ランプの精

　人気のない砂浜を歩いていたら、砂の中にキラッと光るものがあった。薬缶みたいなんだが・・。
　座り込んで掘ってみた。最近は、中腰というのがこたえる。
　金色のランプだった。「アラジンと魔法のランプ」に出てくるような形をした。

　なんでこんなところにあるんだろうかと考えていたら、どうやら思わず首に巻いていたタオルで拭いていたようで、魔人が出てきた。
　たしかにでかい。何か言っている。聞こえない、というよりは何を言っているのかわからない。手のひらを上に向けて、肩をすくめるポーズをとった。ボディランゲージは有効だったようで、魔人はランプの中に入って行った。
　さて、どうするか。
　確率が高いのはアラビア語だろう。駅前にあるような語学学校でも教えてくれるところがある。NHKの番組も録画予約してしっかり勉強した。

　目的がはっきりしているから、上達は早い。

　ランプは、家の収納ボックスの中に入れてある。取り出して、タオルで拭いてみた。出てきた。

　「何か御用ですか、ご主人様?」

　予想は当たった。やはりアラビア語だった。

　「肩を揉んでくれ、それと全身マッサージ」

　魔人が困ったような顔をしている。やったことがないという。天空をひとっとびとか、宮殿をあっという間に出現させるとか、絶世の美女を連れてくるとかはやったことがあるけれど、肩を揉んだことがないという。

　「勉強してこい」というと、本当に困り果てたような顔になってランプの中に入って行った。

　四カ月ほどたってまた拭いてみると、出てきた。「できます」との答え。「どうして修行した?」と訊ねると、人間に姿を変えて一月間で日本語を学習し、三カ月かかって鍼灸とマッサージを基礎から勉強したという。健気である。

　次はもっと有意義なことを命令してみよう。