蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

里芋ころころ

2015-12-24 09:52:45 | 日記
 夕食の準備をしていた時のこと。里芋を煮ていた。ことこと煮て、もういいかなと思い、味見をしようと箸でつまんだところ、つるっと滑って、床に転がった。「三秒ルール」というのがあって、床に落としたものでも、三秒以内に食べればオッケーという意外によく知られているルールがある。
 好物でもあり、腹が減っていることもあり、モノを大切にする精神に満ちている私としては放置するわけにはいかない。追いかけた。追い付いて箸で抑えようとしたら、また滑った。煮立てなので熱いだろうと思って手をつかわなかったことが悔やまれる。
 家の外に飛び出した。我が家の立地も悪かった。なにせ、丘の上の一軒家である。丘を転がり出した。待て!と呼びかけても芋には耳がないから止まってはくれない。あ、ネコがいる。里芋は、あくびをした猫の口の中に飛び込んだ。そして、お尻からプリッと出て行った。なんてよく滑る芋なんだと感心していると、このあたりの主として知られる大きな蛇が春の陽気に誘われて出てきて、ネコと同じように大あくびをしている口の中に飛び込んだ。蛇はびっくりしたような顔をしていたが、また、お尻からプリッと出てきた。
 すでにかなりの速度がついている。野原で昼寝をしていたおじいさんのテカテカの頭の上を滑って、そのままジャンプ!見事な大ジャンプであったが、ここで芋の運は尽きた。カラタチのとげに突き刺さってしまった。
 もう大丈夫だろうと思って、そっと親指と人差し指でつまんでみた。ほのかに暖かい。
 三秒はとっくに過ぎているが、ルールを改正しよう。水でさっと洗って食べてみた。ネコと蛇のお腹の中をくぐり、枯草とおじいさんの頭を転がったお芋は大変に美味であった。二度と食べられないだろうが、何事も経験である。新しい食の世界が開けた。

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