茂木日誌

茂木の日誌

もうすぐ一年

2015-09-29 19:16:17 | 日誌
昨年の10月1日には山形Qの第53回定期演奏会がありました
本番の数日前から風邪をひき 前日から処方された咳止めを服用
その咳止めが体質に合わず 聴覚に異常をきたした状態で迎えた本番でした

原因に思い当たらぬままに迎えた本番の日は 調弦をする事も難しい状態で
チューナーの針を頼りに調弦をしても 耳に感じる五度の響きはまるで広すぎたり狭すぎたり
1/4音くらい広く聞こえるかと思えば 半音くらい狭く聞こえる
重音にするとまた違う具合に歪んで聞こえる

楽器ではなく 自分の耳に異変が起きている事は理解できたのです
普段からの左手の感触を信じ チューナーを睨みながら 出来るだけたくさんの音について「耳に聞こえる高さ(これがデタラメになっていた)」を覚える作業をして

最後に 仲間の音を信じて
その時の私には仲間の音程も狂って聞こえるのですが 彼らは普段通りの耳で正しいハモりを作っているのです
私が普段通りの感覚で弦を押さえれば間違った音が自分の耳に聞こえますが 仲間が同じ音やオクターブ違いの音を弾いていれば 完全にそちらの音程に合わせ(聞こえる音程が狂っていてもそちらが正しい)
それ以外の音も 左手を普段通りに押さえる事をひたすら心がけ 本番までに覚えた個別のデタラメ(に聞こえる)なピッチを思い出しながら

大事を隠したまま臨んだ本番
GPの最中や本番途中の舞台袖で仲間に異変を指摘されれば 自分の耳の状態を白状するつもりでしたが
本番は全てが演奏され 手元には音源という現実の忠実なしもべが残りました
本番の直後に録音を少し聴いたものの 隠し事をして終えた本番の録音を落ち着いてきちんと聴く事はできず
そろそろ一年になろうかという今 改めて録音を聴き直してみました
今聴いても 正直 あの日の悪夢を思い出します

録音に残された演奏は ほぼ普段の通りの演奏でした
この結果において優れているのは 他のメンバー三人の安定が普段と変わりないこと
三人の音が私の狂った耳を正しい響きへと導いてくれたのです
頼れる音感がチェリストの耳に無かったあの日 三人のうちの誰かが緊張して普段と違う音程を捕まえるとチェリストが破滅的な音へと転落しアンサンブルが崩壊するやもしれない 瀬戸際にあったのです
そのような崩壊は回避され 私は完全に三人に救われました

聴覚の方は、本番後に咳止めの服用を止めたところ 一週間ほどで正常な位置に復帰しています

あの日からもうすぐ一年
仲間への信頼をあらたに
仲間への信頼をより一層深く
感謝とともに過ごしてまいります
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする