Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

それが、あなた。

2004-08-15 | art... bijutsu
日本文化の体現者、白洲正子さんについて、生前お付き合いがあったある文化人が語ったエピソードが、ずっと印象に残っています。

ある日、彼が最近手に入れたやきものを見せに、骨董愛好仲間である彼女のところを訪れたときのこと。
その焼物は変わった形をしていて、色も変わっていて、妙なもの。
でもなぜか気になる存在で、つい買ってしまった…。
で、これヘンですよね、でも自分はこれがなんだかとっても気になるのだけれど、一体、どう思います…?
と、目利きの彼女に意見を仰ぐと、彼女はうなずいて一言、
「それが、あなたなのよ。」
と言ったとか。

つまり、自分で選んで身の回りに置きたいと思ったものは、すべてその人の分身で、その人が現れるものだということ。
私はこのエピソードを聞いた時、まだ大学生でしたが、雷に打たれたみたいにショックを受け、はっとして周りを点検したのを覚えています。
服、小物、家具、部屋の内装…。
全てに、自分が現れている。
となると、それが自分の本質なのだな。
でも、その時、お世辞にも、客観的に自分のモノ達をトータルに見直して、満足のいくかっこいい自分、と言い切ることは出来ませんでした。
持ち物に、とにかく統一感がないのです。
こんな雰囲気に憧れる、でもこんなのもいいなあ、あっここは隠さなくちゃ、
等々、ふらふらした人間が、ごまかしようもなくそこにいて、心底情けなく思ったものでした。

当時両親の家にいて、内装は大体母の好みで統一されていましたが、あらためて見ると、彼女の基本というものが、はっきり現れていました。
シンプルな、木と、鉄。
木は、胡桃材などのいぶしたような色合いのものを床や棚として、
鉄は、注目している若手の鉄作家の作品である生活空間用のオブジェ(フロアスタンドや花器)のことで、これもツヤを消し、低いトーンに色を抑えた、すっくとしたデザインのもの。
それらをアクセントに、素朴な野の花や、天然素材の布地などが配置され、花器や食器もしっかりした印象の焼物で揃えている家には、方向性が感じられました。
確かに、これこそが、「これが、あなた。」といえるスタイルのあり方なのだなと母に学んだ気がし、早く大人になりたいと思ったものです。

以後、何であっても、モノを買うときには、「これが、こうありたい自分?」と、問うようになりました。
これは、ヘタな浪費をしそうな時には効く呪文。
とはいっても、結果、まだまだ無駄な買い物が多いですが。。
けれど、最近増えた植物も、どこか自分に似ているようです。
値段が安くても質が良く、値段が高くても長く付き合いたいものだけを、もっと厳選チョイスする目が欲しいです。
それも、"誰かとおんなじ"、ではなく、"その人の雰囲気が感じられる"、ような好きなものと、馴染んだ関係を作れたらいいですね。
そして、その好きなものが高級品であっても、それに似合うように、だんだん本人がグレードアップ出来たら、最高です。
よく目にする高級ブランドのように、圧倒的なパワーで、持つ人をも負かしてしまうこともよくあるものは、まだまだ自分には早い気がしますが、
でも、将来目指すマダムになったときに、当たり前のようにワードローブの一つとして、マノロ・ブラニクのクロコパンプスをはきこなしていたい、などとは夢見てしまいます・・・。

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写真は、ガエタノ・ペシェ作の椅子です。
すっごくかわいいですよね~♪
私のではありませんが。。

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