蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

モノの始まり物語

2015-10-08 18:11:40 | 日記
 シーシュボスは、全力をふりしぼって大岩を山のてっぺんまで運び上げて行った。山のてっぺんに着き、ほっと一息ついた直後に大岩は無情にも彼が運び上げたルートをそのまま転がり落ちていった。シーシュボスは、大きなため息をついて、ふもとまで下り、また大石を運び上げねばならなかった。山を下る時に、花が目に入った。何の花か彼は名前は知らなかったが、心を慰められた。

 2年の月日が経った。シーシュボスは、あることに気がついた。以前に比べて大岩の重さが減ってきていることに。
彼は二つの可能性を考えた。一つは実際に岩が小さくなっていっているという事である。第一、運び上げられ、またゴロゴロふもとまで転がって行くことを繰り返しているうちに、岩だってすり減るだろう、という事。
 
 あと一つは、この2年間で彼の膂力が増したという事である。

 2年間やっていればそうなって当たり前である。

 彼は、石を運び上げてから、石が転がり落ちる方角を変えてみた。より岩の多い、ごつごつした斜面を選んでみた。そして、ふもとに下りてから、入念にストレッチをやり、石を持ち上げてみることにした。

 石は彼の思惑通りすり減って行っているらしい。こうなってくると一日一日が楽しくなってくる。彼は革製の巻き尺を作って、岩の周囲と大きさを測った。確かに、少しづつではあるが減ってきている。

 6年目、とうとう石の直径は、1mを切った。シーシュボスは、目よりも高く石を持ち上げ、山のてっぺんに向かってぶん投げた。石は、山頂に着地し、ためらいがちに転がり落ちてきた。

 10年目に、石の直径は、ついに50cmとなった。シーシュボスは、ふもとから山頂めがけて石を転がしてみることにした。彼の鍛え上げられた肉体をもってすれば何とも簡単な事であった。

 シーシュボスは、山頂に、高さ30cm、直径10cmほどの石柱を4本立てた。

 彼はその4本の石柱に向かってふもとから石を転がした。見事に4本の石柱は倒れた。

 これがボーリングのはじまりである。

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