一所懸命、誠実に生きているのに、なんで・・・と思ってしまうような。
この作品はまさに、そんな女性のある日々。
一例を挙げても、
≪わずか1時間半の映画の中で、3人もの男性との別れを経験する≫
なんて、なかなかないですよー・・・

別れといっても、恋の別ればかりじゃないのですけれどね。

が、うまくいろんなことが回っている時期に、バランスを保つなんて、たやすいことです。
人間の本領発揮の時期は、足を踏ん張って、懸命に立とうとしている時、だと思います。
浮かない顔も、憂いという神秘的なヴェールとして、魅力的なアクセサリーに出来たら、上等です。
そんなひとになりたい


失業中の夫を支えるため、パートの掛け持ちで苦しい生活を繋ぐネリー。
が、年上の女友達から偶然に引き合わされた隠居中の老紳士、アルノー氏が、彼女に資金援助を申し出る。
彼の自伝を活字にする手伝いをする、ということで、その申し出に応じるネリー。
それを機に、思い切って、夫と別れて一人で住み始める。
心に様々な過去と後悔を抱える老アルノー氏、現在を必死に生きていこうとする若いネリー。
恋ではない、男女としてでも、師弟でもない、上下関係もない、ただの人間同士として、二人の関係は不思議なつながりを持って始まった。
やがて、アルノー氏を通じてネリーが知り合ったのは、魅力的な編集者、ヴァンサン。
昔の男友達とも穏やかな再会。単調にみえながら、ネリーの生活は、少しずついろんな色を加えていく。


・・・ストーリーを語るの、簡単じゃないですね、この映画。
大きな事件もないけれど、確実に、微妙なニュアンスで、人々の心の色が変わっていく、繊細な作品です。
何年にも渡って、何度も見ても飽きないのは、たぶん、観る側のその都度の心の状態も映し出す作品だから。

自分には、譲れないことがある。
その思いが、ときに悲しみを呼ぶ結果になったとしても、自分の芯が命じたことだから、後悔だけは絶対にしないですむ。
流されたりしないで、信じたことだけを行っていった結果が、確実に未来につながる。
そう確かに予感させる何かが、この映画にはあります。
エマニュエル・ベアールの、冬の青空のようにくっきりと清々しい表情が、一人ですっくと立つことのかっこよさを教えてくれます。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。