Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

今宮神社のあぶり餅

2009-02-28 | Kyoto sneakers since 2008
わたしにとって最初の京都は、片岡義男さんの小説のなかにありました。
それらの本が書かれた当時は、まだ新幹線に「のぞみ」なんてなかった様子。主人公は、多忙な日常をふっと脱出して、「ひかり」で東京から京都に向かうのです。

平日の夕方、新幹線の席はすいていて静かで、主人公--たいてい、自立/自律している27歳から50歳くらいまでの美しい女性--は、車内のワゴン販売で買う熱いコーヒーの紙コップを手に持ち、窓の外をひとり静かに見つめて、あっという間に場所を移動していく「どこにもとどまらず、どこにも属していない」不思議な非日常空間を、周囲の一切から隔離された自分だけの内的空間と同調させ、密やかに楽しむ。
誰かに話しかけられても、きれいに無視したりします。

動と静がlifeのメリハリならば、その「静」の部分だけが抽象的に抜き出されている、そんな描写が気に入っていました。
快適に静かなのに、凄いスピードで空間と時間を移動する・・・、新幹線という乗り物の持つこの不思議さにも、ついでに憧れたものでした。
効果的に「独り」を楽しめる場所として、新幹線の魅力は現在もやはり健在だと思います。



着いた先、京都も、過去と未来が交錯する、時間を超えた空間として舞台効果を発揮する。出てくる地名と通りの名前とお店の名前に、懐かしいような異国情緒のようなものを感じていました。
文字からあれこれを想像し、子供心に、
「京都というのは内省を促してくれる、大人が一人を味わえる街なんだろう」
くらいをぼんやりと感じてもいました。
修学旅行がない学校だったので訪れるきっかけもなく、大人になったら行くんだと決めていました。



実際大人になってから数回訪れてみたものの、まさかその後京都に住むことになるとは思っていなかった。



ところが、【子供の頃に確認したかったこと】が近くに山盛りあるというのに、いざ住んでみると意外と「すぐ着手」という気にならずにいて、もう半年経ってしまいました。
引っ越した当時は残暑が烈しすぎたのと環境の変化がたたってダウンしていた、
秋は用事に追わればたついていた、
冬は寒すぎた。・・・
京都が内省をもたらすのは確かなようですが、それはこの過酷な寒暖差も確実に影響しているような。
自然をもろに味わえるここは、けっこう刺激的なのです。精神にも、肉体にも。
夏冬は特に、生物として生きていくこと自体に気合が必要でもあります。

いま、春が近づいてきて、ようやく京都探索の始まりを迎えました。
「意味なく毎日1時間くらい歩くといいよ」
と夫に勧められたのもあり、毎日意味なく歩き出しています。
太陽と同じ時間帯がベスト。心身にとても良い影響があります。


そして先日の行き先が、今宮神社です。北野天満宮に着く前に、立ち寄りました。













ここも片岡義男さんのエッセイで読んだことがあって、とても行きたかった場所です。
「おやつの時間になり、僕たちは今宮神社のかざりやさんであぶり餅という最高のおやつを食べた」
というくだりをやたら印象深く覚えていた自分。
「あぶり餅」・・・
片岡さんが書くとなんでも美味しそうに思えるのですが、ことに、この美味しそうな名前には格別の吸引力があった。
神社は、散策に気持ちの良いところ。
しかし神社そのものでなく、その隣の茶店を“おやつの場”として目的地にし、軽やかに気持ち良く利用してしまう「あれあれ、そっちなの?」な感じが、また気に入っていました。それでわたしも便乗です。



あぶり餅自体は、そういいながらも実は既によそで見たことがあったのですが、
「食べるなら今宮神社のかざりやさんでにしよう」
と決めていて。。
子供時代の夢がようやくひとつ、結ばれました。




念願かなったあぶり餅。

味は・・・、まあ見たままです。
が、この一瞬、あぶり餅によって過去の自分と現在の自分が一本の線ですっと繋がれて、新鮮な気持ちを味わいました。
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2 コメント

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夢がかなって・・ (TAKAKO)
2009-03-03 01:48:23
北野天満宮はたしか学問神様でしたよね?
たしか記憶が正しければ高校受験の時に
家族で祈願行ったのはいいんだけどおみくじで
‘小吉’で不安で泣いて大吉だった弟と交換して
絵馬を書いた思い出があります。昔からバカです。

あぶり餅とてもおいしそうです!
京都の街はmiさんによく似合う。
姿たたずまいだけじゃなく感性も。
出身地といっても信じてしまいそうですよ。


いずれは着物をさらっと着こなし街を闊歩していそう・・
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huhu (TAKAKOさま(mi))
2009-03-04 09:31:21
弟さんいい人ですね!交換してくれるなんて・・・。そんなかわいいお姉さんいたら、無理もないかも!

そう学問の神様ですよね。この日もたくさんの制服さんがバスで乗り付けて押し寄せてました。今宮神社のあの静まり返った様子とは大違いの北野天満宮。。人間って現金だなあって感じですね。

こっちの暮らしは・・・、
きものどころか、フリースとスニーカーでわっしわっし歩いていますよおお。
でも!そのおかげで、足の指が、タコ(節が硬くなっていた)消えてきれいになってきました。ヒール履きすぎていた人生を反省するこのごろです☆

あぶり餅は、きなこつけて炙ってから甘味噌といたやつをたらっとかけてくれました。香ばしかったです。
京都の人いわく、だいぶ昔と比べて進化したらしいです!
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