Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

町家って、どんなところ

2008-10-22 | Kyoto sneakers since 2008
ライフデザインパートナーとして、京都の教育事業や企業の開発に様々関わっていらっしゃる木原麻子さんに、西陣という「ディープ・京都」の町家をご案内頂きました。

西陣は、京都の中でもとりわけ歴史と文化に育まれ、京町家の連なる町並みなどの京都らしさを、今に伝える地域です。千数百年にわたり京都の中心として繁栄し、中世以降は千両ヶ辻とも云われた今出川大宮付近を中心に、織物の各工程が専門分化して拡がる家内制手工業が集積し、職住一体となった町衆文化を形成する町として発展してきました。
[町家スタジオの目的]より

京町家・・・と聞いただけで、とても雰囲気がありますが、
さて、どういう構造なの?
それがとても知りたかったのです。

自転車で車の多い堀川通りをぐんぐん走り、中立売通りにふと入ると・・・
そこは、いきなり静かな街並み。
大学の卒論で中世国文学を選択したため思い入れもあり、この辺り一帯に漂うえもいわれぬ「気」のようなものに勝手にゾクゾクくるわたし。

↑通りすがりにお菓子屋さんを撮りました

そしてここが、今回見学させていただいた、京都西陣町家スタジオの門をくぐったところ。


ここから一歩入ると、いきなり高い天井に驚く。
台所のあった場所は、照明が完備されたギャラリースペース!高い。広い。




生粋の京おんなである木原麻子さんは建物の貫禄をものともせず、こともなげにひょいひょいと電気をつけ優雅な足さばきで畳へ上り、この風情ある建物を歩き回る。和風美女、京町家に良く似合います。
聞けば、この家をスタジオとして使うにあたり、様々な専門家が入って、雰囲気は変えないままライフラインの設備は相当調えられたそうです。
電灯、調度品の類は、にくい演出で粋さを放っていました。
大正時代と平成時代のコラボレーション!

欄間の菊の彫りがかわいらしい。
天井の木目を出す手法は、かなり高級なしつらえとのこと。
大正時代に大きな商いをしていたというこのお宅は、相当に手が込んでいて、広いです。

このお部屋で、この日の夜は元アナウンサーによるボイストレーニングレッスンが行なわれたそうです。
畳のわく、柱のわく。整然とした直角のバランスが美しい。
これが、日本という高い文化の定義した美の本質。なにもないところが、一番美しい。
部屋というものは存在それだけで完成した芸術なのだ という意識を、京都にきてからわたしも様々教えられています。


お庭には蔵が。
ここでも写真展を開催したりするそうです。

廊下。
うう~ん、この界隈で感じる「気」を、廊下にさえ、いや廊下にこそ?ぞくぞくと覚えます。

様々な人の思いが交差したであろう、廊下。


ところが。
2階ではなんと、時代を牽引中です。WEB製作会社のオフィスなんです。

時代工房社さんHP

大きな画面のパソコンが並んでいます。
意外なまでに、しっくりそれはこの家屋に似合うのでした。


この電灯は大正時代の名残?


土間。


個人的な感想なのですが、
フランスやイタリアの各地でもそういえば似たような光景に接していたことを思い出しました。
人が住まなくなった古い建物をそのまま生かしカジュアルにカスタマイズして、若い人たちが共同で、無造作に気楽に、そこで暮らしていたり、オフィスにしていたりする。
20代から30代の若い人が多いのは、もっともらしい体裁を必要としないから?
なのかは解りませんが、
大きすぎる屋敷とか、岩壁を利用した長屋など、日の光が十分に射さない場所は考えようで、PCを置いて管理するのにちょうど適しているようなのです。
当時インターネットカフェを旅先各地で利用していて、よくそういう場所がありました。

また、昔の建物は大家族の影響なのか人が集まりやすいようにできていて、また同時に使用人の利用する小部屋などもあり、もともとがオフィスっぽい。
現代の住居とは趣が違うのが、かえってライフスタイルによっては使い勝手が良かったりする。

今回、自然に町家のつくりをさらりとお洒落に利用するこちらの方たちを見て、精神の自由はそういう時空を超えた環境にあることからも大きく生み出されるのかもしれないなあ、と思いました。
京都の起業率の高さの秘密を、そうしたスケールの大きい空気に見た気がしました。

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