クラシック音楽徒然草

ほぼ40年一貫してフルトヴェングラーとグレン・グールドが好き、だが楽譜もろくに読めない音楽素人が思ったことを綴る

2022年度オルガンスクール修了記念コンサート@所沢アークホール

2023-03-27 14:50:04 | 演奏会感想
所沢のオルガンスクール生20名による1年間のスクール修了を記念するコンサート。
ホールオルガニストの麻里先生と真侑先生も弾いていただけるのにタダ。
これは聴くしかないゾ。


まずうれしかったのは、バッハ名曲集に必ず出てくる名曲たちを生オルガンで聴けたこと。
ヨメが聴きたがっていた例の「ニ短調」もトッカータとフーガをそれぞれ別の生徒が弾くという形ながら実現!
この曲は、あまりに通俗化しているし(なにせ”鼻から牛乳”ですから)、バッハの曲ではない、そもそもオルガン曲ですらない、とかいろいろ言われている。
が、しかし、やっぱり間違いなく屈指の名曲。あの迫力は一度聴くと忘れられない。
小フーガト短調とか「われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ」BWV639などもわかりやすく、かつ深い!名曲ですなあ~

ブクステフーデが2曲聴けたのも良かった。
バッハがどれほど多くのものをブクステフーデから受け継いだかよくわかった。
若きバッハはリューベックまでブクステフーデを聴きに行って、強力なオルガン演奏に夢中になったに違いない。
4週間の休暇を勝手に16週間に延長したのも当然という感じ。

その他の作曲家では両先生がフランス留学経験者ということもあってかフランスの人が多かった。
クレランボー、F.クープラン、ダカン、フランク、そしてデュリュフレ。
実はF.クープランとフランクしか知らなかったのだが、最後のデュリュフレは生徒1人と麻里先生が弾いて印象的だった。
デュリュフレは1902年生まれ、1986年没。
3/4の麻里先生と雅のコンサートで採り上げていたジグーの弟子。
作曲家としては「レクイエム」が断トツで有名らしい。
生徒が弾いた曲は、「アランの名による前奏曲とフーガ Op.7」のフーガでこの曲は1940年に戦死したオルガニスト ジャン・アランを追悼して作ったもの。
演奏動画はこちら。

難しそうな曲だが、生徒さんが弾いてしまうなんて・・・

麻里先生が弾かれたのは組曲作品5よりトッカータ。
Wikiによると”デュリュフレの曲の中で最もオルガニストの超絶技巧が要求される曲”とのことだが、麻里先生ご自身の動画あり!

いや、もう、これはスゴイです。

ホールに満ち溢れる大オルガンの響きは他の楽器ではちょっと得難い迫力。
6月には”世界の頂点に君臨する天才オルガニスト”オリヴィエ・ラトリー氏がいらっしゃるので、今から楽しみです。


興奮の≪幻想交響曲≫狂乱のフィナーレ@2023.3.21

2023-03-23 13:19:32 | 演奏会感想
今年の読響川越公演は独奏にHIMARIちゃん、指揮に下野竜也氏を迎え、パガニーニと「幻想」でした。

赤いドレスを着て登場したHIMARIちゃんはとにかくカワイイ。
キラキラした髪飾りもカワイイし、オケが鳴っているあいだ首でリズムをとっているしぐさもカワイイ。
で、肝心のパガニーニ「ヴァイオリン協奏曲第1番」ですが、じつは人生初聴。
案の上、独奏ヴァイオリンがヴィルトゥオーゾぶりを発揮する曲ですが、どうもわたくしはこの手の曲に不感症らしい。
HIMARIちゃんは一生懸命かつ見事に弾いているが、こっちが聴き手として全然ダメ。
まだ小さいのにこんな曲を弾くと手が腱鞘炎になっちゃうかも、と心配になったりして気もそぞろ。
第2,3楽章はカデンツァもなくてあっさり終わったので、ああ、良かった、と思う始末。
しかし、本日のクライマックスはこの後やってきた。
アンコールにHIMARIちゃんが弾きだしたのは、なんと
 バッハ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番
この曲はつい先日佐藤俊介氏で聴いているが、その時はこちらも聴く気構えができている。
しかし、今回はまったくの不意打ちで、それもパガニーニの後だったから
 ああ、なんとバッハは素晴らしいんだ!!
と心が震え、この曲を持ってきたHIMARIちゃんの心意気にも大感激してしまった。
この先いろいろな良い経験をして、いつの日かバッハ無伴奏全曲演奏会が実現しますように。

