クラシック音楽徒然草

ほぼ40年一貫してフルトヴェングラーとグレン・グールドが好き、だが楽譜もろくに読めない音楽素人が思ったことを綴る

J.M.コレドール 「カザルスとの対話」(1)カザルスから著者への手紙

2024-03-04 13:23:45 | 図書・映像・その他
カザルスのバッハ「無伴奏チェロ組曲」全曲のLPを買ったのはすでに40年以上前。
今まで何回聴いたかわからないが、先日また聴いてみると、あらためて感動した。
カザルスがこれらを録音したのは1938年頃。
それ以来、バロックの演奏スタイルは大きく変遷したが、真に素晴らしい演奏は不滅なのだ。

5番と6番をカップリングした盤についていた佐藤良雄氏の解説に
”カザルスの全貌は、コレドール氏の名著「カザルスとの対話」に明らかにされている。
ブルノ・ワルターは、「この会話集は、この大人物の天性の豊かさに対してすべての人々が感動させられ、最大の興味をもって読まれるであろうと私は確信している」と言っている。”
とあったが、不覚にも同書を読んだことがなかった。
ラッキーなことに地元の図書館にあったので、さっそく読んでみたが、ワルターの言葉どおり!
くだけた会話体なので読みやすくて面白く、カザルスの苦難に満ちた道のりは感動的。
そこで多くの方に興味を持っていただきたく、いくつか内容をご紹介しようと思いたった。

まずは1954年4月28日付のカザルスから著者コレドールへの手紙の一文。
”悲しいことに、私の青年だった時代から不正義と暴力とはますますはびこってゆくのに反し、反抗する力は日一日と弱まってきたというのが実情なのです。
無関心ーあとに悔いを残す罪深い、現在の無関心をながめることは、なんと悲しいことでしょうか!”
カザルスが反抗していたフランコ政権はとっくになくなったが、世界にはあいかわらず不正義と暴力がはびこり無関心が蔓延している。
違いはカザルスのような大音楽家がいないことであろうか。