茜ちゃんのつれづれ草
-017
連日、曇りの予想ながら強い日差しの当たる日が続いております。スコールも時々思い出したように通り過ぎていきます。
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切り替えスイッチ・CREB
いよいよ海馬の秘密に迫ってきました。その鍵を握るのがCREBです。・・・・・覚えておくものと忘れていいものを判断する切り替えスイッチ・・・・これに大きく関わっているいるたんぱく質です。
* CREB・・cyclic AMP response element binding protein
cAMP応答配列結合タンパクのことであり、神経細胞ニューロン間の恒久的接続を確立するタンパク質を、転写・翻訳するのに必要な因子である。この分子をブロックした場合、タンパク質合成や新たなシナプスの発達が妨げられ、その結果長期記憶の形成が阻害される。
CREBというたんぱく質が記憶と密接な関係にあり、このたんぱく質が様々な記憶処理と硬く結びついております。
A・ 細胞の中のCREBのスイッチをONにすると、他のたんぱく質の合成が始まり、そのたんぱく質が神経細胞間の新たなつながりを促進して、長く保たれる記憶を固定する。
B・ CREBスイッチをOFFにすると記憶固定用のたんぱく質の生産を止めるので、必要のない記憶は作られない。
では、何がスイッチをON,OFFにするのでしょうか?
CREB活性体と呼ばれるたんぱく質がONにし、CREB抑制体というたんぱく質がOFFの作用をします。DNAの中にこれらの作用をする遺伝子があり、特定されているそうです。
CREB抑制体というのは記憶のフィルターと考えても良いそうです。強く感情をゆすぶる出来事など、何か大切なことが起こるまでは、この抑制体が支配権を握っている。いったん大きな出来事があると、神経細胞内のCREB抑制体がなくなる。もしくは、活性体が増えることによって、脳細胞に恒久的な記憶が焼き付けられる。
<生物学的に見ても、一夜漬けは上手くいかない>訳は?
動物、人間の脳細胞の中のCERB活性体の量はそれほど多くないので、一度に取り入れられる情報の量にはおのずと限界があるらしい。そのことから、休憩を挟んだ短時間の学習では、一度学習した状態から回復するだけの時間を、活性体に与えることで、再利用を可能にする。徹夜の一夜漬けは上手くいかないということになります。 勉強は毎日少しづつするに限ります。
<CREB抑制体と抑制体のバランスが崩れると・・・どうなる?>
もし、CERB抑制体が出来なくなったら、どんな些細なことでも覚えてしまい、大変なことになってしまいます。記憶が写真機のようになり、234Pの第13行目に何が書いてあるか、一度で覚えてしまいます。それだけならいいのですが、必要のない吐息の音とか、何か不要なものまでハッキリと覚えてしまい、大変なことになります。必要のない物は記憶しないのも大事なことですね。
以前ご紹介した<サバン症候群・知的障害・自閉症障害がある>などは、並外れた記憶力を持ちますが、CREBが関与しているのでしょうか???
次回は<睡眠学習は嘘ではない。・・・眠ったほうが記憶が冴えるわけ>を考えてみましょう。
Attention
* 今回からはTea Timeの内容を、分子細胞学 に絞って書いてまいります。今まで続けておりました素粒子物理学は<茜ちゃんの 叔父さん・叔母さんの宇宙・素粒子物理学>という姉妹ブログに移転します。今後ともよろしくどうぞ!。
<茜ちゃんの 叔父さん・叔母さんの宇宙・素粒子物理学>
「 DNA と たんぱく質 」
CERBというたんぱく質の話が出てきましたが、そもそもDNAとたんぱく質って何でしょうか? 分子細胞生物学という学問から考えてみましょう。
下図は放送大学の教科書からお借りしました。講師はかの有名な福岡伸一氏
動物細胞でも、植物細胞でも細胞の構成はそれほど変わりがありません。葉緑体や液胞などは植物細胞に有ります。DNAというものは上の図の核という場所に格納されております。
DNA・・デオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic acid)といわれる核酸の一種で、遺伝情報を担う物質です。上の図の中の核の中に<染色体>というのが見えます。染色体は46本あり、内容は22対の常染色体と一対性染色体です。染色体は二重螺旋構造のDNAが折り重なって出来ています。
DNAと同じ核酸としてRNA(ribo nucleic acid)というものもあります。
DNAの二重螺旋構造(WIKIより掲載)
DNAは30億対の塩基配列で構成されています。塩基はA,G、T,C の4種類です。遺伝子というものはDNAの特定の領域に存在し、4種類の塩基が織り成す結合の組み合わせで、人の体を造るのに必要なタンパク質が作られているのです。
先ほどのCREBというたんぱく質もDNAのある特定の領域に存在し、この情報を取り出してたんぱく質を作り出しています。DNAからRNAがつくられ,RNAからタンパク質がつくられる。このような遺伝情報の流れを中心教義(セントラルドグマ)と呼びます。
しかし、ウイルスにはDNAがありません。その代わりRNAがあります。ウイルスは生物に寄生して、そのDNAを利用して増殖をします。それでウイルスは生命体ではありません。
DNAの鎖(上の図の2本の鎖状のもの)は相補的な塩基対を形成し,互いに相手の鎖を認識できます。 TとA、CとGの組み合わせのみしかありません。
人間の遺伝子の数は過去には2~3万と云われていましたが、22,000くらいに落ち着いた模様です。植物ではイネで3万2千、シロイヌナズナで2万6千くらい。
DNA二重螺旋の詳細構造
* [DNA中のチミン(T)とアデニン(A)、シトシン(C)とグアニン(G)間の水素結合 ] * Å・・・オングストローム(単位) 1Åは10−10 m
しかし、DNA からたんぱく質を作成するメカニズムはそんなに簡単ではありません。次回はRNAという核酸を説明しながら、DNA からたんぱく質を作成するこのメカニズムに挑戦してみましょう。 * このレベルでしたら高等学校の 生物 B を参照してください。数研出版の参考書でしたら、結構なレベルまで学べます。 Watson-Crick については後日説明します。ノーベル生理医学賞受賞者達の名前です。
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