さて、メインの「幻想」は、藤原ならぬ下野竜也君のパワフルな指揮で大いに盛り上がった。
先月木管五重奏団としてお出でになった方々の顔も見えて、オーボエの北村貴子さんは終演後舞台裏から登場。
野球も選手の持ち味がわかると面白いのと同じで、各プレーヤーを知るとオーケストラを聴くのもより面白かったりします。

ベートーヴェンが没したのは1827年。「幻想」の作曲は1830年。
何十年か前に初めて「幻想」を聴いたとき(たぶん今でも持っているモントゥー盤)
 たったの3年でこれほど世界が変わるのか!
と大いに驚いた。
しかし、ラモーの死(1764年)から「幻想」の1830年までフランスの音楽界が何をやっていたのか全然知らないことに気がついた。
唯一知っているのは、この間にモーツァルトがパリに来て「パリ交響曲」や「フルートとハープ」を作曲したことくらい。
派手派手しい管弦楽など「幻想」の語法はベートーヴェンからの流れでは唐突に見える。
しかし、フランスではオペラなどでふつうに使われていて、それをベルリオーズが強引に交響曲という器に盛ったのかも。



佐藤俊介 バッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲@2023.3.15 所沢キューブホール

2023-03-18 15:09:43 | 演奏会感想
2023所沢バロックシリーズ第3弾は佐藤俊介氏登場。


1月は優人さん、2月はトンさんのチェンバロだったが、今回はヴァイオリン。
改めて感じたのは、ヴァイオリンという楽器の凄さ。
あんなちっぽけな楽器なのに、一つの音だけで比べると、チェンバロをはるかに凌駕する訴求力がある。
(だからチェンバロは10本の指でたくさんの音を出して勝負するしかない。)
チェンバロは弦を弾いて音を出す。
ヴァイオリンは弦を擦って音を出す。
この違いが大きくて、擦るから音を引き延ばせるし、微妙な強弱や揺れもつけられる。
擦って音を出すというやり方は偉大な発明ではないか、という気がしてきた。

さらにヴァイオリンの音が心に響くのは、その音が人の声に近いからかもしれない。
人の聴覚は風の音とか虫の声とか自然界のいろいろな音を聞き取ることができる。
しかし、野山を歩いていて、もし赤ん坊の泣き声が聞こえたら、誰だって耳をそばだてるに違いない。
これは人の本能に組み込まれていて、ヴァイオリンの音はそこを突いてくるのだ。

もう一つ、ヴァイオリンとチェンバロの違いは奏者の向き。
聴衆に対してチェンバロ奏者は横向きだが、ヴァイオリンは正面を向いている。
向かい合わせの俊介氏が全身で表現しているのを見れば、それはもう迫力です。
こういうヴィジュアル的な訴求力も演奏の一部かも。
(ピアノでもグールドみたいにやれば、スゴいヴィジュアル効果がありそうだが。。)

演奏順はやはりシャコンヌがビッグなので
 1番→3番→2番 (それぞれソナタ→パルティータ)
でしたが、最後にシャコンヌが終わったときは聴いているだけなのにヘトヘト。
家で聴くときはせいぜい1曲か2曲だから、6曲通しで聴くには体力が必要である。
もちろん演奏している俊介氏は100万倍以上のパワーを発揮しているわけで、ただただスバラシイ。

ついこの間は現代のルイ14世になり、今日はケーテン公、と庶民が王侯貴族になれるのはいい時代だ。




古楽器によるフランス・バロック音楽のひととき@2023.3.12 NANAWATA

2023-03-14 13:48:50 | 演奏会感想
ヨメがたまたま図書館でコエドノコトを見つけて、近くのCAFE NANAWATAで本イベントがあることを知った。
前の通りは何度も通っているのに、こんな空間があるとは今まで全く気付かず。
キョロキョロしてみるものです。

