蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

死因

2015-10-10 08:41:56 | 日記
 もう駄目だという事は分っていた。すい臓がんが発見された時はもう末期になっていた。すい臓は「沈黙の臓器」と言われるぐらいだから、発見が遅れることはよくあるんだそうだ。

 ああ、いろんなことがあったなぁ・・・といろんな思い出が頭の中をよぎって行く。これが死ぬという事なのだろうか。

 家族や親せきが駆け付けてくれている。

 妻は私の手を握って泣いている。

 医者が、画面を見ている。心臓の動きをモニターしているのだろうか。

 意識がふっと無くなった。

 「ご臨終です」と医者が告げ、看護婦に時間を告げた。

 その時、スマホの着メロが鳴り響いた。A〇Bの曲だった。

 私はいきなりベッドの上に起き直って、言った。

 「死ぬ前になんでこんな曲を聴かないといけないんだ!」


 そういってまたバッタリ倒れたそうだ。医者は慌てて画面を見たが、心臓は確かに止まっていた。

 念のためにという事で解剖が行われたそうで、死因は、すい臓がんから、一時的な興奮による脳溢血に書き換えられたそうだ。

 遺言にちゃんと書いておけばよかった。絶対に聴きたくない曲と、絶対に聴きたい曲の双方を。
  
 以上の話は、天国に行ってから父から聞いたことである。


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