Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

美女シネマ 『NOVO』

2004-05-13 | cinema... eiga
恋人への愛情って、欲望の行き着いた先にあるもののような気がします。
手に入れたい、一緒にいたい、そういう気持ちは、"欲望"ですよね。

映画『NOVO』は、愛情というよりむしろ、欲望を描いた作品、だと監督がインタビューで語っていました。
確かに、観終わった後にそう聞くと、作品に感じた強烈なパワーの源が、わかったような気がしてきます。
愛情は、わたしの考えでは「状態」ですが、欲望は、生きて動き回る、エネルギーそのものだと思うからです。

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主人公のイレーヌは、新しい勤め先で知り合ったグラアムに惹かれ、その日の内に夕食に誘い、夜を過ごす。
が、グラアムは記憶障害で、彼女を愛し始めながらも、わずかな間に、それまであったことを忘れてしまう。
毎回、自分の書き残したメモを見て、自分の足跡をたどり、恋人への情熱を、忘れてしまう心苦しさとともに思い出すグラアム。
その状況は、イレーヌに、もどかしさと、だが決して馴れ合わない新鮮さを与える。
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愛情も憎しみも、記憶によって刻まれます。
記憶によって、感情も複雑になっていきます。
記憶がない、ということは、自身の感情から解放され、常に無垢な状態であること。

無垢な人間には、魅力があるものですが、グラアムも例に漏れず。
彼の会社の女社長サビーヌは、彼の記憶を戻す練習、と称して、何度となく誘惑するし、彼の元妻も、彼の友人を使って、彼を追います。
彼の子供も、停滞している学校生活や自分の心をもてあましているので、対照的に自由を獲得している父親を、追いかけて、見つめずにはいられない。
けれど、彼には、目の前の事柄しか見えない。
過去も未来も、なんのしがらみもない。
自由であるということは、何物からも一定の距離があるということ?
だから、結局、常に彼の現在であろうとし、心に迫ろうと努力する者しか、彼の世界には入れません。

自分を彼に刻み込みたいイレーヌだけが、その熱意を持ち、常に能動的です。
欲しいものに対して、偽りがない彼女の姿は、とってもすがすがしい。
女優アナ・ムグラリスの、意志のある顔つきは、イレーヌをそのまま体現している感じ。

サビーヌのように、いいとこ取りのお楽しみをたまにちょろっとしようとしたり、妻イザベルみたいに、遠巻きに夫の様子をうかがい、結果、そばにいるからって夫の親友と関係を持つ、なんてハンパな行動は、結局それなりのハンパな結果しか、得られません。
人と人の心の付き合いって、ぶつかり合いながらも何かを掴み取っていくような、がむしゃらなものだったりします。
欲しいのは、相手の心。その欲しいものへ、まっしぐら。
でも、決してもたれかかったりしないで、いつでも相手を受け止めてあげる強さを持ちながら。
そんな、ある一人の女性の強さに力づけられる映画でした。
さらに、「欲しいものは、手に入るんだ。」と、力強く思わせてくれます。

おもな登場人物が、みんな魅力的!
それぞれの個性が、すてきでした。
妻イザベルは、『カルメン』を演じたときよりか、清楚な感じがとってもかわいかった・・・。

余談ながら、この映画を観て、アナの履いていた、マーク・ジェイコブスの、とってもキュートな、若草色のストラップシューズがとーーっても欲しくなってしまいました♪

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