本日の曲目等はこちらにあり。
テオルボという巨大リュートのような楽器は見たのも聴いたのも初めて。
なぜこんなに竿が長いのかというと低音を出すためには弦を長く張るしかなかったから、ということである。
長くなれば当然重くもなるので、手で支えながら弾くのはたいへんそう。

親密な空間で、雅なフランス・バロックに浸り、おいしいエクレアとコーヒーまでいただけるのは最高でした。
わたくしのような庶民でもルイ14世並みの贅沢が味わえるのはまことにけっこうな時代と言えよう。

(追記)
後から調べてわかったのだが、今回取り上げた作曲家の一人マラン・マレはその生涯が「めぐり逢う朝」という映画になって、おフランスで観客210万人の大ヒットだそうだ。
さすが、文化大国おフランス!
日本で八橋検校の映画を作って大ヒット、というのは全くありそうにないからな~~

女神たちがつぐむ風のハーモニー@2023.3.4所沢アークホール

2023-03-06 14:25:35 | 演奏会感想
ホールオルガニスト三原麻里ちゃんと女性金管五重奏グループMIYABIのコンサート。



前半はバッハからアヴェ・マリアを節としてフランスへ、という流れ。
バッハ(デュプレ編曲):カンタータ第29番≪神よ、我ら汝に感謝する≫よりシンフォニア オルガン
バッハ:前奏曲とフーガ ニ短調 BWV539 オルガン
バッハ/グノー:アヴェ・マリア オルガンとトランペット
ビゼー/ホルコンプ:カルメン幻想曲 MIYABI
サン=サーンス:前奏曲とフーガ 変ホ長調 op.99-3 オルガン
ジグー:前奏曲とフーガの様式によるジュビリーピース オルガン

後半はドイツ・ロマン派からバッハをはさんでフランスへ。
シューマン:ペダルとピアノのための練習曲より第4、5,6番 オルガン
ブラームス:前奏曲とフーガ ト短調 WoO 10 オルガン
バッハ:小フーガ ト短調 BWV578 MIYABI
フランク:≪3つの小品≫より第2曲カンタービレ M.36 オルガン&MIYABI
ジグー:グラン・クール・ディアローグ オルガン&MIYABI
ポエルマン:≪ゴシック組曲≫ op.25 オルガン

アンコールはやはりフランス。
ラヴェル:≪亡き王女のためのパヴァーヌ≫ オルガン&MIYABI

演奏者はみんな女性で華やか。
オルガンとブラスというありそうであまりない組み合わせも面白かった。

オルガンとブラスは音を出す原理は同じだが、雰囲気はだいぶ違う。
途中で、オルガンのトランペット菅と本物のトランペットの音色を比較してもらったが、やっぱりオルガンは機械的な感じ。
トランペットは人の息だから音の増減も自由自在だが、オルガンは機械のふいごが空気を送るのだからしょうがない。
昔はふいごも人力で、ふいご師により演奏の映えがずいぶん違ったらしいが・・・
何にしても大オルガンが有するストップ75本、パイプ5563本の圧倒的物量はスゴイものがあります。

シューマンの曲はペダル・フリューゲルのために書かれたもの。
ペダル・フリューゲルがどんな楽器か知らなかったが、動画がある、と麻里ちゃんがおっしゃっていたので探してみました。
ちょうどシューマンの練習曲4番を弾いている動画があった。

ペダル・フリューゲルはピアノを2階建てにしたみたいな楽器だ。
これはお値段も張りそうだからメジャーにはなりえないが、シューマンは気に入っていたらしい。

アークホールのホールオルガニストは麻里ちゃんと真侑ちゃんの2名体制。
去年のオルガン・コンサートは真侑ちゃん1回だけ。
今年も今回の1回だけで終わってしまうのだろうか。
それでは、大オルガンがあまりにもったいない。
もうちょい活用していただけないものかなあ~~~