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Syl.Com.

名も無きねこに

2008-07-01 19:03:21 | わたし
ここ二三日、母がよく咳をしている。
マスクをかけず所構わず咳をし、
用便後もろくに手を洗わずに丁寧に菌を撒き散らした父の影響だ。
腫瘍の治療のため放射線を浴びつづけてから、
彼女の免疫力は低下して、風邪程度でも治りが悪い。
先年、兄嫁の父が肺炎で急逝したのが思い出され、心配になる。

両親も心配だが、そもそもわたしがこんなだから、
彼らに迷惑がかかっているのだ。


年齢と無職をキーワードにネットで検索したら、
わたしと同じ年齢で職歴無しという人が、
これからどうして職を求めたらよいかと相談を求めている掲示板を見つけた。

世間の風同様、回答者達の声は手厳しい。

その年齢になるまで何をしていたのか。
自分のやりたい仕事を見つけようなんて、現状認識が甘くないか。
プライドばかり気にして自己分析をする気が無いのか。
アルバイトなり何なりでひとまずお金を稼いで家を出て自立したらどうか。
両親に迷惑をかけて心苦しくないのか。

それに対し、ときおり質問者からの返答がある。
アルバイトやパートに就いて当座の資金を調達するということは望まず、
基本的には現状維持で正社員の口を見つけたい、そのために資格取得を云々・・・
といったところで、また回答者達から砲火を浴びる。
厳しいながらも真摯に質問者の事を考える者もあれば、
感情的に社会のゴミと切り捨てるだけの者もいる。

批判、批判、批判、弁明、批判、批判・・・

感情論もまた世間のありかたの一部だろうし、
その他大勢の真剣な回答はどれも正鵠を射ている。

バックグラウンドに多少の差はあれ、彼もわたしも似た問題を抱えている。
どちらも動く前に考えてしまい、
考え込んでしまうことで身動きできなくなっている。
まずは雇用形態によらず、何でもいいから仕事に就いてしまって、
それを長く続けることが肝心なのだ。
そして、わたしは今、その一歩を踏み出せないでいる。

コメントの応酬から目を離せなかったが、
質問者からは就職したという報告も無く、
最後の書き込みの日付はおよそ一年前になっている。
彼は今、どうしているだろう。
一歩踏み出したか、それとも蹲ったままか。
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『エンデュアランス号漂流』 読了

2008-07-01 04:25:41 | わたし
病院には必ず何かしら読むものを持っていくが、前回は『文章読本』がもう少しで終るところだったので、途中、某大型古書店に寄った。
あまり頭を使わない小説がいいかなと思って文庫本をながめていたところ、『エンデュアランス号漂流』(アルフレッド・ランシング 山本光伸訳 2001 新潮文庫)が目に付いた。普段ノンフィクションの類は全く読まないが、この本の元になった大英帝国南極横断探検隊に取材したドラマをかつて見たこともあり、以来「エンデュアランス号」の名は頭の片隅に残っていた。

帰りの電車の中で読み始めたら夢中になって、家に帰ってからも眠るのを忘れて読みきってしまった。

1914年、南極点到達でノルウェーに遅れをとった大英帝国の威信回復のため、冒険家サー・アーネスト・シャクルトンは南極大陸横断計画の実行を呼びかけた。各方面からの援助を何とか取り付け、エンデュアランス号を完成させたシャクルトンは27名の隊員とともにイギリスを発った。
一行を乗せた船は大西洋を縦断、ブエノスアイレスを経由して、サウスジョージア島に立ち寄り、さらに南極を目指す。しかし南極上陸を前に、ウェッデル海で氷盤にすっかりとりかこまれ身動きが取れなくなった。
そのまま漂うこと十ヶ月、ある日亀裂の入った氷盤は、船体を圧し潰し始めた。止む無く船を放棄した隊員たちを待っていたのは、更なる漂流生活と自然との戦いだった。

今よりはるかに遅れた技術水準の装備で、文明社会から離れた多湿酷寒の環境で、生還できないだろうという絶望と隣り合わせの状況を一年以上も耐え抜いた隊員たちの生活は、想像を絶する。それでもなお氷と海を相手に懸命に戦う彼らの記録を読んでいると、100年も昔、こんな男たちが本当にいたのかと、心に迫るものがある。

探検隊の誰だったかが残したこんなことばが、胸に焼きついた。
「我々はこの厳しい自然を相手に勝つことは決して出来ない。ただ出来るのは、負けないでいることだけだ。」
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