クラシック音楽徒然草

ほぼ40年一貫してフルトヴェングラーとグレン・グールドが好き、だが楽譜もろくに読めない音楽素人が思ったことを綴る

所沢バッハ・アカデミー 第36回定期演奏会@2023.9.9 所沢アークホール

2023-09-15 13:47:53 | 演奏会感想
今回は所沢バッハ・アカデミーの定期演奏会。
最初は
バッハ カンタータ第147番 ≪心と口と行いと生活で≫ BWV147
名曲中の名曲だが、なじみがあるのはコラールだけで、全曲聴いたことはほとんどない。
バッハを知るにはカンタータを知らねばならぬ、と頭では理解し「カンタータ名曲集」みたいのを過去に何回か聴こうとしたのだが、どうもダメ。
やたらと説教臭かったり、血とかヘビとか妙におどろおどろしかったりするあの歌詞に付き合っていられないのである。
が、今回あらためて全曲聴かせていただいて、大いに感動した。スバラシイ!!
たとえ信心ゼロでもカンタータは聴かねばならぬ、という気になってきました。

次はモーツァルト 行進曲ハ長調K.408、ロンドイ短調K.511、6つの舞曲K.509のオルガン編曲版
オルガンならではの多彩な音色と、足ペダルまで活用した大音量の迫力がGood!
舞台上のコンソールで演奏いただいたので、足の動きまでよく見えました。
アークホールには75ストップ、5563本のパイプを誇る大オルガンがあるのに、もったいないことにあまり聴く機会がない。
今回そのオルガンを活用いただいて、たいへんうれしい。
欲を言えば、あのヘ短調幻想曲K.608を取り上げてほしかったですが、それは次の機会に期待!

休憩後は金管のみによるヨーゼフ・メスナー 祝典ファンファーレOp.36b,
つづいてミサを予告するオルガンの即興(?)がちょっとあり、いよいよ
モーツァルト ミサ曲ハ短調 K.427
これはもう異常な名曲。
Kyrieで最初は合唱がKyrie eleisonを歌い、続けてソプラノソロがChriste eleisonと優雅に歌い出す。
小休止のあと、いきなり跳躍してガツンとくる。(下記楽譜の赤い点)

ここでもうダメ。心に何かがグサッと刺さって、心身虚脱状態に陥る。

この後は、甘美なソプラノソロ、ソプラノ二重唱、2重合唱(合唱団が立ち位置を移動して左右に分かれる)など多様な様式が万華鏡のように繰り広げられる。
12歳で作曲した「孤児院ミサ」からしてすでに突出した名曲だったのであるが、それから15年。
その間に培った作曲技法をすべて注ぎ込んだかのようだ。
究極はEt incarnatusのソプラノソロ。
とてつもなく美しいが、べたべたした甘さは全くなく崇高。
Credoがここで未完に終わったのは、モーツァルト自身この曲に続くべき曲はないと判断したからではないか、と思ってしまう。
(なぜハ短調ミサが未完に終わったかについては諸説あるが、わたくしは曲の規模が大きすぎることに気づいたモーツァルトが結局キリエとグローリアのみの略式ミサの形で演奏したのではないか、と考えている。)

アンコールはアヴェ・ヴェルム・コルプス
今日は曲も演奏も素晴らしすぎて、言葉で表現する語彙がない。
それほど良かった。
わたくしはこの手の曲が好きで、それを所沢で聴けるのはとてつもなくラッキーだ、とつくづく思った。
所沢バッハ・アカデミーは来年ニューイヤーコンサートとしてヘンデル メサイヤを予定している。
演奏会場は小さなキューブホールだが、どのような演奏形態となるのであろうか?
さらに定期演奏会の曲目はハイドン ネルソンミサ、シューベルト ミサ6番なので大期待。
こういった曲はまず聴く機会がないので、本当にうれしい。
ハイドンはすでにミサ曲を全曲演奏しているとのことなので、今後はぜひともモーツァルトのミサ曲やリタニア、ヴェスペレなど宗教曲全曲演奏にチャレンジしていただきたいです。
おそらく日本でそれを成し遂げた団体はないであろうから、所沢は日本の古典派宗教曲演奏のメッカになれる!

(おまけの動画)
惜しくも夭折したドイツの振付家ウヴェ・ショルツが果敢に挑んだミサ曲ハ短調のバレエ。

Kyrieでソロを踊っているのはウヴェのミューズだった木村規予香さん。
わたくしはクラシック・ファンであるが、バレエ・ファンでもある。
そういう人はあまりいないようで、たいていのクラシック・ファンはバレエに興味がない。
バレエはしょせん女の子の習い事と見做されているのである。
これはまことに残念だ。
バレエにはこのミサ曲ハ短調のごとき作品もある、と認識いただいてより多くの人がバレエに興味を持ってほしい。


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