Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

『悪童日記』

2019-11-22 | rayonnage...hondana
好きとか嫌いを超えて心を揺さぶり
読了後にはもうそれまでの自分ではいられない、、
そんな作品の一つです。
アゴタ クリストフ『悪童日記』。

読書家の友達が、時折
「これはぜひ読んでほしい」
と渡してくれる本があり、その一冊です。そういう時は、もう間違いない名作。
戦争物、、親子別離、、と聞いただけで泣けてくる。反射的に「読みたくない」という気分になるのですが、
そんなわたしが一旦ページを開いたら最後ぐんぐん引き込まれ、あっという間に読了。
しかも、何度となく読み返してしまう。
翻訳もいいし、多分、原文がすごくシンプルで本質的で良いのだと思う。経験からいっても、多言語を操る人間が書く文章は、大抵とても読みやすく、ずばり核心を突いてくることが多いです。


映画にもなっています。
『悪童日記』予告編はこちら

戦争中に疎開のため、両親と離れて、疎遠だった初対面の祖母といきなり暮らし始めるしかなかった双子の男子。優しい上品な「おかあさん」と全く対極に位置するキャラクターの、「おばあちゃん」。
風呂なし電気なしの家の描写が冒頭から強烈です。
彼らはここで自給自足の生活に入り、飢え、暴力、権力の横行、といった極限状態にさらされていく。
教会の存在は身近にあるけれど、神の言葉は虚しく空を彷徨う。
彼らが書き残す日記を、読者であるわれわれは読むわけですが、ここには感情は書かれず、ひたすら客観的事実だけが記される約束になっている。


あとがきにありましたが、あえて、いつの何戦争かを、作者が明記していません。雰囲気で、第二次世界大戦下の東欧とわかるけれども。
だから戦争を体験したあらゆる人にも、そうでない人にも、この話が普遍性をもって迫るのだと思う。


続編が2冊あるのですが、そちらはまだ読んでいません。


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