Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

ためないようにする

2004-10-31 | beaute... bi zenpan
友達が、その友達の看護士さんに聞いた話。
老人介護病院に入院したときは、とても知的な雰囲気の学者であり、インテリ一家の長だった、あるおじいちゃん。
痴呆が始まってから、にわかに、家族の目を盗んで(!)、看護士さんへのセクハラが始まったそうです。
困った看護士の女性が、とうとう家族に、エスカレートしていくそれを告知したとき、
「死に至る病気を告知するより、セクハラ告知の方が、はるかに家族の衝撃は大きかった」
そうで、家族の中には、それ以降お見舞いに来れなくなってしまった人もいるとか。
それまでそんなキャラじゃなかった人だと、ギャップの大きさに、周囲のショックもひとしおです。。

実際のところ、歳をとって、頭が幼児に返り始めると、それまで出てこなかった一面があらわになってしまうという恐ろしい話はよくあります。
学者肌の人(いわゆる左脳型?)のほうが、芸術家肌(右脳型)の人より、痴呆になる率が高いといわれていますが、また、
「考えて行動する」タイプの方が、いったんその機能のたがが外れた時の変化が大きいようです。

自分の本来の欲求を抑えて、
「全体のバランスを考えると、こうしたほうがいいな・・・」
あるいは、
「自分はこういうキャラだと自他共に認知されているから、そこから外れたところ(弱さとか)は、見せにくいな・・・」
という思考の流れは、ある程度、表面上の関係をスムーズにしますが、意識しないところで、そのひずみが、自分の中に、徐々にたまっていくものかもしれません。

そんなふうに"押さえつける"のが日常になると、それに慣れてしまって、どこがどう辛いのか、自分でもだんだん解らなくなって来てしまうのではないでしょうか。
そして、ちょっとしたことでフイにがくっと落ち込んだり、そしてそれを人には言えないために、苦しみが深くなってしまったり。
または、前述のおじいちゃんのように、理性が効かなくなってから、隠していた欲望を抑えられず、とんでもない行動に出てしまったり。

いやなこととか、したいことを押さえつけていても、
人からは見えなくても、自分の目はあざむけません。
最近、「からだの毒素を排出する」食品・飲料の注目は高まっていて、皆大いに活用しているけれど、
より大事だと思われる、「こころの堆積物をすっきりさせる」ものには、やはり繊細な問題だからでしょう、
なかなかお目にかかれません。
近くて、「癒し」系なのでしょうか。。
でも「癒し」は、気持ちをなだめ、ほどくものだけれど、あくまで「何か」によって与えられるものであり、
鬱積した何かを直接解放するものではないように感じます。

そう、「癒し」には、「何かに頼る」ようなイメージがついて来てしまうのですが、
いきなり何かに頼るのは、本質的な解決にならないと思います。
自発的に溜めてしまった、「こころの堆積物」には、何より、自発的に「流し出す」ことが必要な気がします。
まあしかし、極端な話、「人を殺したい」とか、物騒なことは、実現しちゃまずいので、
そんな内容の堆積物がある場合は、自己診断せず、専門家に診てもらうのも、有効な手だと思います。

「体の毒素」に近づけて考えるに、あまりに自浄機能が弱ってしまったら、自分ひとりの気持ちではどうにもならないこともあります。
だから私たちは、薬など、やはり何かの力を踏み台にして、体を正常に戻そうとしています。
こころの問題も、それとまったく同じように、もっと当たり前のこととして考えられていいのではないかと、最近思い始めるようになりました。
欧米のように、心療内科がもっと一般的になるとか。
でも、行き過ぎて、今度は「病院中毒」になってしまっては問題なので、やっぱり甘えないで、基本的には自分で何とかする姿勢って、大事だと思うのですが。
ここらへんて、難しいですよね。

私も、最近、急に元気が出ないことがあって、それを自分でもなかなか気付かないでいて、「なんかヘン」がじわじわ続いてしまったのですが、そうして溜まっていったものを、あるとき流し出したことで、一気に気分がすっとしたことがあり、力をくれた友達に感謝しました。

一時期、『シュールレアリズム』運動に関心があって、「人間の無意識下を表現する」という一連の実験に「へえー」と興味津々だったのですが、
人のこころって、本人が思っているより、ずっと深くて未知のものが多いのかもしれない、とその頃から漠然と思っています。
高名な学者や芸術家が、こぞって熱を入れた、この研究においても、「ひとのこころ」への謎は深まるばかりだったのですから、「ちょっとしたストレス」をなおざりにせず、普段から自分をケアしていったほうがいいなあ。。と思います。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。